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第23話 ツキヨリ

ライドンの変貌ぶりにシュンは驚いた。


「どうしたんだ?ライドン

なんなんだ?神座って」


「シュン」


ギロリと睨むライドン。


「今度ばかりはお前はものを知らなすぎるぞ」


(えっ、何を…?)


「神座ってのはな、

あの崇高なる女神様のお声を送り届けてくださる能力者さまなんだよ」


「えっ…」


(じゃあ神座って呼び捨てにするなよ)


心の中で突っ込むシュン。


「なあ、そのばあちゃんに会わせてもらえないか?なんでもするから」


「そんなことできるわけないでしょ、いい加減になさい」

「無礼よ、あんたみたいなやつ」


イストは取り付く島もない。


「そんな…頼むよお」


「ライドン、頼まなくたってこっちから会いに行けばいいんじゃないか?」


ギロリと睨むライドン。


「シュン、滅多なことは言うなよ 神座はな、

女神様のお声を聞く日以外はいつ会っても普通の人なんだよ」

「月に一度大切なその日だけ部屋に篭って出てらっしゃらない」 


(ライドンもこんなに勿体つけた話し方するんだな)


「…そのお声を聞けるのはおそばに付ける数名のお供の方だけと聞く」



「タルネのことね」


自慢げなイスト。


「そういうわけ、わかったら去りなさい

あなたたちみたいな野蛮な人間をおばあに会わせられるわけがないでしょ」


しっしっと手を振る仕草をするイスト。

どっちが無礼だか。


「イスト」


「なに?タルネ」


「ボラスばあ、少し前言った」


みんながタルネに注目する。


「日ならず、特異なるものがこの地に降り立つであろう」


「特異なるもの?」


「どういうことだろう、異質なものって…」


みんなの目線がタルネからシュンへと移る。


「ねえ、あんたの使ってる楽器さ……」

「あれ、なに?」


「シュン、ドラムセットって普通に考えてちょっと変だぞ

拍の具現化は自分が直接触ったものでないと難しい

お前、あんなのどこで……」


「あなた……変」


みんなの視線が痛い。


「や…おれは別に、トーキョーで生活してて、テンポスに来ただけで…さ」


ライドンは疑いの目に変わっていく。


「シュン、女神様のお言葉だぞ、心して聞けよ

おれたちに何か隠してないか?」


「いや、ライドン、えーと実は…」

(ええいままよっ!)

「記憶喪失というか、いや、そうではないんだけど、テンポスに来た日より前のこの世界での記憶がないんだよ」


(よし、これは嘘は言ってない)


「えーっ!!!!!!!!」


一同驚く。


「どうりで…おかしいと思ったよ、なんで言ってくれなかったんだ?シュン」


ライドンは少し悲しそうだった。


「ごめんライドン、みんなから怖がられるかと思って」


「ねぇ、この人ボラスばあのところに連れてってみる?明らかに『特異』じゃない?」


目を輝かせるライドン。


「それがいいよ!絶対!

何かわかるに決まってる!」


「わかった、聞いてみる」

「ボラスばあの次のツキヨリの日は明後日」


「じゃあ明日またこの場所で会いましょう、そこでOKか伝えるわ」


ーーーーーーーー


翌日、無事ボラスばあは承諾をくれた。


そしてすぐ、ツキヨリの日は訪れる。


ーーーーーーーー


オーム村の田舎道に、朝日の柔らかな光が差し込む。

土の匂い、遠くで鳴く鳥の声、畑で働く村人たちの姿。

四人はその光景の中を歩いていく。


「おお、タルネさん、ありがとう

ついにぼくの夢が叶った

今日、女神様のお声が聞けるのか」


ライドンはもう女神に接触できるつもりでいる。


「ライドン、ツキヨリは絶対じゃない」

「女神様来ないことの方がずっと多い」


「おれの来た日に限ってそんなことはないさ

この日を待ち侘びでずっと祈ってきたのだから」


「ライドン、女神様ってそんなにありがたがるほどのもんなのか?」


「シュン、次言ったら絶交だぞ

女神を侮辱するやつは許さない」


ライドンの目は本気だ。


「す、すまない

おれも女神様は尊敬しているよ」


取り繕うシュン。


「早く行きましょう、もうおばあは部屋にいるわよ

女神様来てるかも」


(イストだって十分女神様を軽んじて見えるけどなあ……)


四人はタルネの家の一室に入る。

小さな窓から差し込む光が埃混じりに揺れ、床に柔らかく影を落としている。


ボラスばあは80代くらいで、タルネと同じく変わった帽子をかぶり、畳の上にちょこんと座っていた。

しわの深い顔に長い白髪が垂れ、細く小さな手は杖の上に重なっている。


近づくライドン。


「……静かだな」

「あの…女神様〜」


反応はない。もちろん。


「やっぱりあなたみたいな野蛮な人はだめね」


「なんだと、お前だって目の前にいっても何もないじゃないか」


「あたしは別に女神様と話したいこともないし」


次はシュンの番。少し近づいてみる、すると


「うぅん…うおぉ」


ボラスばあは少し唸り声をあげた。


「うわっ、起きた」


「ううん、意識ない」

「珍しいこと、声を出すなんて」


「もしかしてこれが女神様のお声なのかな?」

目を輝かせるライドン。


(どうみてもしわがれたおばあちゃんの唸り声だろ)


機を見てシュンがもう一度近づいてみる。


「うぅ…うあぁ」


また何か言ってる。


「なんだろう?何か言ってるような…」


ライドンが思い切り近づいてみた。


その瞬間。


「されいっ!」


「ひえっ!」


すぐ壁際に飛び退くライドン。


「おれ、何かしたかな?」


「あなたはここでは部外者」


冷静なタルネが淡々と言う。


「シュン、あなただけ行ってみて」


「わかった」


シュンが一人だけで近づくと、ボラスばあの口から小さく何か聞こえる。


耳を近づけて行くと、声なき声のようなものが確かに聞こえた。


「………シュンちゃ〜ん」


(えっ!)


「シュンちゃ〜ん聞こえる〜?」


(ユウナだ!)


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