第88話 ジルとライドン 《挿し絵あり》
若者たちは、まっすぐにジルを見る。
この国で最良と言える師匠のこの後の発言を今か今かと待っていた。
「まずね、今の若い子たち
これは全体的に異常よ」
ジルは二人から目をそらさず、ぐっと見つめ返した。
「テンポスも若い律動師が増えたわね
今クロニアでも、たくさんの若い才能が芽生えてるわ
いえ、それだけじゃない
私の知る限り、タラブ王国やマガラ共和国でも、才能ある若者が一気に芽を出し始めている」
「その大きな波の中にあなたたちはいるの
私はそれを手放しに良いことだとは思わないけどね
なぜなら、モンスターの異常な強さとリンクしているようにも感じるから」
「まあそれは別の話として、
クロック王国全体、タラブ王国、マガラ国
そのすべての10代の若者を合わせても
アーネスほどの才能と実力は見たことがないわ
私の知る限りだけど」
「本当に化け物級なのよ
もちろん私も指導したけれど、それが良かったというわけじゃない
あの子は誰がどう教えたって、全部吸収して自分のものにしてしまうのよ」
「妹のメイナもね
クロック王国始まって以来と言われている
それほどの兄妹よ」
「……勝ちたいの?」
ライドンは歯を食いしばる。
自分は今まで師匠にここまで激賞された事は無い。
年は向こうが1つ上かもしれないが、拍を覚えた歴は自分の方が先輩だ。
何が何でも負けたくないと思える相手が人生で初めて見つかったとさえ彼は思っている。
「勝ちます
何が何でも勝ちたいんです」
(この子、いつからこんな目をするようになったのかしら?)
ジルは嬉しかった。今までのライドンは才能の上にあぐらをかいていた。それがようやく自らを磨く気になっている。
「あれをやってみる?」
ジルは何か含みを持たせたような顔で微笑んだ。
「……呼吸ですか?」
来た。シュンは思った。




