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ブレイン・バクテリア

作者: 星野☆明美

星新一賞に応募して落選したものです。恥。

ブレイン・バクテリア


星野☆明美



火星に基地ができて、実験棟で様々な地球産の生物が飼育されていた。

「メダカに異変がでた」

複数個体原因不明の死。そして生き残った別の数個体は、頭部が異様に膨れ上がっていた。

「原因はなんだと思う?」

「わからない。解剖してみよう」

火星に派遣されている科学者が、原因究明に乗り出した。

顕微鏡で見ながら微細なメダカの脳を切り分け、プレパラートに部位ごとに標本をつくる。

さらに拡大してみると、未知のバクテリアが検出された。

そのバクテリアは、既存の脳に付着して、増殖しながら膨れ上がっていく性質があった。

「地球では症例がない。火星にいるバクテリアだ」

「発症するのはメダカだけだろうか?」

懸念は現実へと変わった。マウスの脳にもそのバクテリアが発生して、大多数は死滅したが、数個体、頭部が膨れ上がったマウスが生き残った。

実験に次ぐ実験。急いでこのバクテリアの対策を立てないと、他の生物に、そしていずれは人類にも発症する恐れがあった。

「このバクテリアを故意に地球に持ち帰ってはいけない」

地球との連絡船は、立ち往生した。

横田博士が、バクテリアを生物の脳と同じ気質でできているタンパク質の塊に植え付けた。

バクテリアは、奇妙な作用を及ぼした。

「これを見たまえ。新しい脳が生成された」

科学者たちはざわついた。

生成された脳に簡易の身体をロボットで造り、コンピュータで「教育」すると、知性を示した。

「わかるかね?これはもう火星人だよ」

横田博士は興奮してそう叫んだ。

「火星人1号」は、チンパンジーくらいのIQがあった。

「素晴らしい!実に素晴らしい」

横田博士は「火星人1号」の研究に没頭した。

脳が収められている容器に一日一回栄養剤を投入した。脳は健康で、健全だった。

「私は思うのだが、地球が永い年月をかけて生物を進化させてきたその背景にこのバクテリアの存在があったのではないか」

「では、横田博士は、このバクテリアのオリジナルが地球にもあるとお考えなのですね?」

「広い宇宙で、ハビタブル惑星にこのバクテリアがいれば、必ずそこには生命の兆しがあるに違いない」

「ロマンですな」

基地内の空調を調べたところ、そのバクテリアが無数に漂っていることがわかった。

「バクテリアは我々の身体にも影響を及ぼすだろう。最初からバクテリアを受け付ける脳なら生存する確率は高いが、既存の脳に適合しなければ、死ぬしかない」

やがて死人が出た。

地球との連絡は途絶えた。

バクテリアの研究成果は地球に送信してあったので、あとから火星を訪れた地球人は、防備に身を固めて、慎重に火星基地を探索した。

「ようこそ」

頭でっかちな変わり果てた姿の科学者の一人が出迎えた。

それは脅威だった。

なんでも、自分を研究材料にしていたそうで、もともとの脳に新しい機能が構築されて、天才的なオールマイティの存在になっていた。

「彼」は地球に還りたがったが、地球政府はこれを拒んだ。

「「彼」は、火星人だよ」

地球では同情と奇異の目で見る人たちが、火星から送られてきたメッセージに一喜一憂した。

火星人は、地球人の友達だ。永遠に。

「彼」は涙を流していた。


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― 新着の感想 ―
すごく面白い設定の話。 ですが、短くまとめ過ぎた感も少しあります。 特に新しい脳に身体を与えるシーンを、もう少し物語って、フィクショナルな作業に信ぴょう性を与え、博士の興奮などに読者が共感できるような…
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