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第51話 修行 6

「あの、全部答えたいんですが…」


ステラはシュンをジトリと見返す。


「記憶喪失…なのよね

都合の良いこと」


口元をヒクヒクと動かし、引き攣った笑顔に変わるステラ。


「すみましぇん…」


この都合の良い理由が通るのもテンポスの街だけなんだろうな、と思うシュン。


ダダダッ。

ステラはおもむろにドアを開けそのまま飛び出してしまった。

残された四人はキョトンとしてドアを見つめている。


「なんであいつだけか適性がAなのよ!

しかも、生まれつきかなんなのか、かっこいい楽器までもってて、

なーんの苦労もしてなさそうな!顔して!

貴族じゃないのに学校まで行っちゃってさ!

わたしだって、あのかっこいい楽器叩きたいわよ!

ムカつくーっ!!」


遠くの方でそんな叫び声が聞こえた気がした。


ガチャ。

ドアが開いてステラが戻ってくる。


「さ、続けましょう」


一同は今のことには触れないことにした。


「あなたのそのドラムセットだけど、胴の部分に何かがはめ込んであるみたいね

それは何なのかしら?」


「あ、確かにそうですね」


(ドラムって、胴の部分にブランド名が書かれているイメージがめちゃくちゃある!

でもおれはそこまではイメージできてなかったみたいだ…

プレートが貼ってあるところまではわかっても、何のブランドまでかわからないなんて…

ガレッズのドラムってどんなだったかな?)


パール、タマ、ヤマハ。

いろんなブランドを頭にイメージしてみる。

ある意味ブランドは何でもいいはずなのだ、要はイメージさえできれば。

だが、それができない。


「だめみたいね

現物を見に行って確認することはできないの?」


「できません…

記憶をたどるしか」


シュンは後悔した。

こんなことなら、もっと真剣にドラムをやってればよかったんだろうな。

自分の好きなドラムのブランドすら思い出せないなんて。


「自分でなんとかするしかないようね

あなたたち全員そうよ、自分たちの武器のこと、ちゃんと細部までイメージすることね

こんなふうに」


ブゥン…!


ステラは目の前に、自分の相棒を出してみせた。

改めて見ると、それは実際にそこに存在しているかのように、異様なほどリアルに結像していた。


通常のドゥンバとは明らかに違う。

深い青地の胴には、宝石のような輝きを放つ装飾が埋め込まれ、

さらに金属の細工が随所に絡みつき、まるで儀式用の聖具のような威圧感を放っている。


まさに格の違いを見せつけたというやつだ。


いつの間にか、四人の楽器は消え失せていた。


「あら?

どうしたの、あなたたち?

今日はずっと、武器を出し続けなさい」


「え、一日中ですか!?」


四人は目を丸くした。

それもそのはずだ、今までシュンは最高でも2 〜3分しか楽器を出し続けたことは無い。

ライドンも、せいぜいそんなものだ。


「ステラ… さん、それは無理だよ、

5分も続けたらくたくたで、何も考えられなくなっちゃうよ」


「言葉に気を付けな」


「あ、はい…」


にべもなく、遮られるライドン。


ステラは近くの棚を開けると現物のドゥンバを出し、それを一同の前にどかっと置いた。


面白いことにそのドゥンバは楽器に直接シンバルが付いていた。

黒い鉄の棒が横から伸びて、シンバルスタンドの用に見えるが、シュンの知るものよりずいぶん細く、先端に皮が巻きつけてあり、それで支えてある。


「ほら、本物を持ってきてやったわよ

これを見て、とりあえずイメージしにくいものがあったら参考になさい」

「シュン、あなたは…もっと大事なことがありそう

だから、そっちを優先させるのよ」


「はい、わかりました…」


シュンだけは別メニューだ。

だけど、これはこなさねばならない。

自分のドラムに対する姿勢をここで改める必要もあった。

この楽器で、この世界で生きていくと。


「私はひとまずティータイムにしたいし、他にやることもあるから一旦出て行くわ

そうね、三時には戻るわ

1分の休みもなく、ドゥンバをイメージし続けるのよ」

「かなりの荒療治かもしれないけれど、三日間で戦力になろうと思ったら、これぐらいはやらないとね」


愕然とする若者たち。


「サボったって構やしないわ、わたしに支払った指導料は変わらないわけだから

頑張ってやったほうが絶対にお得だと思うけどね

それが終わったら、夕方からは狩りよ

強くなった武器で戦いなさい」


そう言い残すと、ステラはまたいなくなってしまった。


これは…やるしかないのか。


四人とも懸命になって、自らの武器をイメージし続ける。


シュンは、思い出す作業だ。

自分とドラムの時間を。

楽しい時間、苦しい時間。

改めて向き合うのだ、ドラムとの思い出を。


ーーーーーーーー


各々が修行を始めて15分ほど経った。


ーーードサッ。

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