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第16話 乾杯

「なんでおれはテンポスが合ってると思ったんだ?」


「ふっ、そんな田舎者が他の街に行ったらまずいんじゃないか?」


(……納得)


「他に何か知りたいことはあるか?」


シュンは少し考えて気になってることの優先順位を整理する。


「律動師ってさ、普段は何してるんだ?」


ライドンは一瞬、言葉に詰まった。


(……それも知らないのかよ)


そう思ったが、口には出さない。


「朝はギルドだな。だいたい9時くらいに行って、タスクを受け取る」


「タスク?」


「依頼だよ 討伐だったり、護衛だったり、雑用みたいなのもある」


「へえ……」


「それをだいたい夕方までこなす、

で、書かれてる報酬に回収した魔石を足した金額がその日の手取りだ」


「日給制なんだ」


「まあ、そんな感じかな

もちろん夜の時間の仕事もあるけど、結構少ないし」


「……それで生活できるのかな?」


「愚問だろ

テンポスのお金持ちトップ10のうち半分くらいは律動師じゃないか?」


ライドンは指を折った。


「す、すごい…!」


「テンポスの人口は、だいたい3,000人くらいでさ」

「そのほとんどは農民で、城の外に住んでる。

城内にいるのは400人くらいだな」


「その中で、律動師は?」


「16人」


「……少なっ」



「テンポスの律動連盟に登録してるのが、その人数だ。

でも、城の外には登録してないアマチュアの律動師も結構いる」

「以前はみんなアマチュアってそのまま呼んでたんだけど、呼び方がよくないって話になって…今は“プレイヤー”って言ってる」


「プレイヤー……」


「登録外だから、できるタスクは限られる。

でもな、そういう奴らに限って、モンスター相手の仕事が多い」


「危なくない?」


「危ない」


ライドンは即答した。


「だから、危険なタスクも多い。

帰ってこないやつも、たまにいる」


「……なるほど」


「それでさ」


ライドンは少しだけ胸を張る。


「テンポス公式の律動師で、最年少で登録されたのが――なにを隠そうおれなのだ!」


「え、何歳?」


「12才」


ライドンは得意げに鼻で笑う。


「こんな小さな街だからな、おれのこと知らないやつなんてほとんどいないってわけ」


「なるほど…」



「あんたたち、そろそろいいかい?」


声が落ちてきた。



二人は同時に肩を跳ねさせ、顔を上げた。

いつの間にか、店のおばさんがすぐ隣に立っていた。


腰に手を当てたおばさんは、厚手の前掛けを締め、太い腕をむき出しにしている。

どこか逆らえない迫力があった。


次の瞬間――

ドガン!と、思い切りテーブルにエールが置かれる。

杯の中身が跳ね、木の天板が低く唸った。


「みんな待ってるんだよ

乾杯するよ」


その一言で、店の空気が変わった。


あちこちから視線が集まり、客たちがにやりと笑う。


「おおっ」


短いどよめきが走る。


ライドンが立ち上がり、杯を掲げる。


「はるばる遠くからテンポスに来てくれた仲間に

乾杯」


一拍置いて、声が重なる。


「乾杯!」


杯が鳴り合い、食堂は一気に騒がしくなった。


シュンは杯を手に、その輪の中心に自分が立たされていることに少しだけ戸惑いながらも、ゆっくりとエールを口にした。


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