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第56話 夜の森

二人の目指す場所は、森の中でも割合と近いところだった。

単純に森といっても、ただ野生の植物が群生しただけの場所ではない。


何度も優れた律動師たちがこれまでに踏破を繰り返した場所であって、ある程度道ができている。


二人は森の中心部に向かってゆっくりと歩いていた。

ほとんど会話はなかった。

というのも、普段からタルネはまるでしゃべらないし、大概イストが一人で喋っていることが多かった。


神座として女神様の言葉をお伝えするがゆえの口数の少なさ。

これまではそれが理由であった。が、今はそれだけではない。


自分の言葉に古代からの響きが混じっている。

それを知るようになってから、タルネは以前にも増して無口になった。

一言一言を大事にしていると言える。


気づけば森の中は静まり返っていた。

時おり聴こえる虫の声だけが二人の沈黙を埋めていた。


静けさに耐えられず、イストは口を開いた。


「ねぇタルネ、さっきのあなたの言い方だけどさぁ…」


「?」


(いや、タルネは何も悪くないわ

グズついてたあたしを促してくれただけ…)


(でも…あれじゃまるであたしだけが臆病者みたいじゃない)


どうしてもムカムカする気持ちが湧いて出てしまうイスト。


(タルネったら、いつもあたしのことばっかりだったくせに、最近なんだか生き生きしちゃって)


イストは自分では気づいていなかった。

神座の家系だというだけで、みんなから一目置かれるタルネ。

あの高慢男のライドンが、タルネにはいつも頭が上がらない。

テンポス律動連盟のボスですら、タルネにはさん付け。


イストは自分がタルネの友達であることが誇らしかった。

でも、本当は…。


イストは生まれたときからルストの妹だった。

ルストという村一番の器量よしが姉にいる。

クロニアでも名の通った商家に嫁いだルストが。


自分は…。


自分には…。


(なんで、こんなにモヤモヤするんだろう?

あたし、どうしちゃったんだろう?)


イストの中に1つの疑問があった。でもそれは今までタルネに投げつけずにいた。


でも、今。

頭に描いてしまったら、言い出さずにはいられない。


「あのさ…タルネは

シュンのことどう思ってるの?」


「え?」


タルネには何のことかわからない。


「え…いや、だから…

す、好きなの?シュンのこと。」


タルネは歩きながら、横目でイストをじっと見る。

 



「…好き」




ガーン!

イストには大きなショックだった。

これまで、タルネは自分のことしか見ていない。そう信じていたから。


「ごめん、そういう意味じゃなかったんだ

あの、ずっと一緒にいたいとか添い遂げたいとかそういう気持ちがあるのか?ってこと!」


立ち止まる二人。

少し首を傾げながらタルネは言う。



「結婚したいけど…」



ズガーン!!

質問を分けたせいで2回衝撃を受けてしまうイスト。


(信じられない、あたしのタルネが…)


沈黙が流れる。





「イスト……何?」


その言い方は明らかに怒気を含んでいた。


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