表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/194

13-7 研究所へ

 「やーん、こんなところで羽亜人さんに会えるなんてぇ」


 芽衣が頬を染めながら、羽亜人の前で体をくねくねさせる。


 「初めましてぇ、羽亜人さんのお友達ですかぁ?」


 「お兄さん達もカッコイイですね〜、背ぇ高ぁい」


 蔵人と蒼人も、女子群に囲まれてしまった。三人とも、困った表情で力なく笑っている。蔵人は、


 (困ったな…。大弥のところに行きたいんだが…)


 見ると、当の大弥も貴彦に連れられ、関係者達への挨拶回りに勤しんでいる。


 少し離れたところに、彩葉と美那子がいた。《(ギメル)》が消えたことで、彩葉は段々と落ち着きを取り戻したようだ。

 美那子はずっと、彩葉についていた。


 「…大丈夫? だいぶ顔色、良くなったかな」


 「うん、ありがと、美那子ちゃん」


 そんな二人に、声をかけてきた二人の子供がいた。


 「む…、どっかで見た顔…。…あ! みねさん!?」


 「違うわよ。きっとこの()は、この間裕人君が言ってた『彩葉先輩』よ」


 彩葉は驚いた。…しかし、昔ひいおばあちゃんから聞いたことがある。彩葉は思い出す。


 ………天使。きっと、この子達のことだ。


 「…もしかして、あなた達が助けてくれたの?」


 彩葉の問いに、みー君とふーちゃんは顔を見合わせる。そして、にっこりと彩葉に笑いかけ、何やらメモを彩葉に渡し、蔵人達を指差して、そのまま背を向けどこかへ行こうとした。

 その背に向かって、彩葉は、


 「あ、あの! …ありがとう。久吾おじ様に、よろしくね」


 みー君とふーちゃんが振り返り、笑って手を振って、行ってしまった。それを見ながら、美那子が、


 「…あの子、どっかで…、ううん、気のせいね。あの子は男の子だったもの。…ていうか、彩葉ちゃん、知ってる子達なの?」


 美那子にそう言われ、彩葉は、


 「…ん、たぶん…。私の知ってる人のところにいる子達」


 聞いて、美那子は「ふぅん」と答えただけだった。

 すると、群がる女子達を掻き分け、大弥が蔵人達のところにやって来た。


 「あーもう、あのまま終わりまで挨拶回りかと思ったぜ! やっと解放されたよ…」


 蔵人達も、助かった、という表情を見せながら、大弥に「お疲れ様」と言うと、女子達が「え!?」と言いながら、


 「え!? えぇ!? この方、あの、その、今回の…」


 芽衣がオロオロとうろたえ、穂香も、


 「そ、その節は、大変失礼な態度を…」


 大弥も、あの時の女子高生達だ、と思い出した。ああ、と言いながら、笑って、


 「気にすんな。それより、美味いもんたくさん用意してあるらしいから、しっかり食ってけよ」


 そんな大弥の言葉を聞き、芽衣達はぽかんとしながら、


 「…何だか、全然御曹司っぽくないねー」


 ひそひそと話していた。

 そんな女子高生達を無視し、蔵人は、


 「大弥、もういいのか?」


 「ああ。あとは貴彦さんが対応してくれるってさ。それより、主は…」


 「急いで向かおう。主は研究所(ラボ)で待ってるって。あとはみー君とふーちゃんを…」


 羽亜人がそう言って、キョロキョロと見回すが、見当たらない。探しに行こうとした時、


 「あ、あの!」


 美那子と彩葉が、こちらにやってきた。


 「これ…、さっき女の子達に頼まれて…」


 彩葉が蔵人に渡したメモには、


 『ななさんと、先にラボ行くね!

            みー・ふー』


 …読んで蔵人は、


 「置いていかれたな…。じゃあ、大弥。行くぞ」


 四人で船を降りようと出口に向かうが、美那子は大弥に向かって、


 「あ、あの時は、ありがとうございました!」


 ペコリと頭を下げ、あの時と同じように再び礼を言った。

 大弥はにっこり笑って「気にすんな!」と言い、手を振ってパーティー会場から去っていった。


 ―――その様子を見ていた芽衣達が、美那子に、


 「ちょっとぉ! アンタ、あの御曹司と何かあったの!?」


 「ヤダー! 孝宏君から乗り換えちゃう!?」


 美那子は慌てて、


 「ちが…! 違うよぉ! そんなんじゃないって!」


 きゃいきゃいと騒ぐ友人達を見ながら、彩葉は、


 (…おじ様も、来てたのかな?)


 そんなことを考えていた。


   ◇   ◇   ◇


 大弥達四人は、タクシーで一旦自宅に戻り、スーツ姿のまま転移門(ゲート)を通って、ハチの研究所(ラボ)までやって来た。


 「主!」


 いつもの研究室に入るが、そこにはハチと久吾、それからみー君とふーちゃんがいるだけで、美奈の姿はない。


 「…来たか。こっちだ」


 おもむろにハチが立ち上がり、地下への階段を降りていく。


 「…え? 下って確か、動力炉じゃ…」


 蔵人が言うが、ハチはそれに答えず、久吾もハチの後に続く。

 四人は不思議に思いながらも、恐る恐る階段を降りていく。


 ―――到着した場所は、動力炉。

 その中心には、大きな鉱物が宙に浮いた状態で光っている。

 四人がこの動力炉に入ったことは、今までなかった。普段なら、その鉱物を目にして驚くところだろう。

 …が、今の四人の目は、その鉱物の前にある、白い花に敷き詰められた棺に釘付けになっている。


 中には、美奈が眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ