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第8話 関所

草原の道を抜け、シュンは街の入り口に辿り着いた。

道幅は馬車も通れるほど広く、街が近づくにつれ石畳が小綺麗に整えられている。木製の簡素なアーチには蔦が絡まり、小さな花が彩りを添えていた。


人の流れはポツポツ。遠くを見渡してもせいぜい一人二人程度だった。


アーチ脇には白髪まじりの50代ほどの優しそうなおじさんが座っており、

通り掛かる人は皆、そのおじさんに軽く会釈をしているようであった。


シュンもゆっくりとアーチにさしかかる。


おじさんが優しく口を開いた。


「やあ、こんにちは」


「あ、こんにちは」


「……どうもあんたの服装は奇妙じゃな」


おじさんの声に、シュンは思わず肩をすくめる。


「え、ええと……他の街から来ました」


声が少し震える。慣れない状況に、心臓が早鐘のように打つ。


おじさんはじっと見つめる。


「うむ、紹介状はあるのかいの?」


シュンは思わずをポケットに手をやり、探すふりをした。

「い、いや……えーと、さっきまでここに…」


おじさんの眉が少し下がる。


「うむ……悪い人には見えんが、しかしその若さで一人旅というのもどうもおかしいぞ」


シュンの額に汗がにじむ。心臓の音が耳に響き、指先がわずかに震えた。


「そもそもよそから来とるのにおぬし手ぶらじゃないか、追い剥ぎにでもあったか?」


「あ、待ってください

怪しい者ではありません」


(我ながら怪しすぎる…ユウナ…この状況はないだろ、普通にやばいよ)


アーチの奥では、道沿いに腰を下ろした老婆が杖をゆっくりとんとんと突きながらじっとこちらを見つめている。

目の奥には穏やかさと、どこか好奇心混じりの光が宿っていた。


シュンが息を整え、またポケットをゴソゴソやると、ころりと魔石が転がり、光を放った。


「ん、ありゃ、あんた律動師さんか!」


おじさんの声に、驚きと軽い尊敬が混じる。


「どうりで一人で大丈夫なわけじゃな」


さらにおじさんは、目を細めて追求する。


「……しかし、それにしても……この若さで、誰も連れずに街まで来るとはな。律動師としての訓練は十分に積んでおるのか?」


シュンは小さく頷き、ほっと息を吐く。

肩の力が少し抜けるも、心臓はまだ早鐘を打ち続けた。

背後の老婆はにっこり笑い、杖を軽く叩くと、静かにその場を離れていった。

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