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第7話


放課後になった。


本当なら、放課後もララともう少しおしゃべりをしたかった。


だが、今の僕にはやるべきことがある。



――モモアにネタばらしをする。



もちろん、すべてを正直に話すつもりはない。


嘘を巧みに織り交ぜながら、彼女に"現実"を理解させる。


僕が絶対的に優位であり、彼女は僕に従うしかないのだと。



この能力には一つの制約がある。


スキルをストックできるのは、一つだけ。



だからこそ、今後はモモアに"協力"してもらわなければならない。


彼女が僕の指示に忠実に従うよう、今ここで徹底的に分からせる必要がある。



僕は席を立ち、廊下へ出た。


ちょうど、教室の外で様子をうかがっていたモモアと目が合う。


僕は冷静に、だが強く言った。



「スキルのことで、話があるんだけど。」



モモアの眉がピクリと動いた。


彼女は少しだけ逡巡したが、すぐに表情を引き締める。



「……分かった。」



そのまま、僕の後をついてくる。


場所は校舎裏。


ここなら誰もいない。


邪魔が入ることもなく、じっくりとモモアに告白することができる。



夕陽が差し込む静かな場所で、僕は振り返った。


モモアは腕を組み、不機嫌そうに僕を睨んでいる。


僕はゆっくりと口を開いた。



「どう? 無能になった気分は?」



モモアの表情が、一瞬で険しくなる。



「……やっぱりお前が!」



僕はただ、ニヤリと笑ってみせる。



「ふふ、どうした? そんな怖い顔して」


「お前が……私に何かしたんだな!?」



彼女は怒りに震えながら叫ぶ。


いつものように炎を出そうとするが――何度試しても、その手に宿るべき炎は生まれない。


焦燥感が、彼女の顔に滲み出る。


僕はそんな彼女を楽しむように、ゆっくりと首を振った。




「……一体、何をしたの?」



モモアは歯を食いしばり、拳を握る。




「何をしたか?」



僕は指先に力を込めた。


すると、ボッと、鮮やかな炎が僕の手のひらに宿る。



「!!」



モモアの目が、大きく見開かれる。



「うん、なかなか悪くないスキルだね。さすが『炎の王女』の力」



僕は楽しげに炎を弄びながら、モモアを見た。


彼女の表情には、明らかな動揺が浮かんでいる。


このまま、じわじわと理解させてやる。


僕は炎を掴むようにして、それをパッと消した。



「簡単に言えばね、モモア。僕は他人のスキルを奪うことができるんだ。」



モモアは唇を噛んだ。



「そんな……そんなこと、ありえない……!」


「でも、こうしてモモアのスキルを使えた。そして、君は使えなくなった。これが事実だよ。」



モモアの体が、一歩後ずさる。


だが、僕は前に踏み込んで、彼女との距離を詰めた。



「さて、ここで問題です。」



僕は笑みを浮かべながら、指を一本立てる。



「このままモモアが何もしなければ……君は一生、このままだ。炎を操ることもできない、ただの"普通の人間"になる。」


「っ……!」



モモアは歯を食いしばる。


彼女の誇りは、その強大な炎の力だった。


それを奪われた今、彼女はただの"無力な少女"に過ぎない。



「でもね、モモア。」



僕は少しだけ声を落とし、甘く囁くように言った。



「君が"僕に忠誠を誓う"って言うなら……このスキル、返してあげないこともないよ?」



モモアの拳が震える。


怒りと屈辱、そして――恐怖が、彼女の中で渦巻いているのが分かった。



「……っ、ふざけないで……!!」



モモアが僕を睨みつける。


だが――その目は、ほんのわずかに揺れていた。


いい感じだな。もう少し追い込めば……



「ふざける? 僕は本気だけど?」



僕はもう一度、炎を灯してみせる。



「スキル『炎の王女』。男の僕のモノになったんだから『炎の王子』かな。僕そんな熱血キャラじゃないんだけど。無能として生きていくより、活躍できた方がいいしね。ねえ、どうする? モモア。僕に炎属性のトップの座を奪われていいんだね」


「……」


「選択肢は二つだ。」


「このまま無能のままでいるか――それとも、僕の言うことを聞くか。」


「っ……!!」



モモアの顔が、悔しさに歪む。


長い沈黙の後――彼女は、震える声で言った。



「……本当に、スキルを返してくれるの?」


「少なくとも、僕の"気分"がよければね。」



僕は愉快そうに笑う。



「さあ、どうする?」



モモアは……唇を噛みしめたまま、何も言えなかった。



――これでいい。



じっくりと時間をかけて、彼女の心を折る。


そうすれば、彼女は僕の忠実な駒になる。


僕は満足げに笑い、モモアの肩を軽く叩いた。



「考えておいてよ、モモア。」



そう言い残し、僕は校舎裏を後にした。


僕の"支配"は、今始まったばかりだ。





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