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ごめんなさいね、もう聖女やってられないんですよ   作者: まんぼうしおから
第一章・聖女をやめて新天地へ

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33/140

33・失敗は成功の母って嘘ですよね

よく考えたら素性明かしてるのに偽名使い続けるのもおかしいので手直ししました。

 ポーションとは癒しの霊薬です。

 飲んだり傷口にかけたりするのが主な使い方であり……いや、その二種類しかないですね。

 効能は、体力の回復や傷の治癒、解毒などが主流で、中には魔力の回復や、身体能力の一時的向上というものもあります。

 値段ですが、薬草や湿布などとは比べ物になりません。効果も段違いなので当たり前といえば当たり前ですが。れっきとした魔法のお薬ですもの。

 なのでポーションを購入するのは金に余裕がある立場の方々か、常日ごろからハイリスクハイリターンな人生を送っている冒険者の中でもハイリターンを引き寄せた連中と相場が決まっています。


 そんな高級感あるありがたい治療道具でありながら、私の作ったポーションはギルドにまで流れ着き、そこでもいい顔されず最終的には格安で売り払われました。

 ……まともな人物に師事したらまともなものが作れるかもとか思ったりしましたが……いや、自分でもわかってます。才能ないんでしょうね、やはり。

 あったらこんな底辺チックな悩み方しないもんね! あっという間にコツ掴んで何回目かのチャレンジで上級品質を作るよね! そっから怒涛の勢いで名声高まるよね! どうしてそうならなかったんだろうね! ぜんぜん才能なかったからだね! オシマイ!


 ……そんな空回り気味に落ち込んでも現状は良くならないので頑張らないといけません。聖女という潰しの効かない職業についていた私にできることなどろくにないのですから、生計を立てるやり方も限られます。

 僧侶としてまた冒険者やるか、また質の悪いポーション作るか、聖女としてまたどこかの神殿に囲われるか。

 畑はありますが広さ的に家庭菜園の域を出ず、そこで作物育てて売り払おうが大した金額にはならないでしょうね。

 お金持ちの息子さんの解呪代金はまだまだ残っていますから、これを元手に何らかの商売を始めるのは難しくないことです。でも未経験の人間が思いつきで雑に始めたって死に金に終わる未来しかありませんがね。私でもそのくらいは先を読めます。



「なので消去法でポーションしかないんですよ、この先生きのこるには」


「もうさ、すっぱり諦めて、でかい神殿に身売りしたらどうだ? エターニアの元聖女なら大歓迎されるだろ」


「そんなことしたら暗殺者に狙ってくれと言わんばかりじゃないですか」


「そこは主要人物だけに正体明かして、普段は偽名なりなんなり使えばいいだろ。今と変わらんぞ」


「ヤ」


 聖女なんか二度とやりたくないです。


「ンな膨れっ面しなくてもいーだろ。ただでさえ……」


「ただでさえ? 何です、どうしました?」


「まずっ」


「何がまずいのですか? 言ってごらんなさい」



「やみぇれ、おれぎゃわるひゃっひゃ」


「余計なことしかいわないのは、この口ですか」


 親指を口の中に突っ込み、ひたすらに生意気な言動を繰り返す小僧の頬を左右に引っ張ったりグネグネしたり。


「このまま引き裂こうかしら」


「かんびぇんひへくりぇ」


 まだ目に余裕がありますね。ピッと端が裂けるくらいやれば本気で詫びそうですがどうしましょうね。やるか?


「ねえ聖女のお姉さん、一応は素直に謝ってるし、その辺でやめたげなよぉ」


「そうだよ聖女のお姉さん、可哀想……な気はあまりしないけど、まあ、やめたげなよぉ」


 あまり気乗りしない様子で、ピオとミオが私をなだめようとしています。

 いい薬だと思ってるのかどうかまではわかりませんが、そこまで親身にリューヤをかばわないんですね。これは意外。

 彼に惹かれてはいても、それなりにお仕置きは受けさせたほうがいいってスタンスなのでしょうか。変なところで厳しさがありますね。もっと激甘かとばかり。


 あと私が元聖女なことですが、二人と首に教えてあげました。

 前回のやり取りでわかるように、どのみち口を滑らせてバレてしまうのは時間の問題だと思ったからです。なら最初から伝えて情報共有しておくべきかなと。だから偽名も使うのやめました。

 不安だったのは魔神さんが敵視してこないかという点でしたが、別にどうでもよさげな態度で肩透かしされました。「自分は別に聖と魔の対立とか知ったこっちゃないわ」とのことです。


「弄ぶのはよしなさい。八つ当たりしても虚しいだけでしょ。もっと前を向かないと」


 良いこと言いますね。魔神なのに。


「だからさっさと引き裂いて水に流しなさいな。償いは血をもってすべきよ」


 一番やばかった。やはり魔神でした。



「……ふう、一時はどうなることかと」


「これに懲りたら軽口に少しは重しをつけときなさい」


「なんだ、裂かないのね」


 一人残念そうなのはサロメです。

 どうやってるのかわかりませんが、ふわふわと宙を漂っています。

 「髪の毛で空気を掴んでる」とは本人の談ですが、いまいち説明になってないような。でも魔神ならそのくらいワケわかんないことの一つや二つやるでしょうから深く考えるのはよしますか。


「俺が大口になるのなんでそんなに見たいんだよ」


「特に理由はないかな。血飛沫あげてもがいたりしたら面白そうだからとしか」


「ひでえ」


 これはなかなかの残酷さですね。

 野放しにしたのは失敗かもしれません。あの宝箱に入れて鎖でがんじがらめにしてから海の底にでも沈めるべきでしょうか。今ならまだ間に合います。


「鬼かよアンタ」


「魔神よ」


 見事に切り返されてリューヤが沈黙しました。そのまましばらく黙ってなさい。





「……どうでしょう」


 もしかしたら冒険者として復帰した影響でポーション作りの腕が勝手に向上してるかもなんて、そんな無茶苦茶ではかない期待にすがりながら製作に着手したものの、現実は全くもって甘くなかったです。

 自分で作っててなんか駄目だとわかる、この虚しさ。

 わざわざ町まで行って買ってきた材料を無駄とまではいかなくても徒労に終わる程度に使い潰してしまいました。

 その結果がこれらの見覚えありすぎる青い液体です。


「ゴクゴク……なにこれ、こんなのポーションって呼べないわ。ただの健康にいい水じゃない。ポーションは霊薬なのよ霊薬。そこらに生えてる薬草を煎じてはいできあがりじゃないのよ? 魔力込めてる?」


 試し飲みしたサロメから飛んでくる容赦ない言葉の矢に私は射られるがままでした。心が失血死しそう。


「飲んだのどこに行ってんだ……?」


 リューヤが怪訝な顔でサロメをまじまじと見ています。

 それは私もちょっぴり気にはなりますが至極妥当な叱責されててそれどころではありません。魔神に説教される聖女とか喜劇でも滅多にないシーンじゃないでしょうか。


「感想としてはね、混ざり物が多いわ。だから効能がガタ落ちしてるのよ。もっと不純物を取り除くか、溶かし込んで融和させてバランス良くしないと、何度やってもできるのは三級品よ」


「そういわれても……クリスよくわかんないし……」


「カワイ子ぶっても無駄よ」


 チッ。


「ん~~~~~~、だったら………………そうね。あなた、結界とか得意なんでしょう?」


「大得意です、ふふん」


「調子に乗るのはそこらの壁にでもやりなさい。それでね、ひとつ考えたことがあるのだけど……」


「なになに?」


「魔神さん何か閃いたの?」


「そうよ、愛らしい坊っちゃんたち。我ながら悪くないアイディアだと思うわ。流石は私ね。これからは知恵の魔神とでも名乗ろうかしら」


「調子に乗るのはそこらの木にでもやってくれ。んで、どんな名案なんだ?」


「勿体ぶらずに教えてくださらない?」



「浄化の結界を、薬液を混ぜるための薬瓶などにかけて、よろしくないものを排除する……というのは、どう?」

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