第74話 イーサップ防衛戦 4 《挿し絵あり》
「モンスターが突然宙に浮くなんて、そんな馬鹿な」
経験豊富なパイスでも聞いたことがない話だ。
「いや、まあちょっと誇張した言い方だったかもしれないんだけどな
とにかく、弾けたようにぶっ飛ばされたんだ」
「最初は何が起きてるかわからなかった
だけどその後、突然4メートルの壁から飛び降りてきた奴がいたんだ」
(嘘だろ?即骨折案件じゃないか)
シュンには信じられない話だ。
「いや、本当に奇跡だったよ
あいつがいなかったら、おしまいだった」
「どういうことだ?
なんだよ、もったいつけずに早く教えろよ」
「イーサップ最強の青年がいるんだ、こっちには」
「名はアーネス
指導員とともにジルから直接拍の指導を受けていた
まだ覚えて1年だし、なんと律動連盟に加入すらしてないんだよ」
「にも関わらず、俺なんかじゃとても立ち打ちできないほどに」
「…強い」
四人は驚きの色を隠せない。
「年はまだ16だったかな?
彼は侯爵家の跡取り息子だ
危険な場所に向かうのを、父親が許してくれなかったそうだ」
「だが、事態を重く見た彼が父を説得して飛び出してきたらしい」
「そこからはすごかった
目にも止まらぬ動きで、中堅クラスのモンスターをなぎ倒し始めた」
「雑魚どもは、恐れをなして逃げ出して行っていた」
「多分推測するに、その雑魚モンスターが俺たちの馬車を襲いに来てたのかもな
時間から考えると、ちょうどいい感じがする」
「ジャコはもう戦えない状態だった
基本的に前衛がジャコ、後衛がマーシャだったし
物理的な攻撃を食うのもジャコが多かったからだ」
「相手のボスも相当疲弊していた
ただ、マーシャ1人では、さすがに分が悪いところだった
そこへ元気いっぱいのアーネスが乗り込んだんだ
一気に形成逆転し、この場を乗り切ることができたんだ」
同じ師を持ち、年頃も近い
ライドンが意識しないわけにもいかない。
「そいつ、そんなに凄いのかな…?」
「ライドン、お前とはレベルが違うぞ」
ライドンを見すえて、言い放つダルフ。
ここまではっきり言われて、さすがのライドンもイラっとしたように見えた。
「パイス…驚くなよ、アーネスはドゥンバを2つ使う
ジルのラトローシュを独学でトレースしてみせたんだ」
「もう打楽器は一人一つの時代じゃないぞ…
若者たちは常に新しい技術を追い求めている」




