第91話 花園のタスク 2 《挿し絵あり》
一面に広がる赤い薔薇の花。
真っ赤というよりは赤黒く見える。
この花が常に人を惑わせる瘴気を発する恐ろしい植物でなければ、そこは本当にただ美しい夢のような世界であったろう。
しかし、この花は幻妖バラ。
来る人を闇へと陥れる危険な存在。
タスクの難易度はBだった。
光を纏いながら、1歩ずつ花の群れの中へ入っていく二人。
当然、ステラの光の方がずっと強い。
イストは既に頭痛に襲われていた。
頭痛というよりは、体がふらつくような感覚。
我慢しきれずに頭を抑えながら歩く。
ステラはそんなイストにはかまってられない。
自分でついてきた以上それくらいは覚悟してるはずだし、そんなことで心配されてもイストのためにならない。
「鼓動を感じる?この中にリーダーがいるわ」
「幻妖バラは100本くらいの群れで生存してるの、その中に1本だけある女王花の存在が、私たち女にだけわかるのよ」
「目をつぶって、鼓動を感じるの
そんなに難しくないはずよ
そのうち向こうからアプローチがあるわ」
ステラはそう言うと、自分の仕事にかかってしまった。
もちろんイストは言われたままにやるしかない。
目をつぶり、女王花の鼓動を探すイスト。
トックン、トックン。
トックン、トックン…。
はて、何かが違う。
イストはその存在を見つけたような気がした。
「相手は、あなたの一番の弱点をついてくるはずだから、気をつけるのよ」
「もし幻覚に負けて捕まったら、あなたは生気を全て吸われて、立ってられなくなるわ」
「はい…!」
イストは目をつぶる。
そして、その方向に少しずつ歩みを進めた。
きっとここ。ここにある。
手の触れた先には、1本の幻妖バラの茎がある。
ギュンッ!
体力を奪われるような感覚。何かが体に入ってくる。
イストは目を開けて茎を折り、一気に摘んでしまおうとした。
だが、
目が開けられない。それだけではない。
自分が自分ではないような、どこにいるかもわからない。そんな感覚に襲われるイスト。
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……。
ここは…オームかしら?
いつの間に家に戻ってきたんだろう。
それでも何か雰囲気が違うような…。
あ、お姉ちゃん。
ルストがいる。ルストは父親がいない分、いつも母親代わりに家の手伝いを進んでやっていた。
ちょうど水を汲みに行くところだ。
イストは…少し離れたところで遊んでいた。
いや、これは幼い頃の自分だ。自分がいる。
木の影から幼い自分を見つめるイスト。
ふと耳を澄ませると、周りの大人の声がした。
「ルストはいい子じゃ、いつもお母さんのお手伝いをして感心じゃなあ」
「器量もいいし、よい娘さんを持ったなブリオは」
「しかしそれに対しイストは利かん坊じゃな」
「手伝いもなんもせんじゃで、お姉さんのいいところを少しでも受け継いでりゃなあ」
ムカムカムカムカ…
(そうやって、言われるからやりたくなくなるのよ、手伝いなんて)
(お姉ちゃんとお母さんがやってるんだから、わざわざあたしがやんなくたっていいじゃない)
「ルストと母さんだけじゃったら食いぶちも少なくて楽じゃろうにな、はは…」
ぶちっ。
(ムカつく!!なんなのこいつら!!)
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がくん!
ふと気がつくと膝をついていた。
顔はげっそり、生気を吸い取られている。
力が入らない…。
それでも花からは手が離せない。
(…まずい、心を燃やすと、そのエネルギーを持っていかれちゃう…!)
(あ、また…)
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タルネだ。タルネがいる。
今度はテンポスの街だ。




