第93話 花園のタスク 4 《カラー挿し絵あり》
「タスケテ…タスケテ…」
はっ。
聴こえる。
何かの声が。
なんと言ってるかまでは、わからないけれど。
「イスト」
「そうね、瘴気に侵されてるのはこの花だったのかも…」
違和感を感じたステラがこちらへやってきた。
「タルネ、どうしたの?あなたはここに来てはだめよ」
「ステラ…この花の声は古代の発音かも
でもわからない?この花たちは、苦しんでいる」
キッとあたりへ視線を送るステラ。
「なにか手はあるの?」
「わたしの歌であれば、もしかしたら」
「でももう、頭が痛くて…」
ガクッ。タルネはそこに跪いてしまった。
顔は青ざめて呼吸も苦しそうだ。
「まずいわ
イスト、集中して
自分の光をタルネに送るの、できる?」
「やってみる」
イストは目をつぶる。タルネを助けたい。この花たちも…。
ステラの青い光もタルネを包み込む。
少しずつタルネは息が楽になってきたようだ。
「大丈夫、ありがとう二人とも」
弱々しい様子で立ち上がるタルネ。
タルネは歌う。
常人の歌い方ではない。なんと言うか、歌うというより響かせる感じ。
声を出しているように見えない、体全体を振るわせているようにも思えた。
その声は風に乗り、花園全体へと行き渡った。
「ワラハンド デジョブダガ♪タッケデヤラハデキイデケレ♪」
ステラはハッとした。
気づくと涙が出ていたからだ。
…なぜ?自分では感じ入っていた風にも思えない。
魂が浄化するかのような、不思議な感覚。
タルネは歌った。何者かに突き動かされるかのように、衝動的に。
美しい音色だった。
花たちも歌った。さながらコンサートのようだった。
「なんなのこれは…?」
花園の景色が変わってゆく。
花たちから黒いモヤのようなものが立ちのぼり、空へと消えてゆく。
代わりに、花びらは色を変えていった。
今まで一色に咲いていた赤黒いバラたち。
赤、白、黄色、青。
たくさんの種類に変わってゆく。そして…。
「あったわ!黄金のバラ!摘んでないのに…」
イストが気づいたその先には、
女王のバラ…。そこに凛と佇んでいた。
嬉しそうに、煌々と咲いている。
「タルネ…あなたの歌って…なんなの?」
涙が止まらないステラ。
不思議と興奮してはいない。それは自分でもわかる。
でも胸が熱い。温かい。




