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第87話 ドラムセット  《挿し絵あり》

「もしかしてドラムセットってこのクロック以外だと使ってる人も多いんですか?」


「いや、そこまでじゃないと思う

まずエルトリアは完全に情報を隠しているし、他には絶対バレないようにしてるわ

私も実物を見た事は無いくらいだしね」


それでもまさかの情報に驚きとともに、シュンは嬉しかった。

イメージじゃない、現物のドラムセットをバシバシ叩きたい。そうなるのが上達の近道だと知っているから。


「クロック王国でドラムを作る話はないんですか?」


「生産方法が不明なのよね

まずこんなに綺麗な丸い造形物ってなかなか作れないと思うし、

この銀色の金属も何なのかよくわからないのよね

鉄で作ってもいいけれど、同じ感じには絶対ならないと思うわ」


挿絵(By みてみん)


それはそうだ。21世紀の技術が結集して作られたのが、この美しいドラムセットなのだから。


「もし生産することになったら、出来る限り協力しますんで言ってください」


「そうね、世界を巻き込んだ大戦争になってしまったら、ドラムを持ってる国が有利でしょうから、あなたには大いに活躍してもらわないとね」


ジルの言う事は物騒だが、それがこの世界の真実なのかもしれないと思うシュンだった。


「あなたたち、農業に携わったことはある?」


「おれはこどもの頃からずっと手伝ってたよ」


「おれは…ありません、全く」


普通のサラリーマン家庭のシュンが農業体験などあるはずがない。


「この土地の開墾の大半は、それに必要な人足を雇っているので、その人たちにやってもらうわ

あなたたちがやるのは拍を使った作物の成長補助よ」

「拍を農業に応用する研究はだいぶ進んでて、作物の種を植えた後に近くでリズムを奏でることで、大いに成長の促進になることが証明されているわ」


「作物によって必要となるリズムの種類は変わってくるから

より、多くのリズムを習得している人間がやるべきことなのよ」

「ライドン、あなたなら得意よね」


「はい、師匠

できます」


ライドンはまっすぐジルを見つめながら言う。


「良い返事ね

あなたとはレゾヌスを除いたら3ヶ月ぶりかしら

リズムの種類は増えたの?」


「師匠、それですが…

おれ自身は頑張って技を増やしているつもりではあります

ただ、それより知りたいことがあって」


彼らしくなく、歯切れの悪い言い方だ。


「何かしら?

私でわかることなの?」


「あの…アーネスはどれだけ強いんですか?

やつはまだ拍を覚えて1年というじゃないですか

おれよりもずいぶん先に進んでるんですか?」


「彼と会ったのね」


ジルはキリッと真面目な表情になる。


「あなたもとんでもないのと同世代になっちゃったわね」

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