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第52話 覚醒

「え、ライドン大丈夫か!?」


「ライドン!」


「!」


音を立てて、ライドンは床に倒れた。

三人は慌てて駆け寄る。

彼は意識を失い、白目を向いていた。

これはどうしたことだ?


「ステラさんを呼びに行ったほうがいいかな?」


イストがそう言った時、ドアが開いた。


「誰か倒れたかしら?」


ステラは入ってくるなり真っ先にライドンを見据える。


「これは、ゲージを使い切ったわね」


「どういうことですか?」


「この子はもともとしっかりイメージできる子だったから、使っている集中力はあなたたちより上だったのよ

完璧に集中する状態をゾーンに入るって言うのだけど、

長い時間それをやり続けてピークが来たようね」


ステラはライドンのまぶたをそっと伏せ、その体を抱え上げた。


「一旦寝かせておくわ

あなたたちは続けなさい…あら」


ステラの目線の先にはイストがいた。

彼女はこの状況の中でも自分のドゥンバを出現させ続けている。

その姿を見て、ステラはニコリと微笑んだ。


「なかなか良い傾向ね

でも、あなたたち全員が『こう』ならないとダメなのよ」


目でライドンを指すステラ。

全員が失神するまで、やれ。そう暗に言ったのだ。


(確かにこれはとんでもない修行だぞ)


ーーーーーーーー


午後二時を過ぎた。


全員が2回以上失神を経験している。

ライドンに至っては4回だ。目の下には大きくクマができ、意識も今にも途切れそうだが、それでもドゥンバを消さずにいる。


シュンもまた、記憶を探るあいだずっとドラムセットを出しっぱなしにしていた。

解除すれば楽になるのだとわかっていても。

…これは相当な苦行だ。


シュンは自分の出ていたライブハウス『下北沢ガレッズ』のホールの様子やバーカウンター、楽屋や階段、隅々に至るまでほとんど思い出せていた。

それでもドラムのブランドが何だったかは思い出せない。

いや、ブランドはこじつけでもいいのだ。

それでもシュンはそのやり方は嫌だった。

それはドラムに対して誠実じゃないと思ったから。


(でも、なんでおれはいつも使ってた学校のドラムセットじゃなくて、ライブハウスのドラムセットを最初にイメージしたんだろう?)


(学校のドラムはタマ、これは覚えてる

ロゴもしっかりわかる

でもガレッズのはちょっと違ったんだよな…)


(先輩方みんな1タムなのにおれだけ2タムっていじられてて…でも2つあるなら両方使いたいって言ってたな…)


(なんと言っても部室のドラムとライブハウスのやつは決定的に違うんだよな〜気持ちよさが…

違う楽器を叩いてるみたいな…

………だって…)


(…………)



(……………)








ズドッ!!!!

ダァアンッ!!!!!


ズドッズドッ

ドガァン!!!


ガシャーン!!!






「なっ、何事っ!?」


ステラが泡を食って飛び込んできた。










※補足


ドラムセットの中で中音を担当するのがタムです。

タムは1つを使用する人と2つ以上を使用する人で分かれます。

1タム(ワンタム)、2タム(ツータム)という言い方をします。


シュンの軽音部ではシュン以外全員1タムでしたね。

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