第28話 レゾヌス遺跡 2
「タルネ…本当か?
少しもわからないのか?」
ライドンの声に焦りが滲み出る。
石の壁はただ静かに聳え立ち、四人を見下ろしていた。
「全くわからないわけじゃない
ところどころは…でもやっぱり…意味がわからない」
「タルネ頼む、評議にかけられたら…おれはお先真っ暗なんだよ」
祈るライドン。
シュンも石壁を凝視する。
イストはタルネのすぐ横でただ見守っていた。
何も起こらぬまま、数分の時が流れた。
(…あれ、これって)
シュンが何かに気づいた。
(最後の方にある点字のようなもの、
……もしや音符じゃないか…?)
「あのさ、みんな
ちょっとだけいいか?」
みんなシュンの声に耳を傾ける。
「この最後の点の並びだけど、リズムを表してるようには見えないか?」
ドンタンドンタン
シンプルなエイトビートの形に見えなくもない。
「シュン、さすがにちょっとこじつけじゃないか?丸が並んでるだけにしか見えないけど」
受け入れないライドン。
「一応やってみましょうよ」
ドゥンバを具現化するなりイストが試しにやってみた。
ドンタンドンタン
……何事も起こらない。
「どうやら違うようね」
また振り出しに戻る四人。
「…待って、リズムとすれば」
「わかるかもしれない」
「えっ?本当か?タルネ」
「最初の方はほとんどわからない
でも」
「リズムだとすれば、点字の上の文字は…
たぶん速さ BPMは180以上」
「180か、結構速いな」
「上記を基調としたエイトのリズムを、
三種奏でよ」
(テスト問題みたいだな…)
「そういうことなら簡単だわ」
イストがずいっと前に出る。
具現化されるドゥンバ。
ドンタドドンタン!
ドンタドドンタン!!
ドンタンドドタン!
ドンタンドドタン!
ドンタドンドタン!
ドンタドンドタン!!
綺麗に打ち分けられた三種のリズム。
BPMも申し分ない速さだ。
こういうことをやらせたらイストは安心して見てられる。
しばらくすると、あたりが脈を打つように振動し始めた。
これはイストのドゥンバによるものじゃない、明らかに別の力が作用している。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
いかなる技術によるものか、石壁が二つに割れはじめた。
中の様子は薄暗くよくわからない。
「やった…!うまくいったぞ!」
ライドンは持っていた発光草を次々に投げ込む。
投げ込まれた草は湿った土に触れると、壁や天井をつたって奥へと伸びていく。
広がる光の中に異様な輪郭が浮かびあがった。
そこに居たのは大きな虫型のモンスターだった。
巨大な蜘蛛のように見え、低く広がった胴体から何本も足が伸びている。
「みんな…気をつけろ!」
それぞれの武器を構える四人。シュンもドラム出していつでも戦える体制だ。
…しかし。
動かない。
その姿は今にも動き出しそうな気配を放ちながらも、時が止まったかのように微動だにしなかった。
ドォンッ!
ライドンが試しに大きく低音を放つ。
その振動にも反応する様子がない。
「死んでる…のかな?」
恐る恐る覗き込むシュン。
「わからないが、油断するなよ
奥の様子が見える
調べてみよう」
四人は細心の注意を払いながらモンスターの横を静かにすり抜け、奥へと向かっていった。
ーーーそこに見えたのは異様な光景だった。
書物のようなものが幾重にも積み上げられ、色も形もまちまちに散在している。
その間に、ガラスケースめいた構造物が整然と並び、内部には正体不明の器具や標本が収められている。
そこはまるで、誰かが長い年月をかけて築いた研究所の一角のようだった。
シュンが驚いたのはそのガラスの透明度だ。
テンポスの街中や、オームの一部でもガラスは確かに使われていた。
でもそれはすりガラスのような色でとてもシュンのいた世界のものとは似ても似つかないものだった。
しかしーー。
ここで使われているものはガラスにしろ書物に使われる紙にしろ、シュンの世界に近いような優れた技術を感じさせるものだった。
(これは…どういうことだ?
この世界は古代の文明の方がずいぶん進んでいたのだろうか?)
「みんな、こっち」
タルネが何か見つけたようだ。
「えっ、なに…これ?」
そこにあったものはシュンがこの世界で目にしたどんなものとも違う異質なものだった。




