第90話 花園のタスク 《挿し絵あり》
「なかなか出ないわね」
ステラの前で、イストは悪戦苦闘していた。
確かにイストは強くなった。とはいえ、護りの光を自在に繰り出す事はそう簡単ではない。
レベルにおいても彼女はパーティーメンバーでは一番低いし、一番強いライドンですらこの光の顕現には苦戦しているわけだからなおさらだ。
「おかしいなあ、確かに昨日は少し白い光を纏ってたような気がしたんだけど」
「あらそう、でも今出来ないと意味ないのよ
これに守られていないと、瘴気にやられて一瞬でお陀仏よ」
三人は既にカマンドから北へ2キロほどの場所にある、テンポス律動連盟が管理する花園まで歩を進めていた。
ステラもイストの成長に確証がないままで、ただ連れてきたわけではない。
仮にイストが護りの光を使えなかったところで、自分一人でタスクをこなせばいいだけの話。
1本で100,000クランの収入が軽く手に入るのだ。
「だめなら私一人で行くしかないわ」
冷酷な一言。しかしこれに反論の余地は無い。護りの光が顕現できない限り、ここまで歩いてきた苦労は無駄になるだけであった。
「イスト、何かコツをつかんだって言ってなかったっけ?」
タルネが促してみせた。
(そうだわ、ただドゥンバをきれいに生成する練習をしていてもしょうがない…)
タルネを横に見て小さく頷くイスト。
イストは目をつぶった。
そしてあの夜を思い出す。
叩くのよ、ドゥンバを。
ストーン。
軽やかで、かつ大きく響く音。
ステラも満足そうな表情だ。
トーン。
ストーン。
続けざまに打ってゆく。
イストは少しだけ目を開いた。
「…あ」
うっすらとイストを白いモヤのような光が包む。
「そのままよ!イメージを壊さないで」
目をつぶる。
イメージが明確になってゆく。
そう、私の中にあるのは、白い光 白くて、美しい光が眠っているの。
私にできるのは、それを呼び覚ますことだけ。
いつの間にか、イストの周りには、うっすらと白い光が輝いている。
「大丈夫みたいね、行くわよ」
ステラはいつも通り、美しい青い光をまとっていた。
二人は花園の入り口へと立った。




