表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/194

2-4 『人』の意見

 美奈の一言に、皆が驚いた。


 「そ…、それってどういう意味すか?」


 大弥が訊いた。

 美奈は何も写っていない写真サイズの印画紙を一枚手に取った。美奈がそれに念を送ると、久吾から情報転送された肝島の顔が浮かび上がった。これも美奈の能力、念写である。


 「…この男、肝島ツカサ。妻と5才の息子がいるのだけど、アルバイト先では今までに3人の女性スタッフに手を出してる。今回の美那子さんで4人目の予定らしいわ」


 全員が呻いた。

 美奈はもう一枚印画紙を手に取り、もう一人のレジを打つ、長い前髪で目を覆った陰気な男の顔を念写した。


 「この男は久保田守。肝島の共犯者ね。女性スタッフを在庫置き場に監禁したり、見張りをしたり、女性を押さえつけるのを手伝ったり…、ひどいものね」


 確かに、このような連中を野放しにする訳にはいかない。


 「何で誰も訴えないんでしょう? これ犯罪ですよね?」


 羽亜人が言うと、美奈は、


 「被害者はお金で解決させられているわ。この店のビル自体、肝島が父親から譲り受けた彼の所有物の一つで、賃貸収入や他不動産の売却で手に入れた資産もあるの。…この男にとって、店は狩場なのよ」


 「最悪ですね…。殺しますか?」


 蔵人が言った。が、大弥が慌てて言った。


 「い、いや、待ってくださいよ! …確かにクソ野郎共だけど、殺すのは…、その…、だってソイツには子供がいるんでしょう?」


 美奈が大弥を見ながら言う。


 「…そうね。でも今殺してしまえば、美那子さんに手は及ばないし、肝島の家族には父親が消えるだけで済むんじゃないかしら?」


 確かにそうかもしれない。しかし、大弥はそんなに簡単に割り切れなかった。大弥は仲間の中で、一番人間らしい考え方をする。甘いと言われるかもしれないが、それが大弥らしさなのだ。


 「…っ、それでも、ろくでもない父親でも、死んじまったら恨み言も言えないじゃないか…」


 大弥がそう声を絞り出した様子を見て、久吾が少し微笑んだ。そして、助け舟を出すように言った。


 「…被害者が他にもいる以上、彼女らが今後訴えないとも限りません。その際、加害者本人が死亡していれば、残された家族が標的となって苛まれる可能性もあります。私もこれは、人の法に任せたほうが良いと思いますよ」


 「久吾サン…」


 大弥がほっとしたように久吾を見た。久吾は大弥の小さくきらめく若草色の魂色を見ていた。微笑みながら、


 「いや、口直しに綺麗なものを見せてくれたお礼ですよ」


 「?」


 そんな大弥を見ながら、美奈も言う。


 「…ごめんね大弥。性急だったわ」


 大弥も安堵したようだ。ひとまず落ち着いたところで、久吾は問いかけた。


 「それで、どう対処するつもりですか?」


 大弥は気を引き締めた顔になって言った。


 「そうですね…、じゃあ…」


 作戦会議が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ