表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/79

第55話 成果

日も暮れ始めたメトルの森。

空には細く美しい月が静かに浮かんでいた。

森は夜になるとガラッと顔色を変えて見せる。

さっきまで、あらかたモンスターを倒し切ったはずだが、またしても森には野生の鼓動が再び目を覚ましていた。


「二人とも大丈夫かしら?」


「…ちょっと…心配…」


さすがにこの状況に不安を隠せないイストとタルネ。

ステラは冷静さを取り戻していた。


「二人ともステータスを見せなさい」


「はい」


二人はもうステラに対して完全に従順になっていた。


ブゥン…


「…そうね、レベルは少し上がってるけど、さすがにパラメータまでは変化なしね」


少しがっかりするイスト。


「新しいリズムは明日覚えるとして、もっと精神を鍛えないとね」


「はい!教えてください」


やる気満々で答える二人。


「そうね、タルネは三拍子、変拍子が得意ね

落ち着いたリズムを奏でられる

イストはとにかく速いリズムが得意、フィルインも直線的な動きになる」


「タルネ、あなたは基本的な出音はとても綺麗よ

あとはもっと正確なリズムを意識しなさい

練習のときも計測器を使ってもいいかもね」


無言で頷くタルネ。


「イストあなたはもっと倍音を意識しましょう

響きを出すの

もちろん現物のドゥンバでも出来ないとだめよ力を抜いて腕の重さに身を任せて、打つの」

「イメージのドゥンバでも、より響きを意識しながらやってみて あなたは得意なはずよ」


「倍音…」


初めて聞く言葉に首を傾げるイスト。


「わからないかしら

筋肉を使わずに、できるだけリラックスした状態で落とすように鳴らすのよ

そうすると、力任せに打った時よりも低音の成分が増えるわ

それがそのまま音の伸びにつながって、リズムのズレを解消してくれるの

多少間違えてたりしても調整できたりしちゃうわよ」


「タルネ結構できてるのよね、

生まれつきなのかしら あんまり力任せに打たないところがとっても素敵なのよ」

「イスト、あなたはこれから先細かい鼓動の相手と戦う時は技術を身に付けるか、力を抜いて倍音を磨くかどっちかしないとダメよ」


「はあ…力を抜く」


イストにはいまひとつ実感がない。

これが今まで人から教わったことない人間の辛いところだ。

そもそもいつでも全力で生きてきたイストに、力を抜いて叩く概念などない。


「以上のことから…

タルネのターゲットはワギノグマよ

イストのターゲットは吸血コウモリね」


「?」


二人はなんのことかわかっていない。


「ワギノグマはだいたい一本杉の近くから岩肌周辺にいるわ

吸血コウモリは中央の洞穴の中にいる

30匹はいると思うから、気をつけてね

はい、これ」


二人に一つずつ振動光を渡すステラ。


「あの…ステラさん、ターゲットって、もしかして今から?」


「そうよ、ナイトハンティング

行ってらっしゃい」


「えっ!?」

「あの、夜はモンスターの活動も盛んになるわ

強さだって何倍も強いし、あたしたちそんなのやったことないです」


イストをじっと見るステラ。


「別に一人ずつやって来いなんて言ってないじゃない

一緒に戦ったらどうなの?仲良しなんでしょ」


「二人だって…そんな簡単には…」


口ごもるイスト。手は握りこぶしを作って震えている。


「イスト…やろう」


タルネが背中を押した。


「修行しに来たんでしょう?

がっかりさせないで」


ステラは強く言い放つ。


二人はゆっくりと夜の森に向き直る。

陽はもう完全に落ちていた。





※補足

倍音とは、自分の出している音の中にある多数の周波数の音が重なっているとのことです。

ステラはいい響きの正体をたくさん音が重なっていることだと認識しています。


タルネが得意なのは三拍子。

世の中のほとんどの曲は四拍子です。「ワン、ツー、スリー、フォー」とカウントされます。

「ワン、ツー、スリー」でひとまとまりなのが三拍子です。

ステラはタルネはそれ以外の変則的なリズムも得意なのではと勘付いているようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ