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第33話 回想

シュンはゆっくりと目を見開いた。

視界に入ったのは、ダンジョン内の岩肌ではなく、静かな一室の天井だった。


「あっ、起きた!」


声の方を見ると、そこにはイストがいる。


体を動かそうとして、はじめて気づく。

自分はあたたかい布団の中にいた。


――ここは、天国か?


ふいに抱きついてくるイスト。


「よかった!目を覚さないかと思った」


イストは律動師の道着ではなく、普段着のスタイルだった。

一瞬やはり天国かと思ったが、息遣いが温かい。


「あれ?おれ生きてるのかな」


「なに言ってんの!大変だったんだから、生きてて良かった」

「あんた二日も寝てたのよ」


とてつもない安心感に包まれてシュンの目は涙であふれた。


「良かったぁあ」


イストも目に涙を溜めていた。


「みんな呼んでくる!」


駆けていくイスト。


(本当に助かったんだ…一体何があってあの絶望の淵から生還できたんだろうか)


ふと周りを見渡すシュン。

そこにはベッドが並び、清潔感からか病室のように見えた。

外は晴れて小鳥が鳴いている。


「シュン!」


ライドンが走ってきた。


「おい!良かったな!

お前死んだかと思ったよ」


「こっちのセリフだよ、ライドン

生きてて良かった」

「タルネは?」


タルネはドアの向こうでこちらに半分だけ顔を見せている。


「タルネ!良かった

大丈夫だったの?」


タルネはまだ足を気にしながら少しずつシュンに向かっていった。


「シュン…ありがとう

あなたのおかげで、生き残れた」


「おれは何にもしてないよ、タルネの生命力が凄かったんじゃないか?」


談笑する四人。

死の寸前から舞い戻れた安堵感でそれぞれの絆は一層深くなった。


「イスト、何があったんだ?」


「うん、あの時ね…」


ーーーーーーーー


タルネ、シュン、ライドンの三人は意識を失っていた。

このままでは蜘蛛の餌食になるのは時間の問題だった。


イストは天を仰ぎ、全滅を覚悟した。


そのとき。


ドンスタドッタンドンスタドッタン

ドンスタドッタンドンスタドッタン


素早いリズムの音が奏でられる。


非常に正確なリズムで部屋全体にこだまする。


「ヴヴ…ヴ…」


モンスターの動きが止まる。

気のせいか複眼も細かく明滅して見えた。


ドンスタドッタンドンスタドッタン!

ドンスタドッタンドンスタドッタン!


さらにリズムは音圧を強めていく。


「ギャワ…グアガァアッ」


たまらず半身まで飲み込みかけていたシュンを吐き出す大蜘蛛。

糸の粘着力も弱まり、タルネを引っ張る力も無くなった。

急いでタルネを引っ張り抱き寄せるイスト。


(すごい…この正確なリズム、一体…?)


イストは階段の奥を見やった。


その瞬間、闇からふわりと軽やかに化け物を飛び越えてきた女性がいた。

イストよりはずいぶん背が高い。


ドンスタドッタンドンスタドッタン

ドンスタドッタンドンスタドッタン


リズムは止まない。


女性はこちらへ歩いてくる。

焦げ茶色の長い髪を後ろに結んでいる。

クリーム色に金色のラインの入った服。


(テンポスの制服じゃないわね…あの服はたしか)


その人はイストの頬に軽く触れてみせた。


「よく頑張ったわね、もう大丈夫」


タルネの首元を触る。


「この子も大丈夫そうね」


そしてイストの顔を見てニッコリと微笑んでみせた。 

イストはホッとした気持ちからまた涙が頬を伝って落ちてきた。


ドンスタドッタンドンスタドッタン

ドンスタドッタンドンスタドッタン


ふわりともう一人飛び降りてきた。

また女性だ。

こちらは黄色の髪で、制服はテンポスのものだ。

身長はイストよりわずかに高いくらい。


「ジル、大丈夫そう?」


「こっち二人はOK、

男の子たちも多分大丈夫そうよ」


茶髪の女性はシュンの脈を確認しながら言った。

そのまま辺りを見渡す。


「それよりこの空間が持つかの方が心配だわ」


「おーい、どうだ?」


階段の上の方で男性の声がした。

こちらは年長者のようだ。


黄色い髪の女性が大きな声で答えた。


「間に合ったみたい!

リズムやめないで」


ドンスタドッタンドンスタドッタン

ドンスタドッタンドンスタドッタン


リズムを奏でているのは階上の男性らしい。


茶髪の女性がライドンを抱き起こす。

そのまま片方の手で楽器を具現化する。

それはイストの見たことのない形だった。


ドン、タン、ドン、タン、


「がはっ!」


ライドンは何かを吐き出し、

そしてうっすらと目を開けた。


「…し、師匠…?」


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