北の魔王
ユウフェが目を覚ますと、そこは極寒地にある北の魔王城だった。
「・・・」
勇者に口付けしたことを思い出す。
「やぁ、目が覚めた?私の花嫁」
「北の魔王・・様」
「約束通り、また勇者と口付けをしたから。
君の嫁入りを早めさせてもらったよ。君の国にはさっき通達したから。
今日からここが、君のお家だよ」
何処からともなく表れた北の魔王に、ユウフェは暗い表情になり、瞼を伏せた。
「・・」
「もう君のやりたいことはあらかた終わったろ?
明日は私と結婚式だから、使い魔の言う通り身ぎれいにして明日に備えてね」
「終わり・・」
先ほどの余韻が残る唇に、そっと手を置く。
勇者と出会ってからの日々が、能吏の中で再生していた。
楽しくて、嬉しくて、幸せで満ち溢れていた。
キラキラした宝物のような思い出たち。
経験しなければ、こんなに胸が苦しくなることはなかっただろう。
終わらせたくないと思いながら、勇者が無傷で早く帰ってくることを、いつも願っていた。
長いようで、一瞬だった。
〝東の魔王〟〝南の魔王〟は、もういない。
全て、本当に、終わってしまった。
いや、明日自分が〝北の魔王〟に嫁いだら、この物語は、ようやくハッピーエンドを迎える。
ようやく・・
「・・・最後に」
北の魔王が部屋を去ろうとする前に、言葉を発した。
「何?」
「最後にしますから、今夜、一度だけ、勇者様と話をさせてくれませんか?
まだ、お別れを言えていないのでーー」
「・・まぁ、それくらいなら良いよ。
それで明日何の憂いもなく、結婚式を迎えられるなら」




