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ごめんなさいね、もう聖女やってられないんですよ   作者: まんぼうしおから
第二章・遠ざかるスローライフ

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92/140

92・戦と祭のその後

 楽しい時はすぐ過ぎ去るもの。

 仮面武闘祭もその例に漏れず、途中、尋常ならざるアクシデントを挟みつつも、それすら燃料にして盛況のうちに幕を下ろしました。


 優勝者は、ユーロペラ王女。

 準優勝は、鷲頭のゲドックさんでした。


 なんでそうなったのか。

 順を追って解説するとしましょう。



◆◆◆



 まず、第一試合ですが。

 これはもう説明するまでもありませんね。


 無効試合となりました、はい。


 そりゃ人間に化けた魔物が正体現したら……ね?

 観客もよく逃げなかったものです。お祭り騒ぎに感情が昂りすぎて、恐怖心がマヒしてたんでしょうか。

 困惑はしても混乱にはならず、大会初戦は怪物退治へと変貌したのです。


 ……事実は違うのですが、()()()()()()()。それが誰も割を食わない結末ですから。

 我々にとって都合の悪い事実は、闇に葬り去られたのです。

 ロスさんは一匹の凶悪な魔物として片付けられました。残った下半身は埋葬すらされず、適当に焼かれてゴミ捨て場に撒かれたそうです。哀れな末路ですね。


 思いがけない事件も終わり、次は第二試合──なのですが。

 ランベルさんが、不戦勝で駒を進めました。彼女の尻に敷かれている赤覆面の男性です。


 不戦勝の理由。

 それは、私が失格になったからです。


 なぜ失格になったのか。

 それは私が第一試合に乱入したのが原因です。

 本来なら大会は中止して、ユーロペラ王女は安全な場所に移動していただき、観客も避難させるべきでした。

 しかし、実際どうなったかというと、大会は続行。そのため、ルールに基づき私は試合に乱入したことで失格となりました。

 これには観客からも批判がありましたが、決め事は決め事です。

 仕方ありません。

 普通の出場者なら運営に文句をつけるところでしょうが、私としてはこの流れは好都合でした。

 一応、渋々受け入れるポーズだけは取りましたけどね。


 お次は第三試合。

 ユーロペラ王女対シファーレさん。


 これは好勝負でした。


 第三試合にしてようやくまともな対決を見ることができ、観客もヒートアップ。

 まるで決勝戦のように盛り上がりました。まあ、互いに心身万全なぶつかり合いだったし、事実上の決勝戦みたいなものでしたね。


 試合は、前半こそ、威力の王女と手数の兎さんの一進一退でしたが、後半、じわじわとシファーレさんが劣勢になりました。

 技量の差ではなくスタミナの差です。

 やがてシファーレさんの体力に限界がきて防御が崩れたところを一気に削りきり、ユーロペラ王女が強引に勝ちました。


 そして第四試合。


 勝ったのは赤仮面の女性・ネティさんです。

 リューヤが序盤優勢でしたが、途中から逆転されて破れました。


 当然わざとです。今大会のド本命もド本命である彼が、あの程度の相手に遅れをとるはずがありません。

 違和感のないよう、それなりに物語性を演出しつつ、負けてあげたのです。



 その後は微妙な勝負が続きました。


 準決勝第一試合は、ランベルさんが普通に負け。

 第二試合では、ネティさんがこれまた普通に負けました。

 順当という言葉がぴったりな二戦でした。


 二人とも(特にネティさんが)悔しがっていましたが、そもそも、私とリューヤが譲ったからこそ準決勝に出れたわけで、決して本人達の実力ではないのですけどね。

 知らぬが花。

 まあ、そういう事です。


 そうして、決勝戦。


 体力気力に衰えなしのユーロペラ王女と、それを迎え撃つは、疲労しているゲドックさん。

 シファーレさんとの激闘とその次の消化試合をこなしたにも関わらず、何故王女様がそんなに元気なのか。


 生来のタフさもあるでしょうが、最大の理由は、彼女のスキル『悪食』によるものです。

 腐ってようが毒だろうが石や硝子(ガラス)や木材だろうが何でもバクバク食べることができ、しかも、消化すると体力が回復して傷も治る至れり尽くせり。

 シファーレさんとの試合後、リマさんが用意した軽食を摂取したことで、完全に元気になっていました。

 お姫様の持ちスキルとは思えませんよね。飛び抜けて大食らいな魔物の能力みたい。


 一方、ゲドックさんも他の方が試合してる時に休憩してはいましたが、やはり、それくらいでできる回復などたかが知れています。

 ロスさんとの一戦で、結構消耗していたんでしょうね……まあ、私はまだまだ余裕でしたが。

 と言ったらリューヤに「栄養を蓄えている差が出たのかな」と言われ、気がついたら脇腹にパンチしていました。


 この様に、やる前から勝敗が見えかけていた決勝戦ですが、いざ始まると、意外と良い一戦になりました。

 長期戦になると負けると判断したゲドックさんが、最初から短期決戦に出たのです。

 正しい判断ではないかと思います。あの王女様相手にダラダラやり合うのは最悪でしかないですからね。


 当の王女様はというと、それに本気で乗っかってきました。

 乗らなくても、のらりくらりかわして試合を長引かせれば勝ち確なんですが、それをしないのがユーロペラクオリティ。


 攻撃最優先の激しい勝負の末、先に力尽きたのは、やはりゲドックさんでした。

 その槍の使いこなしには、ロスさんとの戦いで見せたあの精彩さは欠けていました。

 やはり体力を使いすぎたのです。

 それに、手の内も晒しすぎました。これに関しては出し惜しみできる状況ではなかったので、仕方ありませんがね。

 つくづく惜しいことです。

 優勝もあり得た実力の持ち主だったのに。


 最後は、打撃と見せかけてからの蹴り──と思わせてからの、巻き込むような投げが決まりました。

 舞台にヒビが入るほどの勢いで叩きつけられ、とうとうゲドックさんは動かなくなったのです。

 もしかして死んだかなと思いましたが、無事でした。

 もし死んでたら、ユーロペラ様は失格となり、なんと死んだゲドックさんが優勝者になっていたといいます。危うく酷い締めくくりになるところでしたね。



 以上が、第四回仮面武闘祭における、結果のあらましです。

 八人中一人が大会前に行方不明となったので慌てて代役を立てたら、今度は大会中に別の二名が追い出されるという不測の事態ばかりでしたが、終わり良ければ全て良し。


 それよりも……あんな奥の手を切り出した私の事が、世間にどれくらい知れ渡ったのか。そこが今後の問題です。

 もう聖女の仕事なんてこりごりですからね。観客の皆さんが、私の魔法のことを忘れますように……!

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