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結婚式

花嫁衣装に身を包んで、魔王城に備え付けられた祭壇の間に足を踏み入れる。



「ぁあ。私の花嫁はとても美しい。

長い時の中で、君を待っていたんだ」


 白い手であげられたヴェールの下には、無表情で佇むユウフェがいた。


「・・・・」

「さぁ、誓いの口付けを交わせば、婚姻が成立して、君と私は永遠の時を生きられる」


(永遠の、時・・・・)



 勇者との思い出は、永遠の時の中で、色あせることなく、この心に居座り続けるのだろうか。


 そんな考えが過ったとき、ユウフェの頬に、涙がつたいおちた。


 北の魔王は構うことなく、唇に口付けをしようと、涙でぬれる頬の上から手を添えて、顔を近づけた。


 刹那ーー一陣の風が吹き荒れて、花嫁が目の前から消えた。


 

 ユウフェは、廊下を走りながら自分を姫抱きにしている人物に驚いて声を上げる。


「勇者様!どうやってここへ・・」


「・・ロイドに、通信から逆探知してもらった」


 

 もう二度と会えないと思っていた勇者に会えて、表情が緩んだ時、〝また〟周りの気配が止まり、勇者の歩みも止まる。


 〝北の魔王〟の時間停止だ。


「困るんだよ。邪魔されるとさ。

面倒なことするなら、殺すよ?

って、聞こえてないか」


 ユウフェは、勇者の肩にしがみつき、上空で見下ろす〝北の魔王〟に懇願した。


「・・・、待ってください!

私ちゃんと、お嫁になりますから、勇者様はーー」


 言葉を途切れさせたのは、その唇に、勇者の指をあてがわれたからだった。


 時間停止で動けないはずの勇者が、優しく笑みを向けた後、ユウフェを地面におろして、魔王を見上げる。


「あれ?何故動いてるんだ?」


「・・答える義務はない」


 勇者が剣を抜いた時、ユウフェはその剣がさらに進化を遂げていることに気が付く。以前の、数倍に・・そこではっとした。


(これはーー本来壊したはずの聖剣を、取り込んだからだわ。

それに、勇者様は先日魔王化をしかけてレベルが跳ね上がった。相乗効果があったんだわ)



ユウフェの腰に手を添えて、勇者は剣を一振り薙ぎ払う。


すると、一陣の風は魔王城を切り伏せて、倒壊させていく。



「なるほど、これは、楽しむどころか、面倒くさい勇者を誕生させてしまったようだね・・」


「北の魔王は人に被害をもたらしたことはないと聞いたからこの程度で済ませているんだよ。


でもーーユウフェをどうしても連れていくなら、続きもするけど」


「・・・・・」



 初めて、〝北の魔王〟が片眉をピクリと動かした。

 次の瞬間には、二人の前から姿を消していた。







♢♢♢





 それから半年の時が流れーー


 ユウフェ・ヴィクレシア公爵令嬢と勇者であるレイヴン・ボランハルトの結婚式が行われたのは、また別のお話であるーー












fin


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