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13-4 天使の守護者

 「…み、美那子ちゃん、…みんな、………ね、もう、帰ろう?」


 突然、ガタガタと震える彩葉に、美那子が、


 「? どうしたの? 急に…」


 キョトンとして、彩葉を見る。

 他の皆は気付かず、食事が並べられたテーブルを見た凛が、「あ! 美味しそうなローストビーフ!」と言って、他の皆と一緒に行ってしまった。


 (どうしよう………、怖い、…あの(ひと)


 恐怖を感じた彩葉は、もう《(ギメル)》を見ることが出来なかった。しかし《(ギメル)》からの視線を感じ、思わず美那子の陰に隠れる。


 「…彩葉ちゃん、大丈夫? 具合悪いの?」


 心配そうに声をかけてくれる美那子に、彩葉が何か言おうとした時、


 『皆様、それではここで、宝来グループ会長・宝来貴彦様と、貴彦様のお孫様であります、宝来大弥様のご登場で御座います!』


 司会のスピーチと共に照明が落とされ、舞台にスポットが当たると、斗真を含む数人の黒いスーツの男達に囲まれながら、貴彦と大弥が登場した。


 歓声が上がる中、美那子が、


 「やっぱり…、あの時の人だ」


 と呟いたが、彩葉はもう、それどころではなかった。


   ◇   ◇   ◇


 「…ふぅん、あの坊やがNo.37の…。男なんて、どこが良いのかしら。女の子の方が可愛いのに…」


 大弥を見ながら《(ギメル)》が憮然として呟く。《(ヘー)》は、


 「そうね…、壇上の子と、あちらの三人も…、………!?」


 《(ヘー)》が突然、何かを見て驚いていた。つられてそちらを見た《(ギメル)》も驚く。

 蔵人、蒼人、羽亜人のそばに、ぬいぐるみを抱いた二人の子供を見たからだ。


 「………ガブリエル! …フフ、来ていたのね」


 とても嬉しそうに、《(ギメル)》が笑った。《(ヘー)》が、


 「どうする? No.37の姿は見えないけど…」


 「あの女なら、きっと千里眼でこちらの様子を見ているはずよ。…きっと《(ヘット)》や《最後の番号(ラストナンバー)》も一緒にいるんじゃない?」


 それを聞いて、《(ヘー)》は、


 「…そう。それじゃ、始めるの?」


 《(ギメル)》はにっこりと笑って、


 「…ええ」


 そう言った瞬間、その場(・・・)にいた(・・・)全ての(・・・)人間の(・・・)意識(・・)は、《(ギメル)》に乗っ取られた。


 大弥も、貴彦も、蔵人達も、黒スーツ達、宝来グループ関係者、彩葉を始め少女達全員、それから船外にいたマスコミの者達も、人間の意識は全て、《(ギメル)》の意識下に入る。


 《(ギメル)》は笑いながら、


 「アハハ…、さあ、No.37。見てるんでしょう? お前が出て来ないのなら、このままお前の飼い(いぬ)達を、自決させてあげましょうか? それとも、周りの人間達に嬲り殺される方が良い?」


 《(ギメル)》が千里眼で見ているはずの美奈に向かって、そう言い放つ。

 彼女は、強力な思念伝達者(テレパス)である。自分のおよそ半径100km以内にいる、感知出来る範囲の人間ならば、全て意のままに操る事が出来る。


 …ただ、半径約100kmが《(ギメル)》の限界なのだ。

 ここに美奈の『千里眼』が加われば、その能力(ちから)は千里眼で見える範囲まで跳ね上がる。実際に更新(アップデート)してみなければ分からないが、場合によっては地上全ての人間を支配下に置く事も可能かも知れない。

 《(ギメル)》にとって千里眼は、絶対に手に入れたい能力なのだ。


 ―――が。


 「………美奈さんは来ないわよ」


 ふいに、《(ギメル)》の後ろから声がした。

 振り返ると、ふーちゃんとみー君、そして、二人の前を、めぇともっちーがガードするように立ち(もっちーは腹を地に着けているが)ふさがっている。


 「…美奈様にソックリですメ。でも、美奈様みたいに優しくなさそうですメ」


 めぇがキリッとした表情で構える。もっちーも、


 「全くだぜ。マッシロだし…。となりの丸刈(マルガ)リータ姉ちゃんも、タダモンじゃねーっぽいな!」


 喋るぬいぐるみ達を前に、《(ギメル)》と《(ヘー)》が一瞬、呆気に取られた。


 「………お人形さん達が、何のつもりかしら? …ガブリエル、ミカエルも、こちらへいらっしゃいな。《最後の番号(ラストナンバー)》よりも可愛がってあげるわ」


 《(ギメル)》にそう言われたが、ふーちゃんは、


 「遠慮するわ。私が好きなのは、ななさんだもの」


 みー君は、舌をべーっと出して、


 「ボク達、キミ達のとこなんか、行かないよ!」


 そして、めぇともっちーの後ろに回る。めぇが、


 「旦那様が、貴女方はワタクシ達に手を出せないと仰られましたメ」


 すると《(ヘー)》が訝しんで、


 「…どういうこと?」


 もっちーが得意げに、


 「ご主人は、オメーらにこう言えって言ってたんだぞ! だって、オレっち達…」


 めぇともっちーは、二体揃って、


 「「付喪()!!」」「ですメ!」「だぞ!」


 《(ギメル)》と《(ヘー)》は、驚いた。


 「…神、ですって!? この、ふざけた連中が!?」


 …いつの間にか、唄が聞こえる。ふーちゃんが歌っていた。

 その歌声は、《(ギメル)》の意識下に置かれた人間達を眠りに落とす。ふーちゃんの周りの人間から、バタバタと床に伏していく。


 「…っ、あなた達に直接手は出せなくとも、こういうやり方もあるわよね」


 《(ギメル)》は眠りに落ちていない人間達を、めぇともっちーに向かわせる。もっちーは、


 「来たな! めぇ! 久々の解放だな!」


 「ですメ! 行きますメよ!」


 ―――すると、今まで開いたことのなかった、二体のぬいぐるみの両瞼が、カッ、と開いた。

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