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ごめんなさいね、もう聖女やってられないんですよ   作者: まんぼうしおから
第一章・聖女をやめて新天地へ

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35・魔神サロメ、復ッ活ッ♪ 復ッ活ッ♪

「あー、何年振りなのかすらわからないけど、久し振りに足で歩いて手で掴むわー。もはや懐かしいというより新鮮な感覚ねこれ」


「うわぁあ助けてぇー!」


「もうやめてええぇー!」


 頭に二本の角を生やした絶世の美女が、右手にピオ、左手にミオを持って振り回しながら、我が家の裏手で笑顔でスキップしています。双子はこのところずっと災難続きですね。

 心の臓が三つあるから、もしやおっぱいも……とか思いましたが、そこは奥ゆかしく二つだけでした。

 見せびらかすかのようにでかいのがゆっさゆっさしている姿には奥ゆかしさの欠片もないですがね。もげたらいいのに。でも拾ってすぐにくっ付けそう。


 衣服は我が家となった一軒家の衣装棚に奇跡的に残されていた、くすんだワンピースを着ています。本人は裸で構わないと言いましたが動物じゃないんですから。

 そんな素っ気ない服装でさえむしろ引き立て役として際立つのですから、いかに彼女の美しさが常軌を逸してるかわかりますよね。その気になれば一国を傾かせるぐらいやれそう。

 下着はなかったのでワンピースの下には何もございません。私のをあげようかと思ったのですが、サイズの問題からそれは無理だとか抜かしやがりましたよあの魔神。


「嬉しそうだなあの姉さん」


「二人は地獄ですけどね」


 私の特製ポーションがぶ飲みしたら首から下がつま先まで生えてきたことに受かれて猛烈な魔力を放つサロメを村人に見られないよう、私が広範囲に人払いの結界を張っていますが、村外れなのでそこまでやらなくても問題ないとは思いますけど、ま、一応ね。

 これまで予想外の展開多かったから……うん……その中でも最大級のものがウキウキで少年二人と踊り回ってるわけで……。


「なぁクリス」


「なぁに?」


「……あれが大暴れしても、止められるか?」


「厳しいですね。この新たな住まいに張った結界を、ものともしないで平然としてたんだから。しかも首だけの状態で。エターニアみたいに各地に聖なる楔とか刺してある地域なら、抑えることも不可能ではないけど……」


「となると俺のスキルの出番なんだけど……だが、さっき中身を見た感じだと、効いてもすんなり一撃死とはいかなそうでさ……」


「まず、首だけで元気に動き回れる相手に効果あっても、どうしようもない気がしますね」


「だよなぁ」


「大抵の相手なら秒殺なんですけどねえ……あなたの()()スキルは」


「仕方ないさ。誰でも殺せる万能な力なんて存在するはずがない。それに、これくらい不便さや相性の悪さがあるほうがスキル一辺倒にならなくていいからね。スキルスキルとにかくスキルって感じで、どんな敵にでもひたすら脳死で同じことするアホにはなりたくないよ」


「勝てるならそれでいいと思いますよ。馬鹿みたいなゴリ押ししたくないって意地はって死んだら、その方がよっぽど馬鹿じゃないですか」


「そりゃまあそう言われたら返す言葉もないけど、そんなワンパターンな戦い方ばかりしてたら融通効かなくなるぞ。それこそ死活問題だ。違うか?」


「一理ありますね」


「わかるだろ?」


「じゃあ、ほどほどにしたらいいんですよ。楽することを覚えたくない気持ちはわかるけど、スキルを錆び付かせたらいざという時に困るのはあなたでしょ?」


「一理あるな」


 納得したのか、頬をポリポリかいて斜め上のほうを向くリューヤ。彼がやる癖の一つです。


「いやー、楽しいわねー! 身体を動かすのってこんなに楽しかったのね!」


「たのじぐないー!」


「だすげでえー!」


 …………そろそろ止めますか。あの二人も肉体と精神の限界が近いようですから。



「大丈夫ですか?」


「……そんなこと、聞かなくてもさ……」


「この姿、見たら……わかるでしょ……」


「まだそんな口が利けるなら大丈夫ですね。振り回され過ぎて中身がグチャグチャになってるかと心配しましたが、無事で何より」


「ほら、水飲め」


 リューヤがよく冷えたお水をグラスに注いで渡すと、


「んぐんぐ…………」


「…………ぷはぁっ」


 二人はそのまま一気に飲み干し……長く一息ついてから、落ち着きを取り戻しました。


「いい汗かいたわー」


 手で額をぬぐってはいますが全く汗かいてる様子はないですね。さっきまで悪意なき拷問にかけられていた双子のほうが汗だく涙だく涎だくです。


「満足しましたか? したなら家の中に戻ってくださいな。そんな強大な魔力放ちながら外ではしゃがれていたら、勇者の御一行か軍隊が引き寄せられちゃいますよ」


「へぇ、腕が鳴るわね。どっちのほうが歯ごたえあるかしら」


「私のスローライフぶっ潰す気ですか」


「適度に刺激がないと飽きるわよ」


「世界の敵になりかねない刺激とかお断りですよ」


「全く、家主さんは偏屈ねぇ」


「変人の間違いだろ…………あだっ!」


 たまたま転がっていた小石をリューヤに投げると背中に当たりました。

 惜しい。後頭部を狙ったのですが。



「──思いがけないことも起きましたが、そんなわけで皆さん、私のポーション作りは大々成功を収めました」


「「おー」」


 元気を取り戻したピオとミオがパチパチ拍手してくれています。


「私の才能が実を結び、こうして素晴らしき完成品として、今、我々の目の前にあります」


 ほのかに青く光る液体に満ちた、何十本もの瓶。

 中身はリューヤの意見を取り入れ、至高のポーション(私が名付けました)を薄めたものです。

 薄めるのもただの水じゃないほうがいいと判断して、通常のやり方で作ったダメダメポーションと混ぜてみると、いつものように試飲したサロメいわく「これこれ、このくらいでいいのよ」とのこと。

 効能としては上の上レベルくらいに落ち着いたらしいです。


「で、こちらは私達が使う用と」


 商品用ポーションとは別のテーブルに置いてある、数本の瓶。

 その中では、至高のポーションが青く輝いて存在を主張しています。う~ん、何度見ても素晴らしい出来映えですね。

 たった十本ほどで魔神を完全体へと戻したのですから、どれだけ優れた代物なのか、作った私すらまるで把握できないほどです。


「それだけど、売り込むアテはあるの? 販売業の経験は?」


 当然の疑問をサロメが口にしました。


「ないですね」


 まだこの国に一月も滞在してない余所者ですから、私達。

 どこの馬の骨ともわからぬ者が作ったポーションなんて素直に買い取る者がいるはずないので、路上に布でも敷いて売るしかないです。売り物への信用ないとどうしようもないのが商売の世界なので。


「でも、商売人にならツテはあります。切れ者な、やり手の商売人にね」


 ──そう、あの人です。



 私の脳裏には、義理の息子とよろしくやってる肉感的ボディの未亡人の姿が浮かび上がっていました。

十万字越えてやっとスローライフの目処がついてきた暗黒騎士クレアの今後やいかに。

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