第39話
学園の校舎が立ち並ぶ区画から少し離れた場所にある、剣姫専用の訓練場。
一般の生徒は決して立ち入ることのない、特別な場所。
そこで僕たちは彼女と対峙した。
「聞いているぞ。お前たち、無能と仲良くしているんだってな?」
響き渡る、冷たい声。
銀色の髪長い髪を白いリボンでまとめたポニーテール。
鋭い眼光でこちらを見下ろす少女。
―――光の神姫 レティシア・ルーメンシュタイン。
モモア、リア、ユノアの顔がこわばる。
「ちょうどその無能も来ているようだな。……腑抜けたツラだな。一緒に訓練でしごいてやろうか?」
レティシアが、ニヤリと笑う。
「そ、それは……」
「アルトは無能だから、訓練しても一切上達しないので……」
「そうそう、レティシア様のお手を煩わせるわけには……」
三人が必死に僕をかばう。
しかし、レティシアは鼻で笑うと、言い放った。
「では、その分、お前たちの訓練量が三倍になるが……その覚悟はあるんだろうな?」
「……っ!」
三人は神妙に頷いた。
そして……地獄の訓練が始まった。
……レティシアは、強かった。
圧倒的だった。
剣さばきの美しさ、洗練された動き、隙のない間合い管理。
モモアの炎の剣撃は、簡単に弾かれる。
リアの雷の連撃も、まるで予測されていたかのように躱される。
ユノアの重い一撃すら、レティシアは軽々と受け止め、逆に突き飛ばしてしまう。
王国最強の七人……七剣姫の一角であるはずの三人でさえ、まるで子供のように打ちのめされる。
何度倒されても、レティシアは容赦なく立ち上がらせ、剣を握らせる。
「まだ終わりじゃないぞ。立て。」
モモアが、ボロボロになりながらも剣を握り直す。
リアも、歯を食いしばりながら立ち上がる。
ユノアも、必死に震える腕を押さえて剣を振るう。
彼女たちの額には汗が滲み、呼吸は荒い。
それでも 彼女たちは立ち上がる。
レティシアはチラチラと僕を見る。
―――お前のせいで、三人がこんな目に遭っているんだぞ。
そんな目で僕を見てくる。
……僕は我慢できなくなった。
スキル強奪を発動する。
そのつもりでレティシアに意識を向けた。
その時だった……。
次の瞬間。
―――ヒュンッ!!
「今、私に何をしようとしていた?」
木剣の先端が、僕の喉元に突き付けられていた。
……速い。
レティシアは訓練場の中央にいた。
僕は訓練場の端にいたというのに……。
「……いえ。何も」
「嘘を言うな。お前、今、私に殺気を向けただろう。」
レティシアの目が鋭く光る。
「……僕には魔法も使えないし……まさか暗器だって持っていません……」
「……まあ、いいだろう。」
レティシアは、また三人に目を向ける。
「訓練はまだ終わっていない。立て。」
……そして。
地獄の訓練が続いた。
僕も、三人も、悔しい思いをした。
今までは、簡単にスキルを奪ってきた。
しかし、レティシア相手では、それは 簡単ではない。
彼女の間合いの中なら、離れていても一瞬で攻撃される。
だが、間合いの外からスキル強奪を使うことができれば……?それも難しい。
僕がレティシアに触れることはきっとできないし……。
……いや、試してみる価値はある。
触れる機会を作る方がチャンスがあるかもしれない。
レティシアを屈服させるために。
そして、僕の支配を完全なものにするために。
賭けに出るしかない。




