第46話 修行
「え、修行をつけてくれるんですか?ぼくたちに」
喜びの声を上げるシュン。
「へえ、あなたもやりたいの」
一転して表情を緩ませるステラ。
「やりたいです、やらせてください
ぼくも強くなりたいんで」
「私も…」
タルネもやる気だ。
(この子たち、いいわね)
ステラは、いつの間にかこの若者たちに、かすかな好感を抱き始めていた。
無謀で、少し間が抜けていて、それでもどこか必死なところが…悪くない。
ライドンがチラリとシュンを横目で見やる。
「おい、シュン。
俺たちは……ほら、忙しいだろう?」
遠回しな逃げ腰の言い方だった。
その瞬間、ステラの視線が鋭く跳ねる。
ギロリ、と一睨み。
「何か言った?」
「いや、そんな」
「あっそ
修行するのは別にいいけど、
テンポスNo.2の律動師の私の時間を奪うのよ
お金は払えるのかしら?」
当たり前の話だ。
正規の連盟律動師の二人とは違い、プレイヤーの二人もいるわけだからなおさらだ。
「あの、おいくらですか?」
恐る恐る聞くシュン。
「そんなに取らないわよ、3日でしょう、一人40,000クランずつでいいわ」
シュンは一瞬頭で計算する。
なんとなく足りるような気がした。
「あ、わたし…」
「タルネ、あなたの分は私が出すから大丈夫よ」
「あら、ずいぶん太っ腹なのね」
「イスト…」
そうね、そしたら
「明日の朝9時ダンテ寺院まで来なさい
寝床と食事ぐらいは用意してあげるわ」
ーーーーーーーー
交渉はうまくいった。
おそらく修行を乗り越えることさえできれば、ステラはイストを花園に連れて行ってくれることであろう。
日も落ちてきたことだし、シュンとライドンはオームの村まで二人を送り届けることにした。
イストはよほど嬉しいのかスキップしながら先を行く。
初めて誰かに拍を教わる。
それはずっと彼女が求めてきたものだったから。
「イスト、子供みたいに喜んじゃって」
シュンはライドンに小声で言う。
「まあわかってないからな
ステラの修行はやばいんだよ、精神にくるというか…」
「ライドン、やったことあるのか?」
「寺院までは行ったことがないけど、少しだけなら教わった事はあるよ、
師匠の練習も大変なんだけど、ステラのは…
また全然違うのさ」
ため息をつき肩を落とすライドン。
この感じで、よくここまで強くなって来れたなとシュンは思った。
「イスト、ありがとう
お金大丈夫なの?」
タルネはイストに聞いた。
「ああ、全然大丈夫よ
こないだ姉さんからもらったお金
いくらだったかなぁ」
「100万クランぐらいかしら」
「えっ!?」
シュンとライドンは大声を出して驚いた。
タルネは、頭の帽子を飛ばす勢いだ。
「そうよ、結納金みたいな感じかな」
「でも、それ以外にも毎月まとまってお金が届くし、なんかウチ、家財道具とかも大体新品になっちゃったんだ」
(イスト…お前、それでも結婚に反対してたんだな
もしかしてお姉さんて、意外と今頃幸せなのか?)
シュンは深く考えないことにする。
むしろ、おれたちもおごってくれよとも思っていた。
「そういえばさ、ステラに払う40,000クランて、三日間の寝床と食事付きなんだよな…
これって意外と安いんじゃない?」
「…そうかも、ダンテって女神様崇拝のところだから連盟とすごく仲がいいんだけど、使わせてもらった分お布施は払ってると思うし…」
「ステラにはなんの得があるのかな?」
「シュン…、ステラはさ、あれで結構若者を鍛えるの好きなんだよ」
「そうなの?でも試験では指導というより一方的なイジメみたいに見えたけど」
ライドンは上を向き、少し考える。
「それは多分、おれが伸び悩んでるのを知っててイラついてたんじゃないか?
でもしょうがないだろ?世の中には修行より楽しいことがいっぱいありすぎるんだから」
「なるほど、最年少のホープがこれだとな…」
「何か言ったか?」
地獄の修行が明日から始まる。




