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第81話 メイナ嬢  《挿し絵あり》

「勝負あった、こちらの負けだ」


「?」

「待ってくれ、パイス

こっちはまだやれるぞ」


ライドンは突然のパイスの降伏宣告に慌てて聞き返す。


「いや、そもそも連盟側としては制服を来た状態でこれ以上私戦を重ねるわけにはいかない

ましてや相手は侯爵家につながりをお待ちのお嬢さんだ」


パイスの言うことはもっともだ。

そもそも今まで普通に戦闘(ゲーム)していたのがおかしな状況だ。


「パイス待ってくれ、わかった

勝負はやめてもいいが、おれの負けではない」


ライドンはなおも食い下がる。


「あなたの負けよ、自分でわからないのかしら」


赤髪の少女もここぞとばかりに煽ってくる。


「貴様…これで済むと思うなよ、この決着は必ず着けてやるからな」


「ふふっ、どうぞ

何回でも負かしてあげる

明日にでもスリルガンの屋敷に来てくれていいわよ」


顎をつんと上げ、腕組みをしながら挑発する姿はとても貴族のお嬢様には見えなかった。

とんだバトルジャンキーだ。


「お嬢さん、すまなかったな

俺たちは明日帰る

あんた強かった、またいつか会おう」


パイスは小慣れた様子でこの場を"おひらき"にした。

ライドンはどう見ても納得できない様子だったが、ここでなお食い下がるほど彼はこどもではなかった。

カークはそれを見て相変わらずニヤニヤしていた。


踵を返し去っていくテンポス一同を見て、赤髪の少女は興奮気味だった。


「ばあさ、見た?

ふふっ、面白い」


「メイナ様、たまたまお怪我なく済んだからよかったものの、あなたの態度もよくありませんよ」


「いいじゃない、結局勝てたんだから

危なかったあ!あいつの攻撃すごいわね、あんな16ビートのリズム、お兄様以外で使える若造がいるなんて驚きだったわ」


「メイナ様…よく慌てずやれましたね」


「ふふっ、いつもお兄様と手合わせしてなかったらやられてたかもね

ライドンちゃん、顔も可愛いし良かったわね

強かったわ」

「ああ、また明日来てくれないかしら」


「メイナ様!」


挿絵(By みてみん)


「いいじゃない、ばあさ

拍を覚えてから誰とでも対戦(ゲーム)したくてしょうがないんだから

でも普通にドゥンバだけの勝負なら一瞬で負けてたかもぉ

まだまだ修行が足りないんだなあ」


「メイナ様、ばあさは無事でいてくれればいいですが、ほどほどにお願いします」


「ふふ、わかったわ」



ーーーーーーーー


イーサップにて一夜が過ぎた。

とんでもない一日だったが、それでも過ぎ去ってしまえば一瞬。

太陽はいつものように若者たちを照らし出す。


四人は帰り支度を終え、朝食の席についていた。

がっくりと肩を落とすライドン。

彼はイーサップに来てから踏んだり蹴ったりだ。

イーサップ聖拍院が用意してくれた宿は心地のいい場所だった。高い天井に静かな空間。フカフカのベッドも用意されていた。

ーーそれでもライドンは一睡もできなかった。


「ライドン、そうへこむなよ

あれはなかなかの"たま"だよ

勝負への引き込み方がうまかった」


パイスはライドンを励ましていた。このまま帰りの馬車までグズグズされたらたまらない、とも思っている。


「へこんでないさ、

ていうか負けてない」


ライドンはあくまで負けは認めたくない。


「そうかもしれないけどさ

あのな、お前は向こうの土俵でやりすぎなんだよ」


カークが間に入ってくる。


「相手が変則タイプだったらそいつと同じ構えにしてたらだめだろ」


「あ」


「お前はドゥンバ一本でよかったんだよ

スティックなんてわざわざ顕現させる必要なかったよ」


先輩の経験からくる言葉は重かった。


「カーク…そうかもしれない

おれ、完膚なきまで倒したかったんだよな」


「気持ちはわかるけどよ、そこまでムキにならなきゃ普通に勝てたぜ

あの子はお前のリズムに全く太刀打ちできてなかったからな」


「本当だ…まったくその通りだよ

修行が足りなかった」


ライドンはしょんぼりしながらも、この先の戦い方に僅かに光明を見つけたようだ。


「よう、四人とも

お疲れだったな」


ダルフが宿まで見送りにやってきてくれた。


「ライドン、話は聞いたぞ

お前メイナ嬢とひと勝負したんだろう?

しかも、引き分けたって、やるじゃないか」


「え、どこで聞いたの?」


「イーサップ聖拍院ではみんな知ってるぞ

メイナ嬢は口が軽いからな、本人から出た話なんじゃないのか?

あとは店中の人が見てたらしいじゃないか」


「え、でも引き分けって…」


「違うのか?そうと聞いたが

メイナはスリルガン家の長女だよ、アーネスの妹君にあたるお方だ」


「まじかよ…貴族中の貴族だな

ライドン、お前もっとお近づきになった方が良かったんじゃないか?」


カークはそういう話が大好きだ。


「いや、別におれは…」


「ライドン、あの子結構いい子なんじゃないか?」


シュンはメイナを見直した。


「メイナ嬢はアーネスほどじゃないが相当の使い手だよ、おれでも勝てるかわからん

よく接戦まで持ち込んだな」


イーサップの指導員までこなすダルフの話だ。

ライドンはようやく損ねていた機嫌が直り始めた。


「あ、ライドン

そういえばボス(ディエル)が言ってたんだが、

ジルがテンポスで人材を募るらしいぞ」


パイスが思い出したように言う。


「えっ」


「大きな案件があるらしく、手伝いがいるんだそうな

お前参加したらどうだ?」


「あっ、やりたいです!おれも」


シュンには願ってもない話だ。

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