第50話 修行 5
「まず、パラメータにおける再現性とは
これは一度聴いた音をどれだけ正確に表現できるか、よ
対人戦においては、とても大事なことよね」
「そして自分がプレイした内容も覚えていて、すぐにでも引き出せるっていうのも大事よ」
「精神力、これはモンスターと戦い続けないと得られないもの
どんな状況でもブレないタフさ
若いあなたたちに不足しているのは仕方ないことよ
なので、まずはここで再現性のトレーニング
それが終わったら、とにかく討伐よ」
ライドンにとっては知っている話だった。
それでも改めて聞くことで、理解は一層深まるというものだ。
四人は言葉を挟まず、おとなしく聴講者となっていた。
「まずは全員武器を出しなさい」
ブゥン…
空気を振るわせて、目の前に各々の楽器が出現する。
三人はドゥンバ。
そしてシュンの前にはもちろんドラムセットが現れた。
「改めて見ると、あなたのそれって本当に場所取るのね」
日本の家庭事情でも言えることだが、ドラムセットなんてそうやすやすと自宅におけるものではない。
まさか、異世界でも言われることになるとは。
「イスト、あなたのドゥンバは形がいびつよ
ちゃんと意識できてない証拠ね
リズムの再現うんぬんの前に、自分の武器もイメージできてないなんて」
「タルネは形はいいけど、ドゥンバってそんなに綺麗だったかしら?
お家に帰って、自分のやつを見てみなさい
叩き続けるたびに、皮は疲弊し、手の跡がつくわ
胴体だって、新品のままではいられないはずよ
細かい傷が多いはず」
二人は閉口した。
言われた通りなのだから、仕方ない。
自分たちの未熟を恥じるしかなかった。
「ライドンは、、、
悪くないわね、でもなんであんなにシンバルはダメなんでしょう」
「あなたまだ叩かせてもらってないの?」
ライドンはギクリとした。
「師匠は、基本的に簡単な低音と高音のコンビネーションしかやらせてくれないよ
まず、ノリが出ないとダメだからって
もう二年間ぐらいそれしかしてないんだ」
「シンバルは自分で使ってるのもあるけど、メトルの森だとなかなか対象のモンスターがいないし」
「あんたってほんと言われたことしかやらないのね
才能があるのはわかるけど、もっと自分で自分を伸ばそうと思わないのかしら」
「そもそもジルが使ってるのだってドゥンバじゃなくてラトローシュじゃない
それを使ったこともないみたいよね」
「うー…」
ライドンは何も言い返さない。
ステラはここまで思ったことをずけずけと口に出すのに、それでも普段からイライラしてるんだからすごいな、とシュンは思った。
「さぁ、問題のあなたの楽器だけど、
本当にむかつく位綺麗な円形なのよね
どうやったらこんな形になるのかしら?」
「あなた家にこの楽器はあるの?
どうやってここまできれいに再現してるの?」
シュンは正直に答えるしかない。
「いや、家にこんな大きなものは置けません
ドラムを始めてからまだ一年位しか経ってないし、しかもその間も週に1、2回しか触ってないですね」
「あなたってとんでもない田舎の出身なのよね、
ご両親は農家?
どこへこんなものを叩きに行かせてもらってたのかしら
ギルドで貸してくれてたの?」
「いや、学校がありまして」
「学校?このテンポスの街にしたって学校は1つしかないわよ
城外にしたって、あったとしてオームやカマンドの聖拍院で読み書きを学ぶ子供たちはいるけれど
なんでそれよりもっと田舎から来たっていうのに学校があるのよ」
「あ、いや…」
「あなたって実は他国の貴族様じゃないわよね?」
「怪しすぎるわ、出自をはっきりして」
ステラの追求はなかなかに厳しい。
シュンはボロを出さない自信がなかった。




