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ごめんなさいね、もう聖女やってられないんですよ   作者: まんぼうしおから
第二章・遠ざかるスローライフ

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79・結果報告

「──そうですか。まさかそんな事態になっていたとは」


 スィラシーシア様の宿泊している高級宿の一室に再び集合した我々一同。

 前回同様、魔神と喋るジャガイモは不参加となりました。

 私とリューヤが到着した時にはまだ誰もおらず、宿のロビーでしばらく待ちぼうけしていると、他の面子が戻ってきた次第です。


 そうして場所を個室に移し、お互いどのような結果となったか教え合うことにしました。

 誰が本戦に残ったか。

 誰を仕留めたか。

 事前の予想とは多少の食い違いがあれど、終わってみれば、なかなか良い結果となりました。


「全く、野次馬や警備兵が押し寄せてて、大変だったぜ。言い訳の理由も用意せずに人前で堂々と殺るんじゃねえよ、クソバカが」


 ま、揉み消したけどよ、とユーロペラ様は笑いながら言いました。王族パワーです。


「多少は死人が出ると思ってましたが……市民に犠牲が出なかったのが何よりです」


 関係ない人が巻き添え食らうのは、気分のよろしい話ではないので。

 所詮気分の問題でしかありませんが。


 獣魔神の信者は…………まあ別に、どうなろうと、ね。


 ですが事情を知らない部外者からしてみれば大事件に他なりません。

 天下の往来で大男が大斧振るって人間を二等分したんですからね。それも何人も。


「揉み消した……とおっしゃいましたが、どうやって、そんな白昼の惨劇をなかったことにしたのです?」


「ああ、それがな。死体も血痕も、なーんも残ってなかったんだよ。だから誤魔化すのもさほど苦労しなかったぞ、ハハハ」


「わたくしが消しましたから」


 意味深なスィラシーシア様の発言ですが、まあだいたいの予想はつきます。

 その場に居合わせた双子やギルハの話だと霧を作り出して辺りを覆ったといいますからね。その霧に何かしらの効果が……あるいは、死体に火をつけてから()()()()()()()()。後に残るのは灰だけ、いや、灰すら残さなかったかもしれませんね。


「ねえ、そっちはどうなったの?」


「こっちはかなり歯応えあったよ?」


 双子が興味津々で尋ねてきました。

 聞けば、熊頭の大男ベルセルクを仕留めたのがこの子達だとか。しかも無傷で。

 恐るべき子供達です。

 しかし──考えてみれば、その強さも妥当ではあります。

 自分達を速くしたり他人を重くしたりできるコンビが、よりによってオリハルコン製の剣を振るうのですから。よほどの強者でもなければ対応をミスってジリ貧で死ぬのがオチです。

 ……よく二対一で勝てましたね、うちのリューヤ。


 そうそう、偽名と本名を使い分けるのは、これからはそれが必要なときだけにしましょう。内心の思考でまで偽名使うのが面倒臭くなってきました。

 素性が隠しきれずバレバレになりつつあるのも、理由の一つだったりします。


 と、そんな心境の変化はさておき。


「……信者の生き残りは?」


「いないよ」


 私の問いに、ギルハが、オレンジを剥きながら一言返してきました。


「操って聞き出しても、何も知らない雑兵ばかり。話になんなくてさ。どう始末つけようか迷ってたんだけど、こちらのお姫様が文字通り消してくれたんだ。凄いよね」


 感嘆のまるで感じられない「凄いよね」の後、オレンジを一房ちぎり、口の中へ。

 ギルハは「んー、みずみずしい」と、満足そうに味わっていました。


「リサに火を付けさせてから、まとめて燃え尽きさせただけですよ。そこまで驚嘆される程ではありません」


「あ、やっぱりそのスキルですか」


 的中しました。


「死体だけなら、霧で散らすこともできるけど……それだと衣服や武器が残るのがね。なら最初から何もかも焼いたほうが手早いわ。霧の中にいるから、いちいち触れる必要もないしね」


 なんとも便利な霧ですね。多彩です。


「それができるならそうでしょうね。二度手間やるより一度で済ませたほうが楽なのはわかります」


「情けをかけても良かったのだけどね……。どうせ烏合の衆だもの。頭を失えば、何もできやしないのだから」


「いけません。あのような低能短絡な暴力しか取り柄の無い連中に慈悲をかけても、後の禍根にしかなりません。跡形もなく駆除なされたのは英断です。流石姫様」


 またナーゼリサさんが始まりました。

 しかしもう慣れたものなので誰も困惑などしません。静かに見守っています。





「……つまり、勝ち残りは我々から三人、一般参加者から三人、危険人物が二人と」


 スィラシーシア様が確認するようにそう言うと、


「あむ、んぐ……そうなるな……むぐもぐ」


 皮を剥いたオレンジにそのままかぶりつきながら、ユーロペラ様が同意しました。半分くらい咀嚼音ですが。


「籠手の男性はまだいいとして、厄介なのは、あの不吉な男性ですよ」


 あの男性が陽の当たる場所で仕事をやるような人物だとは、到底思えません。出場に何かしらの意図があるのは見え見えです。


「場合によってはトーナメントに不具合が起きるかもしれませんね」


「不具合? 聖女さんよ、なんだいそりゃ」


「聖女じゃありません。暗黒騎士です」


「ハイハイもう何でもいいから続けてくれ」


(何でも良くありませんよ。これだから脳筋プリンセスは)


 ちょっとムッとしましたが、相手は王族なのでこらえます。悪態は飲み込みましょう。


「出場選手が試合直前に棄権するとか、いなくなるとか、そういう事です。試合の不成立、円滑に大会が回らなくなる──という意味ですね」


「いなくなる……それってつまり、逃げ出すとか?」


 それまで黙っていたリマさんが不思議そうな顔で聞いてきました。


「それはないでしょうね」


「じゃあ、何があると言うんです?」



「そうですね。例えば──」

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