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第4話 筋肉と恋と、合同演習の予感

カイルはエリザベスの婚約者候補の座を円満に辞退した。

そして、カイルとルルーシュとの婚約が正式に結ばれた。


「ベス、ごめんね」

「なにが?」

「私、カイル様と婚約することになったの」

「ルル、おめでとう!ほんとに、よかったわ!」


エリザベスは心からそう思った。だって、私が仕組んだんだし(笑)

ルルは優しくて、穏やかで、誰よりも私のことを理解してくれる親友。

彼女が幸せになるなら、それが一番だ。


王と王妃は、私が悲しんでいないか、気遣ってくれるが、むしろ晴れ晴れとしていた。

だって、これで――筋肉に集中できる!

「さて、暇になったし……お兄様でも鍛えましょうか」


アレクお兄様は、最初こそ付き合ってくれた。

朝のスクワット、昼の体幹チェック、夜のプロテイン試飲会。

だが、最近はどこかぼんやりしている。


「お兄様、フォームが甘いです」

「……ああ、すまない」

「集中してください。筋肉が戸惑ってます」

「……そうだな」


その返事も、どこか上の空。

ついには、トレーニング中に恋バナが始まった。

「ベス、恋をしたことはあるか?」

「筋肉に、なら」

「……そうか」


え、お兄様、恋をしたの??――その事実に、エリザベスは驚いた。

誰? どんな人? どこで出会ったの?

興味が、止まらない。


エリザベスは、兄の側近の一人、ロイを買収した。

彼は――高カカオチョコに目がないのだ。

「ロイ、これ。カカオ86%、しかも王宮限定ブレンドよ」

「……エリザベス様、それは反則です」

ロイは簡単に落ちた。


お相手は、ある地方新聞社に所属する――セシリア・グレイブ伯爵令嬢。

フェルミルナ王国出身の食レポ記者で、兄より三つ年上の27歳。

破天荒で自由奔放、食べ物のためなら国境も越える行動派だ。

兄は、彼女に何度も求婚しているらしい。


エリザベスはどんな女性なのか会いに行くことにした。

思い込んだら即行動派なのだ(兄と同じ)


「セシリアさん、はじめまして。私、ベスと申します」

セシリアが食レポを終えたレストランからでてくるところを、エリザベスは待ち伏せしていた。


エリザベスは変装していた。

黒縁メガネに、庶民風のワンピース。髪もゆるくまとめて、王族感ゼロを目指した。

……つもりだった。


「えっ、エリザベス王女様!?」

セシリアは目を見開いたが、すぐに表情を整えた。


すぐ、ばれた。仕方がない。

「兄が、あなたにお世話になっていると伺いまして……少し、お話をさせていただければと」

エリザベスがそう言うと、セシリアは一瞬だけ考え、微笑んだ。


「よろしければ、向かいの喫茶店へどうぞ。個室をお願いしてみますね」

セシリアが先に店へ入り、店主に静かな席を頼んだ。

ほどなくして二人は個室に通され、向かい合って腰を下ろす。

紅茶が運ばれ、湯気がふわりと立ちのぼる。

エリザベスは、カップに手を伸ばす前に、単刀直入に切り出した。


「セシリアさんは、兄のことをどう思っていますか?」


セシリアは、紅茶のカップをそっと置いて、落ち着いた声で言った。

「とても素敵な王太子様だと思っているわ。

国のことも国民のことも、真摯に考えておられるし……。

言葉の端々から、まっすぐで温かいお人柄が伝わってくるもの」


エリザベスは、ふむ……と頷きながらも、内心で思った。

うーん、それだけ? これは、お兄様、まだまだじゃない。

よし、ここは――筋肉の魅力、全力で売り込むしかない!


「兄は、筋肉もあります。誠実で、責任感が強くて、冷静な判断力もあります。

それに、一度決めたことは最後まで貫く、一途な人です。……あと、筋肉もあります」


「筋肉、二回言ったわね」

「大事なことなので」

セシリアは、ふっと笑った。

その笑みは、ただの面白さではなく、どこか温かいものを含んでいた。


「王女様は、筋肉がお好きなのね」

「はい。筋肉は信頼です」


セシリアは、じっとエリザベスを見つめた。

その瞳は、ベスの言葉の奥を探るように静かだった。


「……お兄様が、大好きなのね」

エリザベスは一瞬、言葉に詰まりかけたが、すぐに頷いた。

「はい。尊敬しています。兄は、私の理想です」


セシリアは、紅茶のカップを持ち上げてひとくち飲み、微笑んだ。

「筋肉は信頼、ね。面白いわ」

「本気です。筋肉は、裏切らないんです」

「ふうん……」


セシリアは、紅茶のカップを持ち上げ一口飲み、黙り込んだ。

「筋肉は信頼」――その言葉が、妙に耳に残る。


(この子、まっすぐで熱量がすごいわね。王太子様への敬意も本物。だけど……)


ふと、弟ユリウスから届いた手紙を思い出す。

彼はフェルミルナ王国の第2王子セランの側近で、王家から厚い信頼を得ている。

第1王子レオとも親しく(?)、最近はその相談ばかりだ。


――筋肉マッチョなレオがまた最近うざくまとわりついてくる。なんとかしたいんだが、いい案ないか?


(レオ王子とアレク王子、きっと気が合うわ。筋肉と誠実さ、似たような空気を持ってる)

(そして、このエリザベス王女。筋肉愛と真っ直ぐさ……案外、レオ王子と噛み合うかもしれない)

(もし、この子がレオ王子に夢中になってくれたら……アレク王子への返答も、うまくかわせるかも……)


「……ユリウスに連絡、取っておこうかしら」

「え?」

「ううん、こっちの話。そうそう、ここだけの話なんだけど――もしかしたら、フェルミルナ王国と合同で、軍事演習が開催されるかもしれないのよ。もしそうなったら、行ってみたら?フェルミルナ騎士団は強いと評判だから、エリザベス王女の好きな筋肉がたくさん見られるかもよ」


「本当ですか?絶対行きます!!」

エリザベスは、目を輝かせて拳を握った。


セシリアはその様子を見て、またひとつ笑みを浮かべた。

(さて――筋肉と筋肉が出会ったら、どうなるかしらね)

※今回のエピソードの背景にある「合同軍事演習」や、エリザベス王女とレオ王子の出会いについては、別話『王太子は育成されたい』にて詳しく描かれています。

ベスが筋肉を拝みに行った結果、まさかの婚約に至るまでの顛末――詳細は、ぜひそちらをご覧ください。

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