勇者とのデート1 ユウフェside
ヨークシティは貴族のマダムや資産家である平民に流行りのデートスポットだ。要するにサービスにしても、商品にしても、個展の入場にしても何かにつけて全ての金額が高い。
初期に自分の装備すらも節約しようとしていた勇者様は経済観念が高いと言うのに、こう言う所をお出掛け先にわざわざ選ぶとは意外だった。
初デートをするにしても、勇者様が通い慣れていて気軽に遊べる所を選ぶんじゃ無いかと思っていた。
そんな勇者様の様子を歩きながらもチラチラ見ていると、あるお店に寄りたいと言い出してついて行く。すると其処は高級宝石店だった。
(はっ。もしかして。ヒロインへのプレゼントイベント準備なのかな?)
小説の作中でいつの間にそんなの買っていたのかと言うくらいに高価なネックレスをあげていた。確か先日討伐した龍の鱗で作ったやつだ。
(私に女の子の好みを聞きに来たのね)
こう言うのは確かにセンスが問われる。ヒロインの好感度アップには大事なポイントだ。ヒロインだから多少的外れなセンスでも気にはしないだろうし、笑い話にはなるだろうけれど、普段からずっと身につける事になるものだ。
やはりセンスが良いに越した事はない。
(私は今の流行を貴族の嗜みとして熟知しているし、質の良いものもわかる。うんうん、勇者様もそれを見込んで私にこの様な重役を…)
「ユウフェ?どうしたの?」
小さく胸元で拳を握っている私を覗き込む勇者様のターコイズの瞳と目があって、不意に昨日のキスを思い出し胸が高鳴り頬が赤くなるのを感じる。
私は、誤魔化し半分と頼りがいを見せる為、しっかりと頷いた。
「お任せください勇者様!
私、今の流行りを熟知しておりますから、お任せくだされば必ずやヒロインに喜ばれる品々のアドバイスを致します」
何時ものように、ふんすと鼻を鳴らして右拳で己の胸をトンと叩いた。
「そうか良かった。
やっぱり好みとかあると思ったんだ。サプライズと迷ったけれど連れて来て良かった。どのみちサイズも測らなくてはいけないから連れて来たんだけど」
「??」
「俺はこれがユウフェに似合うんじゃないかと思ってるんだ。シンプルだけど、宝石は埋め込まれている形だから作業する時邪魔にならない。」
そう言って勇者がショーウィンドウの上から指し示した先には、指輪が並んでいた。
(ネックレスじゃなくて、指輪…早いような)
「指輪は、ちょっとまだ早いと思うんです。(ヒロインと)まだ知り合って間もないでしょう?初めはネックレスとかに留めた方が良いかと思いますよ」
(小説でもそうだったし)
「ん、ネックレスも悪く無いね。
でもまずはこっちが先。俺は仕事で家を開ける事多いからその間に変な虫が付かないように。」
「変な虫?は!まさかお屋敷にゴ○がでましたか!?」
勇者はユウフェの言葉に、目を丸くして「あはは!」と笑うと目頭を擦りながら言った。
「この間ナンパされてたろ?
それで対策を考えたんだ。(ユウフェの薬指に指輪をつけておいたら、ぁあ言う輩はわざわざ既婚者に話しかけないと思うんだ)」
勇者はそう言いながらもユウフェの左手を取り、小さく華奢な薬指をまるで壊物を扱うようにすりっと擦るので、触れられた所が妙にゾクりとして身体を揺らした。
(対策?何か魔除けになる特殊な指輪を作ろうとしてるとか?留守番をしている私の身を案じて勇者様が私に…指輪を。嬉しい、嬉しい、凄く嬉しい。嬉しい、、けど)
「…、ですが、あの、ご心配なさらずとも魔除の物は屋敷にちゃんと飾ってありますから。私は大丈夫です。指輪をこんなふうにホイホイと渡たしては…えっと、、いや私は嬉しいんですけど些か誤解の元になってしまうと言うか」
(ヒロインに見られたら誤解を受けてしまうのでは。それにこんな事をされたら胸がキュンキュンして、私の心臓が…。)
「とにかく此処に座ってユウフェ」
頭の中でグルグル考え込み出したユウフェをショーウィンドウの前にある椅子に座らせて、勇者はスタッフを呼んだ。
結局そのまま指輪のサイズを測ってもらい、流されるがままにデザインを決める事となった。




