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ごめんなさいね、もう聖女やってられないんですよ   作者: まんぼうしおから
第二章・遠ざかるスローライフ

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51/140

51・回収しました(できる限り)

「あばばばば」


 やりました。


 やってしまいました。


 一抱えほどもあるオリハルコンがそこらの岩みたいに脆く砕けて大惨事です。


 幻の金属っていうから、めちゃくちゃ頑丈だと思ったのに。

 このくらいの衝撃で粉砕されるとか、大したことないのでは?

 私は悪くないのでは?


「オ、オリ、オリハル、コ、コ、コ、コ……」


 ナーゼリサさんが固い地面に両膝をつき、おもむろに横に倒れ、白目を剥いて泡を吹きました。

 無駄のない流れるような気絶です。


「しっかりなさい、リサ。あなたらしくないですわよ。傷は浅いわ。ほら、起きなさい……! さあ!」


 その見た目に似つかわしくない大声をあげて、スィラシーシア様が肩を掴み揺さぶりますが、ナーゼリサさんは首を四方八方にカックンカックン動かすだけで返事はありません。

 壊れたオモチャみたい。


「あはは、あはははははは! まさか壊しちまうとはな! あっははは!」


「笑い事じゃないですよユーラ様」


「いいっていいって! リマ、お前も笑っとけ! あっはっはははは!」


 ユーロペラ様は、なにが面白いのかわかりませんが、一人爆笑しています。

 貴重な物が破壊されることを愉快だと感じる性格なのでしょうか。もしそうだとしたらなかなかの変態ですね。


「あーあ」


 ルーハの、終わりを告げる声。


 久しぶりに聞きましたね。


「最近あまりやらかさないから油断してたが、まさかよりによってここでやっちまうとはな」


「私だってやりたくてやったわけでは」


「当たり前だバカ。これで確信犯だったら、お姫さん達に縛り上げられて火炙りにされるとこだぜ」


「またですか?」


 こないだ恩知らずの村で空き家ごと燃やされたばかりなのに。年に二回も丸焼きにされそうになるって、そんな人います?

 いや私が悪いのは、それはそうだけど……私を炙っても何が解決するわけでもあるまいし……。

 許すことが大事ですよ。


「キレイだったね~」


「儚かったね~」


「心を奪われてる暇ないぞ、二人とも。砕けたオリハルコンを回収しないと」


「「おっけぃ♪」」


「お前もだぞ、えっと……ティアラ呼びでいいのか。さっさと全部拾うぜティアラ」


「ティアラ師匠とお呼びなさい」


 人相が悪くなったルーハに睨まれましたが、気にせずオリハルコン拾いに精を出しましょう。

 私が撒いた種ですからね。人任せにしてられません。



「あらかた拾いましたね」


 意識が無くなったナーゼリサさんを除いた七人で、飛び散ったオリハルコンをかき集め、何とかほぼ全てが揃いました。


「細かく散ったのは……もうどこに飛んだかわからないぜ。まあ、そのくらいは諦めるさ。元々、降ってわいたようなお宝だしよ。な、シア」


「……そうですね、ユーラ。納得しがたいものはありますが、あなたの意見にも一理はあります。納得できるかどうかはともかく、必要な犠牲と割り切りましょうか。納得は難しいですがね」


 冷ややかな目でスィラシーシア様に睨まれましたが、気にせずユーロペラ様の寛大さに甘えましょう。



「……それで、報酬、なのですが」


 悲劇のオリハルコンショックから立ち直ったナーゼリサさんが、一番大事な事柄について切り出してきました。

 なんかカッコいいですね、オリハルコンショックって言い回し。ちょっと自画自賛すぎますか?


「ええ、私もそれを決めようかと思っていました。確か約束では、少量のオリハルコンか大量の金貨か選択することになってましたね」


「はい。その通りです……その内容で、特に食い違いはありません。では、どちらにします……?」


「オリハルコンで」


 即答しました。


 それはもう決まりきってますからね。

 ルーハ達とも話し合いましたが満場一致でした。金はどこででも稼げるがオリハルコンは稼げないというのが理由です。

 しかもサロメが「その金属なら、私が魔法で加工できるわよ」などと言い出したので勝負ありです。


 多少の破片が見つからないので量を渋られるかと不安でしたが、そんな事もなく。

 六分の一ほども貰えました。


「こんなによろしいのですか?」


「いいさ。もしアンタがいなかったら、それこそ、何時になったらコイツが手に入るかわかったもんじゃなかったからねえ。それくらい手詰まりだったのさ」


「他に聖女のアテもありませんでしたからね」


「まーな。ほんと、いい出会いだったぜ」


「ん?」


 今、この青銅色さん、なんて言った?


「あの、()()とは、如何なる意味でしょうか?」


 まるで、自分達が知り合った聖女しか心当たりがない、とでもいうような台詞ですが……。


「ああ、そこはご心配なく。私とユーラが雇ったのはあくまで、あなたという謎の呪い師ですから」


「そうそう、どこぞの国から追い出された聖女に会えたら良かったんだけどよ。そんな偶然あるわきゃないしな」


「ないですよね、そんな都合良いことなんて普通は。私はただの呪い師であって、エターニアの聖女などとは縁もゆかりもないので」


「わかっていますよ。結界の聖女がこのような場所にいるはずがありませんもの」


「今頃どっかの国に潜んでるに違いないけなどな」


「あの国の聖女はとても有能で美人と評判でしたからね。もしかしたらそう遠くないところにいるのかもしれませんよ」


「クスクス……」


「アハハッ」


「ウフフフッ」



 バレた。

 多めにオリハルコンくれたのは、今後とも何かあるかもしれないので、その時はまた助力お願いという意味を含んでいるに違いありません。


 私の加減の無さが招いた正体バレ。

 因果応報とはこういうことを指すのでしょうね。

 ……またケチつけられて追放されるの嫌だなぁ……

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