第2話
僕の名前はアルト。
前世でも恋人いない歴=年齢のまま生涯を終え、今世でもそれは継続中。
王立クラウディア魔剣士学園、入学初日。
僕だって英雄になってみたい。
もし、それが無理でも、せめて普通の青春を送りたい。
友人を作り、仲間と共に強くなり、そして――運命の恋人に出会う。
この学園で甘酸っぱい思い出を作りたい。
転生したこの世界でなら、きっとそれが叶うはずだと信じていた。
……だが、そんな甘い期待は粉々に砕け散った。
この世界では、個々の資質を示す「スキル」が授けられる。
戦士なら剣技を極めるスキル、魔法使いなら強大な魔力を操るスキル。
優れたスキルを持つ者は、それだけで英雄への道が約束される。
スキルは特定の時期に顕現し、特定の場所で判明する。
ここでは入学時にスキル判定が行われていた。
だが、僕は――スキル判定で「スキル無し(無能)」の烙印を押された。
魔剣士学園において、これは致命的な欠点だった。
僕はここで、絶世の美少女たちと出会った。
七剣姫と呼ばれ、この世界に七つある属性それぞれ最強の魔剣士。
彼女たちが学園の中心。
スキル判定会場では、まるでさらし者になった僕。
七剣姫はわざわざ僕のことを見に来た。
炎の王女(1年生):モモア・フレイム・アルトドルフ
炎の力を操るモモア。馬鹿にするような好奇の視線で僕に向け、くすりと笑った。
「へぇ……本当にいるんだ。スキル無しの無能くん」
彼女は指先に炎を灯し、それを小さな火球に変えた。
「信じられない。初めて見た!激レアだね。ちょっと燃やしてみてもいい?無能って魔力抵抗もないから、よく燃えるのかな?」
そう言いながら、彼女は火球をポンっと放る。
熱風が頬をかすめ、僕は驚いて尻餅をついてしまう。
「あははは!何その反応。マジでダサい。」
……何だよコイツ! 絶対に許さない。
「ねぇ、どんな気持ち?魔剣士学園に入学して『スキル無し』って言われるのはどんな気持ち?絶望してるの? 努力したって何一つ報われないのに希望とか持ってるの?……普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん」
……ぶん殴りたい。
雷の皇女(1年生):リア・ヴォルデンベルク
雷の恩恵を受けし者、リア。彼女は眉をひそめながら冷たい言葉を放った。
「……私だったら恥ずかしくてこんな所にいてられないですね。どんな神経をして学園生活を送るのでしょう。」
学園生活の中でモモアもリアも見返してやるからな!
大地の公女(1年生):ユノア・グランツバッハ
大地の加護を受けるユノア。少し哀れむような侮蔑の目で僕を見つめて言った。
「決して努力が報われないって不憫ね。同情するわ。まあ、素行の問題かもしれないけど。」
何も悪いことはしてないっつーの!
水の聖女(2年生):メルキア・アクアリス・アクイナス
清らかなる水の祝福を受けた聖なる乙女、メルキア。
「女神様に見放されているのね。前世の行いが悪かったのでしょう。」
前世については確かに!その通りだけど!言っていいことと悪いことがあるからな!
光の神姫(2年生):レティシア・ルーメンシュタイン
光の神に愛されし高貴なる少女、レティシアは冷ややかな声で言い放った。
「やはり無能は無能っぽい顔しているな。例えスキルを授かっていたとしても、きっと役に立たない程度のものだったろう。」
顔まで馬鹿にするなよ!許せない。絶対に許さない。
癒しの巫女(3年生):トア・フェルディナント
神聖なる癒しの力を持つ巫女、トア。
「まあいいじゃない。トイレ掃除要員で学園においておけば?」
はあ?トイレ掃除のお仕事をする人も立派だし馬鹿にするようなことを言うなよ!
闇の竜姫(3年生):ロザリア・ドラグライオス
黒竜の血を引く戦姫、ロザリア。
「弱い者は戦場で最初に死ぬ役割がある。それだけでも価値はある」
絶対に死なねー!生きてロザリアもギャフンと言わせてやる!
こんな具合に……
無能とされる僕に、どれほど頑張っても努力は報われないだろうという現実を嫌というほど突きつけられた。
こんな屈辱の中で、学園生活を送らないといけないのか。つら過ぎる。
でも、まさか
この先、彼女たち自身がスキルを失って無能になるなんて思っていなかっただろう。
そして地を這い、この僕に許しを請うことになろうとは……。
この時、誰も予想していなかったのだった。