第31話 レゾヌス遺跡 5
鉄の棒はかなり古い素材には見えるが、不思議と朽ちてはいない。
四人の行く手を阻むには十分な強度を保っていた。
だが、対処法はライドンが知っていた。
「鉄棒も鼓動で動いているぞ、
よく聴いて反転したリズムを叩き出せ」
…ドンッッタンドンドンッッタンドン
ライドンは少し前傾姿勢になりながら鉄棒を動かしている鼓動に耳を傾ける。
タンッッドンタンタンッッドンタン
彼はすぐさま真逆のリズムを展開した。
瞬間、みごとに鉄棒が数本叩き折れた。
(…すごい!)
シュンも同じようにコピーする、また何本か鉄棒が折れた。
「いくぞ!」
ひび割れた鉄棒を蹴り倒し、
一気に檻から出た、そのとき。
「シュン、止まれ!」
ガタンッ!
下には落とし穴が仕掛けられていた。
「あ、ありがとうライドン」
「前を見ろ」
前方からは鋭い刃が回転しながら押し出てくる。
ドォンッ!
「低音をとりあえず一発かませ、仕掛け系はだいたいこれで一旦動きが止まる
あとからリズムは解析すればいい」
視線を逸らさず、前だけ見ながら淡々と教えてくれるライドン。
頼りになるやつ、とシュンは思った。
次々と襲ってくる回転刃、
ドォム!ドォム!
それも叩き折って回るイスト。
「とりあえず階段まで急ぎましょ!」
一同階段に向き直したその瞬間、
上部から突然飛んでくる網。
タルネは持っていた杖を上手く使い、それを絡めとる。
さらに片方の手でドゥンバを刻む。
網はたちまち効力を失う。
「まだ来る、避けて」
今度は横の壁からも目の前に突き出る鉄棒。
だがこれは致命傷を与えるというより生け取りを目的にしているように思えた。
シュンには何か誘導されているかのような感覚があった。
黒い扉から意識を逸らさせようしている…
そんな悪意めいた感じが。
(どうも気持ち悪い…)
考えないようにしても、あの扉のことが頭から離れない。
この施設の全ての掌握をしていたであろうあの場所ーーー。
(1,000年とも言われている歳月を過ぎてもまだ動くっておれたちの世界の電気のエネルギーよりすごいんじゃないか…?)
続け様に襲ってくる仕掛けにも少しずつ対応できるようになり、
むしろシュンはその背後に潜む科学力の凄まじさに驚愕していた。
ドォン ドォン
鳴り止まない音。その響きは次第に大きく、重くなっていくようにも感じられた。
パラパラと舞い落ちる砂塵。
このまま居続ければ、足元もろとも崩れ去る危険すらある。
「ひとまずこの棒だけなんとかしよう
片付いたら速攻で逃げるぞ」
各々ドゥンバを鳴らす。シュンももちろんドラムセットで応戦している。
連携の取れたパーティにとってこの程度の妨害は苦ではなかった。
「よしっ、そろそろ一通り片付いたな」
一同目を合わせて少し安堵の表情を浮かべた。
ーーー次の瞬間、
静寂を破るように、階段の方でゴソゴソと何かが蠢く音がした。
四人の呼吸は一瞬にして止まり、凍りついたように身動きが取れない。
耳を澄ますと、微かな金属音と、壁を伝う不気味な摩擦音が混ざり合っている。
何かが、階段から壁を滑り降りてくる──その気配が、空気を震わせる。
「警戒しろ!」ライドンの声が部屋に響く。
四人は無言のまま彼の指示通りに散り、階段を取り囲むように位置を取った。
心臓の鼓動が耳鳴りのように響く。
暗がりの中、目だけで互いに確認し合い、気配の正体を探る。
階段の影は深く、何者かがそこに潜んでいることを確信させた──けれど、姿はまだ見えない。
ゴソゴソ…。
そのとき、
ヒュッ!
突然何かが空気を切る音を立てて飛んできた。
鋭く発射された『それ』はタルネの足にグチャッと絡みついた。
「あっ」
みんなが気づいた瞬間、タルネの体は地に伏していた。




