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第80話 街道での戦い 2 《挿し絵あり》

「え、なぜですか?」


シュンにはわからない。

勝負はまだ始まっていない。

確かにフォーメーションは見たことない形だが、相手はまだ少女だ。

シュンのパーティメンバーで一番小さいタルネよりさらに小さく見える。


「見ていろ、まだわからないが…」


拍の戦いに先行後攻の有利不利はあまりない。だが、技の種類が多く基本に忠実な者には後攻が有利、逆にオーソドックスを好まない気を衒った戦い方をする者は先行が有利だ。


「おそらくあの子は先攻を取りたがるはずだ

ライドンがそれを譲るか…」


シュンはパイスの解説を聞きながら、固唾を飲んで勝負を見守っていた。


挿絵(By みてみん)


ーー動いた。

赤髪の少女は不敵な笑みを浮かべ、ライドンを挑発する。


打ってこい、ライドンに向けて指をくいと折る仕草をしてみせた。


「ライドン、待ーー」


パイスが言うより早くライドンは攻めに出た。


BPM90

ドドドドタドドドスタドドタタンタ

スッタカタンタタタンタタタドタタドンタ


(強い…この子にこれをかわすのは無理だろ)


シュンにはライドンの動きが見切れない。


「フッ」


ドドドタンスタドンタン

タタタタタンドタタタンタタン


彼女は余裕の笑みを見せた。

だいぶ簡略化したようなリズムに直しているが、それでも何とかこなしている印象だ。


畳みかけるライドン。


BPM90

ドドドドタドドドスタドドタタンタ

ツドドドタンツツドドドドタン


ドドドタンスタドンタン

トトトトタンットトトトタンッ


「完璧にコピーはできてない…これでもいいんですか?」


シュンはパイスに聞く。


「拍の戦いは精神の戦いだからな、

コピーできてなかったからといって、自分が負けたと思ってなければダメージは負わない」

「自分のウラの攻撃に自信があるんだろ」


「いくわよ」


少女がスティックを振り上げる。


BPM120

ツーーツーツツーーツーツ

ツーーツーツツーーツーツ


(はっ?)


ツーーツーツツーーツーツ

ツーーツーツツーーツーツ


使わない。

太鼓を使わない。


ツーーツーツツーーツーツ


シンバルだけ鳴らしている。

3つあるシンバルの中でやや大ぶりの、シュンから見るとそれはライドシンバルに見える。

それをただ、鳴らす。


ツーーツーツツーーツーツ


「おいっ、なんのつもりだ?」


苛立つライドン。


「やってみなさいよ」


ツーーツーツツーーツーツ


ブゥン…。


不恰好ながらもシンバルとスティックを出すライドン。


「まずい…」


パイスは嫌な流れを感じでいたが、一旦勝負に入ってしまうとアドバイスはできない。


ジャンシャンジャンシャン


「…だめね」


ジャンシャンシャジャンシャン


「こうよ」


ツーーツーツツーーツータ

ツーーツーツツーーツータ


少女はシンバルの間にうまい具合にドゥンバのスラップ(高音)を入れていく。


「待て、お前のリズム、変だ

さっきから低音が無いじゃないか

それじゃノレない」


ライドンがたまらずストップをかけた。


「あなたがノレるかじゃないわ」


指でドゥンバを弾きながら言い放つ。


「これは勝負よ

あなたはわたしの表現について来れなかっただけ」


「…なんだと?」

「クソっ」


ライドンの息が荒くなり、わずかにダメージを受けているようだった。

彼の自信が揺らぐ。


ジャンシャンシャジャンシャン


なんとか叩き返すが、彼女の表現するリズムとはだいぶ違う。


「…できないようね」


少女が小さく呟く。


ぐふっ。


その瞬間、ライドンは胸を抑えて膝をついた。




※補足

赤髪の少女の演奏したリズムはスウィングと呼ばれるものです。

スウィングは、ジャズにおいてはスタンダードなリズムですが、J-POPではあまり多くないです。

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