第73話 イーサップ防衛戦 3
「俺の知る限り、王国軍はほぼ全滅だった
死者も2名、それ以外は負傷兵としてその日のうちに運ばれてきた」
「まあその話は後で聞いたわけだが、
何が何だかわからないうちに、俺は若手の律動士の卵たちとともに現場へ向かった」
「不思議なことに、モンスターの発生場所はラルゴ平原ではなかった
普通の農村、むしろ街からほど近い場所だった」
「なんだって?
それだけの数のモンスターが、どう隠れて街の近くまで接近したって言うんだ?」
「わからない
ただ、一体一体の強さはこれまで俺の出会ったどのモンスターよりも強かった
俺も正規律動師として8年この世界にいるが、1対1でなんとかねじ伏せることができるレベルのやつがこんなに一斉に現れたのは経験がない」
「そもそもレベルが150以下の若手たちは、全く歯が立たない
結果的に、彼らは足手まといにしかならなかったのさ」
あまりにも生々しい現場の話に、顔から血の気が引いていくシュン。
さすがのライドンも、顔をしかめている。
「ほら、だいぶ前にパイスが来てくれてからテンポスのレベルはかなり上がっただろう?
イーサップのメンバーは人数は多いが、以前のテンポスのようにそれぞれが大して強くない。
ラルゴ平原にモンスターが現れ始めたのも、1年位前からだしな」
「そもそもレベル300程度の俺に教えを請うている連中だしな」
スタンピードの発生場所がテンポスじゃなくてよかったと胸を撫で下ろすシュン。
そしてやっぱりライドンは天才的にレベルが高いんだと改めて納得した。
「その段階でもうそっちの聖拍院には連絡が出されていたらしいぞ
スタンピードの発生は昨日の午後だからな
お前たち、相当早く着いたな」
「まぁ、とんでもなく良い馬車を当てがってもらったからな」
シュンを横目にニヤリと笑うパイス。
「それでどうなったんだ?」
「まず150体といっても、そのうち100体は俺たちでも普通に倒せる雑魚だった。
だが1体、厄介なボスみたいな奴がいたんだ」
みんなはゴクリと息を飲んだ。
「まずサイズがでかい
普通モンスターはせいぜい1メートル位のやつが多いだろ
だがそいつは、ゆうに2メートルはあった
頭は牛なんだけど、体は人間と同じような作りをしていて、二本足で立ちながら手には鍬を持っていた」
「ミノタウルス…?」
「知ってるのか?シュン」
「いえ、何でもないです
続けてください」
「その強さは尋常じゃない。
レベル400を超えるマーシャとジャコが相手にしても抑えることができなかった」
「こっちじゃ最強の2人が組んでも対処できない相手
自然、他のモンスターたちは俺や他のメンバーが請け負うことになる」
「だが、1匹も漏らさずに戦うのなんてとても無理だ
それぞれに牛型のモンスターたちだが、皆タイプが違う
中にはボスみたく手を使うやつもいる
俺たちとの戦闘から逃れたモンスターたちは、城壁を上り、城内に侵入しようとし始めた」
「こっちも指をくわえて見ていたわけじゃない
だがどうすることもできなかった
この時既にスタンピード発生から3時間は経っていたかな
街の警ら隊や民兵も総動員して、城内に侵入を図るモンスターを止めていた。
それでも負傷者はどんどん増え、立っていられるメンバーは残り少なくなっていた」
(これって全滅する話じゃないのか…?)
シュンは不安になっていた。
「おれは城壁を背に、他の律動師たちとチームで戦っていた
何としても街に入るモンスターを1匹でも減らす…
だが、ふと見上げると城壁の上に4匹ほどのモンスターが手をかけて侵入を試みていた」
「終わった…そう思った時、
不思議なことが起きた」
「…浮いたんだよ、その4匹が、突然」
「宙に浮いてバーっと飛んでいった」
「どういうことだ?」




