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英霊が来る  作者: 大和あゆむ
第1章 『シル』
1/11

プロローグ

 

 記憶は経験だ。であるならば、記憶を失った者は一度死んだと解釈できる。

 それが何より苦しかった。


 記憶は想いだ。であるならば、記憶を失った者は赤ん坊だと解釈できる。

 それが何より切なかった。


 記憶は強さだ。であるならば、記憶を失った者は弱者だと解釈できる。

 それが何より真実だった。

 それが何よりも、ずっと。



 私の兄は家族を失った。

 過去を知る事が出来ても戻ることは許されない、その事実が余計兄を苦しめた。

 暗然とした彼を視て、漸く全貌を知った。自分の無力さが浮き彫りとなり、悲嘆と憤怒に何度も身を置いた。それでも、だからこそ、兄に変わって戦おうと誓ったのだ。たとえ霊になったとしても。

 ある人が死の間際、「未来に光を灯せ」と息子に伝えたと聞く。ここで言う光は命だ。腕を切られようが腹を貫かれようが自身の命を捨てようが、人々の未来を守れと。自分の光が消えようとも未来を明るく灯し続けろ、とそのような意味を込めて、死に際に未来を生きる息子へ放ったこの遺言。

 先日、私はこの言葉を兄から告げられた。満面の笑みで放たれる極めて特殊な遺言に、私は笑って返すことしかできなかった。兄とその周りにいる人達の戦いを知っていたから。言葉一つじゃ説明できない過去が目の前に散在していたから。

 言葉足らずを重々承知ながらお疲れ様と一言添えて、私は決心を固めた。


 継ごう。あの人達の意志を。


 倣おう。あの人達の勇姿を。


 そして、


 語ろう。鳴り迫る空の上から『英霊(えいれい)が来る』までの、あの人達の物語を。


 歴史、それは誰かの人生であり、我々の人生もまた必ず歴史となる――。


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