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第3話

入学式が終わると、僕は配属されたクラスへと向かった。


教室の扉を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。



……女の子ばっかり!?



いや、さすがに男がゼロというわけではない。


けれど、圧倒的に女子の比率が高い。


しかも、ただの女子じゃない。



可愛い子が多すぎる。



僕は教室を見渡しながら、内心で息を呑んだ。


どこを見ても、容姿端麗な美少女たちが座っている。



前世でも学生時代、クラス替えがあったら、毎回その中で一番自分好みの女の子を探していたもんだよ。


かと言って、好みの女の子と仲良くなれたことは無いんだけど。



しかし、こんなにもレベルの高いクラスに放り込まれたのは初めてだった。


まるでアニメやゲームの中に迷い込んだような気分だ。




それで……だけど。


幸か不幸か1年生の剣姫3人と同じクラスだった。



―――炎の王女 モモア・フレイム・アルトドルフ


―――雷の皇女 リア・ヴォルデンベルク


―――大地の公女 ユノア・グランツバッハ



……やっぱり群を抜いて美少女だ。


でも、あんなやつらなんてこっちから願い下げだ。


向こうからどうしても僕と付き合いたいと言うのなら考えてやってもいいけど。


もし3人同時に告白とかされたらどうしよう。


3人の中で見た目だけの好みでいうならリアが好きかな。


でも付き合いやすさでいうとユノアがいいかも……。


気が強いモモアがデレたらグッときてしまうかもしれない……。



そんな妄想は置いておいて。



……せっかくの新生活だし! かわいい女の子と仲良くなりたい!


いくら無能とはいえ、それくらいのことはできるよね?


そのためには、まず第一印象が大事だ。


誰かと自然に話す流れを作らないと……!


僕は意を決して、まず隣に座っていた女の子と話してみることにする。


栗色のふわっとした髪のボブカットの少女だった。


ぱっちりした瞳と柔らかな雰囲気を持っていて、ちょっとおっとりしていそうな感じがする。


幸い話しかけやすそうなオーラが出ていた。


僕はできるだけ自然な表情を作りながら、彼女に声をかけた。



「やあ、僕はアルト。これからよろしくね」



笑顔を意識しながら話しかけると、彼女はぱっと顔を上げた。



「え? あ、うん! 私はララ! よろしくね!」



ララ――可愛い名前だ。



彼女は人見知りするタイプではなさそうで、明るい声で返事をしてくれた。


ちょっとだけ胸をなでおろす。



やった、第一関門突破!



僕はそのままララと話を続けた。



「ララは、魔剣士志望?」


「ううん、私は補助系のスキル持ちなの。だから、戦闘はちょっと苦手かも……」


「そうなんだ。補助系ってどんなことができるの?」


「えっとね、味方の体力回復とか、強化とか……あんまりすごいスキルじゃないんだけど……」



彼女は少し恥ずかしそうに笑った。



「そんなことないよ。回復とか強化ができるなんて、すごく重要じゃないか」


「そ、そうかな? ありがとう……」



ララは嬉しそうに微笑んだ。


よしよし、順調な滑り出しだ!


新学期早々、話せる子ができたのは大きい。


もしかしたら、これからもっと仲良くなれるかもしれない。



……なんて淡い期待を抱いていた、その時だった。



「……おや?」



突然、周囲の空気が変わった。


何か……強烈な視線を感じる。



「こんなところに無能がいたーっ!」



こんな陽キャな声が響いた。


炎の王女・モモア。彼女の燃えるような赤髪が揺れる。



モモアだけではない。


リアもユノアも。三人の剣姫が僕とララの前に立っていた。



「まさか同じクラスになるとは。クラスのレベルが下がりそうですね」



雷の皇女・リアが、腕を組みながら嘆息する。



「あなた、その子が無能だって知ってる?」



ユノアが、ララに向かって冷たく尋ねた。



「えっ……」


「無能と関わるのはやめておいた方がいいわよ? そのうち、あなたまで馬鹿にされることになるわ」


「そ、そんな言い方……」



ララが困惑したように僕と彼女たちを見比べる。



「どうするの? 今ならまだ間に合うわよ?」



モモアが挑発するように言った。


ララの顔が、不安そうに揺れる。


……ララまで、僕と関わることで孤立するかもしれない。


僕は苦笑しながら言った。



「ララ、無理しなくていいよ。僕なんかと関わっても、いいことないし」


「……っ」



ララの顔が強張る。



「そういうことです。分かりましたか?」



リアが冷たく言い放つと、ララは何かを言いかけて――結局、言葉を飲み込んだ。



「……ごめん、アルト君」



ララは、俯いたまま席を立った。



そして――僕はまた、一人になった。




……これが、僕の学園生活の現実か。



可愛い子と仲良くなるどころか、早速孤立してしまった。


教室の中で、まるで"空気"のような存在になる。


それが、僕のスタート地点だった。



あぁ……ララ。



あんなに可愛いクラスメイトと、隣の席で毎日休み時間楽しくおしゃべりができると思ったのに。



くそぅ……。



……でも。




このまま終わるつもりはない。



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