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第45話 交渉

ステラは頭を抱えてうなだれていた。ーー


テンポスの街の片隅に、小さなカフェがある。

ステラはそこで夕涼みをしながら、ワインを片手に軽い夕食をとるのを、ひそかな楽しみにしていた。

人通りの少ない通りに面したその店は、喧騒から切り離されたようで、彼女の気性にちょうど合っている。


一方、テンポスの律動師たちは、タスクが終わるとたいてい《つづみ亭》に集まる。

料理は文句なしにうまく、そのうえ値段も安い。

仲間と腹を満たすには、これ以上ない店だった。


だがその空間は、ステラにとっては居心地が悪い。

城壁職人や材木運び、いわゆる日雇い労働者や荒くれ者の独身男たちが群れをなし、

酒と汗と大声が入り混じるあの雰囲気。

それを見るたび、胸の奥に小さな嫌悪が溜まっていく。


だから彼女は、今日も静かなカフェを選ぶ。

人の少ない場所で、誰にも邪魔されずに夜へと沈んでいく街を眺めながら。


その時間がーーー


今日は台無しだ。


「なんなのよあんたたち、ガン首揃えて」


カフェでワインを片手に夕涼み。

そんな優雅な情景から、かけ離れたところに存在する四人組だった。


「ステラさん、お願いがあります」


イストが一歩、前に出た。


「待って、なんであたしがここにいるってわかったの?」


「それは…」


全員が、なぜか視線を逸らした。


「まあ、口止めされてるでしょうね

でもだいたい想像がつくわ」

「で、なんなの?手短に終わらせて」


ライドンが口を開く。


「ステラ、花園のタスクあるだろう?あれに

ここにいるイストを連れて行って欲しいんだ」


ステラは一瞬きょとんとし、

次の瞬間、口をあんぐりと開けた。


「…は?

あの、あなた何を言っているの?

この子オームなんでしょう?

あそこに入るには連盟の許可がいるじゃない

ボスはオーケーしているの?」


「それは…オーケーさせるよ

ボスだって今度のツキヨリに同行させてほしいってオームに掛け合ってるんだから」


それは本当の話だ。


「な?」


うなずくタルネ。


「大丈夫…と思う」


「それはレゾヌスへの立入を許したことへの借りを返す形じゃなかったかしら?

花園への同行なんて、また新しいわがままじゃない…ボスがそう簡単に」


言いかけてステラは少し考えた。

ボスのシュンへの傾倒ぶりを思い出す。

さらに、まだ少女にすら見えるタルネに対して敬称をつけて呼んでいた。

あの常軌を逸した感じだと…。


「許すかもしれないわね」


がくっと頭をもたげるステラ。

嘆願者四人の顔が、一斉に明るくなった。

ちびまる子ちゃんだったら、パァアと周りにオーブが浮いているところだ。


「なんて運のいい奴らでしょ

ただ、あんたたちに何ができるのかしら

そもそもついて行ったところで、頭がおかしくなって終わりじゃない」


一同はまた奈落の底に突き落とされた。


「あとね、このタスクはわたしの"シマ"みたいなもんよ」


ステラはワイングラスをくるりと回した。


「そもそも、テンポスの連盟にはあたしとマーシャしか女性はいないわけ

あのお花畑は、ほとんどわたしたちだけのものなのよ」


視線が鋭くなる。


「そう簡単に譲ると思う?」


ステラの言い分はもっともだ。

数少ない優良タスクを突然やってきた訪問者にホイホイ譲るのは普通に考えればあり得ない。


「タスクはやらない」


静かにそう言ったイストに、

全員の視線が集まった。


「1本だけあればいいんです

タスクに参加しないわ

換金しません、持ち帰りたいから」


驚きとともに、じっとイストを見つめるステラ。


(何か事情があるのかしら)

(でも、ずいぶん気合が入ってて良い目をしてるわね)


ステラは視線を外さない。イストもじっと見つめ返す。


「ふぅん、覚悟を決めたような顔してるわね

確かに、タスクに参加しないのであれば

私はそんなに不利益は被らない」


ほっとする四人。


「ただ、目の前で死なれちゃたまらないからね

ステータス見せてくれる?」


ブゥン。

迷わずオープンするイスト。


「レベル93?」


「同行を許すわけにはいかないわ、

断言できる

あなたは死にます」


冷酷な言い方。

でも、それは大いに優しさを含んでいた。

それほど危険なタスクだということを、ステラは暗にみんなに教えてくれているのだ。


イストは、もうすでに目に涙を浮かべていた。


「どうしたらいいんですか?

私、どうしてもやりたいんです」


「泣くんじゃないわよ

しゃんとしなさい

そうね」


少し考えるステラ。


「三日間、修行してみる?」

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