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ごめんなさいね、もう聖女やってられないんですよ   作者: まんぼうしおから
第二章・遠ざかるスローライフ

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53・魔剣の刀鍛冶

ほぼ最強武器ゲットなるか。

 誰一人まともな知識がないまま始まった、前代未聞の武器製作。

 予定にあるのは、魔剣、短剣、普通の剣、レイピア。

 剣しかないですね。

 つまり我々はソードスミスの集まりです。


「どこがだよ。見習いや愛好家ですらねえぞ……」


 リューヤの指摘もごもっともですが、もはや後には退けません。

 世界一貴重な金属を用いた悪ふざけと言われたらそれはそうなのですが、それなりに真剣にやるつもりです。


「普通は熱して不純物を除いたり、叩いて強度を上げたりするみたいだがよ、幻の金属なんてものにそんなことやる必要あるのか?」


「確かにそうですね。正論です」


「破片まとめて溶かして、ドロドロのを型に流し込めばいいだけじゃないかと俺は思うがね。切れ味を出すためにそっから研ぐ必要はあるだろうけどよ」


 やる気が消失してる割に具体的で真っ当な意見がリューヤから出てきます。

 オリハルコン製のガラクタが完成するのは彼としても本意ではないでしょうからね。

 悲しい未来をなるべく回避するため、やる気ないなりに言うべきことは言っておく。今回はそんなやり方でいくようです。


「それだと楽だね~」


「それだと簡単だね~」


「問題なのは、オリハルコンを溶かすとなると、どこまで熱したらいいかですね。なにせ普通の金属とは格が違いますから」


「そこはこの魔神サロメちゃんにドーンと任せなさい! なんなら勢い余って蒸発させちゃうわよ!」


「本末転倒じゃん」


 無駄にやる気に満ちているサロメが豊かな胸を張って自信満々に宣言して、即座にギルハに突っ込まれました。


 しかし他にできる者がいないので、不安はありますがサロメに委ねるしかないです。

 私達には魔神がいるからいいですが、あの王女様たちはどうするんでしょうね。今度は呪い師ではなく鍛冶師を探すのかな。


「ふっふっふ」


 悪巧みしてるときみたいな笑い方してるサロメが加減を間違えうっかりドーンと大爆発にならないことを祈りましょう。

 祈るのは慣れてますからね。現役の聖女だった頃は毎日やってましたから。


 私にできることはそれしかないです。





「──ちょっとちょっとサロメストップ! 鉄の釜が限界っ! オリハルコンより先に駄目になってきてますわ!」


「あっははは熱しすぎたわねこれ! でもこれくらいやらないとオリハルコンなんか溶けないわよ!」


「笑い事じゃねーだろ!」





「──あのさ、オリハルコンとやらを煮込む釜に、事前に防御魔法かけといたらいいんじゃないの? 炎とか熱に対抗できるのをさ。クリスさんならできるでしょ」


「おー、名案だねギルハ」


「うんうん、機転がきくねギルハ」


「ギルハちゃんは賢いわねぇ」


「そんな撫でなくていいっすよ。これくらいのことで」


「あら、反抗期?」


「加減ミスって頭をうっかり潰されそうで怖いんだろ。……冗談だよ。そんな目で睨むなって」


「ねえクリスちゃん、あの子、軽く処していい?」


「ご自由に。たまにはいい薬です」


「ケツが何か言ってらぁ」


「わかりました、わかりましたから。いくらでも撫でられますからサロメさんもクリスさんも落ち着いて。ほらリューヤさんも謝って……駄目だよそんなガンつけしたら! この状況わかってんの!?」





「──溶けてる溶けてる、無事に溶けてるねミオ」


「釜のほうは溶けてないし、大丈夫そうだねピオ」


「これで問題ないみたいですね。まさか鉄の釜に『四霊の守り』をかけることになるとは思いませんでしたが……」


「鉄が蜂蜜みたいにとろけちまう温度でもびくともしないんだからな。──オリハルコン。流石は伝説の金属か」


「溶けたのはいいけどさ、ここからどうするの」


「鉄のひしゃくで掬って型に流し込みます。ギルハ、そこのを取って下さい。それにも防御魔法をかけないと……」





 大騒ぎして鉄釜を一個ゴミにしたり、仲間同士で確執が芽生えかけたりはしたものの。


 大爆発という最悪の事態が起きることもなく、灼熱のシチューと化したオリハルコンを、事前に用意した鋳型(これにも防御魔法をかけてあります)に注ぐことができました。

 後は冷めるの待ちです。


 全て使いきってしまうかと思いましたが、そこそこの量が残ったので、それらはいくつかの四角い型(これにも(略))に注入。

 これでゴールドバーならぬオリハルコンバーの完成です。

 交渉の道具にするもよし。

 何か特殊な道具が必要になったらその材料にするもよし。

 秘密裏に売却してまとまった額にするもよし。

 もしもの時の保険として所持しておきます。


 我が家に保管しておくのも無用心なのでリューヤ預かり所に渡しておきましょう。

 サロメがいるから盗まれようもないんですけどね。魔神を退けてオリハルコンいただくとか勇者でも厳しいでしょ。天魔国を治めてる魔王のほうがまだ倒しやすいのでは?


「ねえリューヤ、この塊一本でどのくらいの価値になりますかね」


 四角い型を指差し、尋ねます。


「う~む……相場が全くわからんが……幻の金属とまで言われてるくらいだ。安く見積もっても…………ま、金貨一万枚は固いと思うぞ」


「素晴らしい」


 毒にも薬にもならない話で時間を潰し、オリハルコン製の武器や金属板が冷えて固まるまで待ちます。


「ゼリーや煮こごりみたいですね」


「似たような作り方だしな」


 待ちます。



 さらに待ちます。



 もっと待ちます。





 待てど暮らせど一向に冷えません。


 熱々のまま明日になりそうだったのでサロメに魔法で冷やしてもらいました。

 リューヤがなぜか魔法の巻き添えを食らって軽く凍りつきそうになりましたが、たまたまでしょう。不幸な偶然でした。


「『隠匿』がなかったら冷凍肉になってたかもしれないぜ。クソが」


「ふふっ、そうなったら今度は熱してあげるわ」


「そんでまたやり過ぎて炎上か?」


 サロメはただ笑っていました。


 摘み取られたと思われていた確執の芽は、まだ残っていたようです。


 そんなことより、ああ魔剣の完成が待ち遠しい。

 完成した暁には丁度いい大きさの魔石でも買ってきて、髑髏の形にカットして装飾にしちゃいましょうかね、うふふふ。

「面白い」「もっと続きを見たい」

そう思った方はできればブクマや星を入れて下さい。

作者のやる気ゲージが高まります。

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