第64話 危機 2
タルネは頭に血が上っていた。
誰が見てもそうだった。
でも、自分では気づかない。
ここ数分間の記憶は全くなかった。
気づくと1人、森の奥まで進んできてしまったようだ。
(どうしよう…イスト置いて来ちゃった)
自分のしたことに今更気づき、激しく後悔するタルネ。
すぐさま集中して周りの状況を確認した。
(小さなモンスターはたくさんいるみたい
わかる、イストは近くにいるわ)
ホッとするタルネ。
(早く行ってイストを安心させてあげないと)
タルネは足早に来た道を戻ることにした。
そのとき。
ゾワッ。
ふと背筋に悪寒を感じた。
それは今まで対峙したことのないような感覚。
フシュルルルルルルル…。
何かいるーーーー。
後ろを振り返ると、巨大な壁のように立ちはだかる熊型のモンスターがいた。
(これは…ターゲット…)
タルネのターゲットであるワギノグマだった。
だが…、
(大きい…こんなサイズ知らない)
ワギノグマには個体差がある。
普段見るサイズは1メートルもない。
だが、これはゆうに1メートル50センチ以上はあった。
ブゥン…。
ドゥンバを顕現するタルネ。
ドォン…ドォン…
軽く打ち込みながら様子を見る。
だが、このサイズのモンスターにジャブは効かない。
「グガアッ!」
目にも止まらぬ速さで襲ってきた。
必死で右後方にかわすタルネ。
だが、そこは小さな窪みになっていて足を取られてしまった。
どすん!
そのまま後ろの茂みに倒れ込むタルネ。
すかさずワギノグマは覆い被さってきた。
(重…苦しい!)
体重は200キロを超えようかという巨体。
タルネにひっくり返す力はない。それどころか。
(ドゥンバが…)
寝転がった状態では頼みの武器すら出すことができない。
「ガウッ!」
必死に持っていた杖でクマの口を押さえるが、鋭い爪がタルネの体に食い込む。
「い…痛っ…!」
タルネはもう拍どころではない。
ワギノグマは体を大きく揺さぶりながらタルネをつかみ、振り回そうとする。
その度に激痛が走った。




