第71話 イーサップ防衛戦 《挿し絵あり》
イーサップはクロック王国第二の都市だ。
人口も10,000人規模でテンポスよりずいぶん多く、当然街の規模も膨れ上がる。
城壁も4メートルほどあり、半径1キロあまりの楕円になっている。
テンポスには王国軍はほぼ駐在していない。
行政官がおり、役所もあって、警ら隊も王国から派遣されていたため、クロック王国の一都市として機能はしているが、戦時における治安は律動連盟に一任されていた。
そこのところはシュンにはよくわからないが、テンポスは昔から都市として独立性があり、クロック王国と律動連盟の関係も良かったので、テンポス出身のディエルが大きく権力を握るかたちが実現できているらしい。
イーサップはそれよりクロック王国の色合いが濃く、王国軍が常駐している。
自然、律動連盟の力はテンポスより弱い。
テンポスから指導員が派遣されているのはその理由にもよる。
よって、パイスもカークも自らが救世主の立場だと理解していた。
イーサップの運命は自分たちの手にかかっている。
街が近づくにつれ、モンスターの数は減ってきた。
そのことが逆に気味悪く感じるくらい。
馬車が近づいていくと、立派な城門に兵がおり、こちらに手を振ってくれている。
立派な鎧で、なかなかものものしい姿だ。
テンポスの門番のおじさんと比較しても、それだけで有事の様子が見てとれた。
城壁はところどころ崩れ、激戦の形跡がうかがえる。
(ここまでモンスターが来てたのか…)
「やあ、救援ありがとう」
それに反して門番の声は明るく弾んでいた。
「パイスだ
今回は大変だったな、聖拍院まで案内頼む」
馬車は街中を進む。
テンポスの街と雰囲気は似ているが、大きな建物が多く、やはり都市として栄えているのがわかる。
それより建物の並びや区画が、テンポスのように雑多ではなく正確に割り当てられ、
都市の性格が現れているように感じられる。
街の中心部にそれはあった。
テンポスの聖拍院の2倍はある、巨大な建物だ。
中に入る一同。
白の壁、テンポスと変わらず厳かで気品のある作りではあったが、人々の様子を見るにつけ、さながら兵舎に近い雰囲気が出ていた。
半分は傷病兵、壁にもたれかかっていたり、治療の跡がある者たちだった。
それぞれテンポスと似た戦闘服を纏っているが、こちらはクリーム色の地に緑のラインが入っている。
それぞれがこちらに目をくれるが、力無くうなだれたままの者も多かった。
「パイス!」
こっちへ一人駆けてくる。
背丈はシュンやライドンと変わらないくらいだが、年は30過ぎに見える。
短髪の黒髪。人懐っこそうな笑顔をこちらに向けて来た。
腕には包帯が巻いてあり、各所にあざがある。
「ダルフ、大丈夫だったか?体は」
「ああ、大変だった…本当に
結構逃げてったモンスターもいたと思うけど、道中襲われなかったか?」
「いたよ、牛型のモンスターが
見たことないやつらだった、あれは何だ?」
ダルフの表情が曇る。
「パイス、やばいぜこいつらは
マーシャもジャコも命に別状はないが、手傷は負っている
軍のやつらに至っては死者も出た…
メトルのモンスターとは比較にならんし、
ラルゴ平原と比べても格段に強い」
「ラルゴ平原ってのはこっちのモンスターポイントだよな?
そこですら強いと言われてたが…」
「パイス!」
一際大きな声が聞こえた。
男が一人駆け寄ってくる。
「ビアニス!」
パイスは大きく手を振って迎えた。




