表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/194

11-8 報告

 ミスターに連れられ、ハチ達は無事研究所(ラボ)に到着した。


 ―――現在No.93は台座に横になり、No.666からのデータを移行中だ。ミスターとハチで様子を見守っている。


 「何と…。No.666は、昆虫まで操っていたのかね」


 「そうですね。データを見る限り昆虫に関しては、(あらかじ)め相手に命令(プログラム)を植え付けて行動させていたみたいです。動物に関しても、大まかに命令して、状況に応じて個別に指示を出すという、効率の良いやり方をしていたようですね」


 ミスターは、ふむ、と頷き、


 「…成程。No.666も優秀な者だったようだが、残念だな。更新(アップデート)を条件に、《(ザイン)》に協力を求めた、という事か?」


 ハチが「そうらしいです」と言うのだが、ミスターは考え込んでいる。

 ハチは気になり、聞いてみる。


 「…何か、思うところが?」


 「いや…。そもそも、更新(アップデート)は通常《一桁(ウーニウス)》しか行わないものを、No.666が自分から求めたと言うのがな…。誰かがそれをNo.666に(そそのか)しでもしない限り、起こり得ないと思ってね」


 言われてハチも、「…確かに」と答える。


 「…我々以外の者が動いている、という事ですか?」


 ハチがそう言うと、ミスターは驚く。


 「我々以外に、誰がいると言うんだね?」


 ハチは、む、と唸り、


 「…《(テット)》に探りを入れてもらいますか? 彼女(あいつ)なら、上手く動いてくれると思いますよ」


 「頼めるかね。…助かる。が、万一の場合、私が直接行かねばな」


 ミスターはそう言って、ため息をついた。


 「…で、ミスター。No.93の更新(アップデート)の内容ですが、制限と調整は…」


 「そうだな…。動物達との連携は、多少数と範囲を減少させた方が良いかも知れんが、No.93もNo.666も、本人の能力と言うより、上手く指示を与え、植物・動物の持つ能力を引き出しているようだな」


 ふむ、とハチが調整を加えた。続けてミスターは、


 「…特にNo.93に至っては、強固な緑の結界は植物達の能力を増強(ブースト)して、自らの能力(ちから)と合成していたようだ。『共存』を重んじたNo.93との、信頼関係の賜物だな」


 「それもすごいですね。効率も良い」


 更新(アップデート)は順調に進められていく。

 …ハチがおもむろに、ミスターに尋ねた。


 「…《(エフェス)》の目覚め、まだですかね?」


 ミスターがため息をついた。


 「…可能性は低い気もするが、大天使の目覚めと関係があるのかも知れん。久吾に預けたミカエルが、覚醒を拒否している気配がある」


 ハチが「え!?」と驚いた。


 「ミカエルは、大天使達のリーダーでしょ? …ああ、でも、久吾達の様子を見ると、そうかも知れないですね…。みー君は、あのままでいたいと…」


 「そうだな…。あの守護者(ガーディアン)達と毎日楽しく過ごしているのだろうが…。しかし、このまま《(エフェス)》が目覚めなければ、最悪の場合、そのまま永眠という可能性も…」


 「そんな…!」


 「…まぁ、考えてみれば、既に彼は三千年ほど生存している事になる。潮時かも知れん。ただ、大天使達と何かしら関連しているとなれば、可愛いあの子達がどうなるか…。それに、《一桁(ウーニウス)》達も問題だ。《(ギメル)》など、既に好き放題している者が、更に歯止めが効かなくなる」


 ミスターは頭を抱える。

 《(エフェス)》が眠りについている間、《(ミスター)》と《(ハチ)》以外の《一桁(ウーニウス)》は基本的に《(エフェス)》のそばに控えている。

 過去、アララト山に居を構えていた彼らは、千年ほど前から今現在まで、拠点を南極に移し巨大な氷の中に宮殿を造って住んでいる。


 ただ、時々気まぐれで地上に姿を現し、《(ヴァヴ)》のように人間に技術提供をする者もいれば、《(ギメル)》などは見目麗しい人間の少女を、人間の組織に攫わせては自分のそばに(はべ)らせていたりする。

 要は『暇つぶし』をしているのだ。

 《(エフェス)》という、ある意味『枷』が無くなれば、『暇つぶし』はさらに拍車がかかるかも知れない。


 「…問題が多いですね」


 ハチが苦笑いしながら言う。


 「本当にな。私は魔法の研究に没頭していたいんだがね。…そうだな、この研究所(ラボ)の結界にも、ルーンを刻んで…」


 「…いや、今のところ間に合ってますよ」


 先日結界を構築し直したばかりだ。これ以上複雑にして負荷がかかるのも困る。


 ミスターは残念そうにしていたが、ふと、思いついたように、ハチに向かって、


 「…そういえば、彼女…、美奈であれば、No.666の記憶を千里眼で読み取れるのではないかね?」


 すると、ハチが押し黙り、しばし考えて言った。


 「………その、美奈ですがね。さっき連絡を取った時に、相談がある、と…」


 おや、とミスターが訝しむと、ハチは、


 「…どうやら彼女、自分の死を予知したようです」


 「!?」


   ◇   ◇   ◇


 ―――《(ザイン)》は南極にある宮殿の、自分の領域(テリトリー)に戻った。

 そこに、《(ベート)》が待ち構えていた。


 「《(ザイン)》。何処へ行っていた?」


 ギクリ、と《(ザイン)》は《(ベート)》を見る。

 自分と同じ黒のローブを身に纏い、やはり頭の右側に『ב』と刺青(タトゥー)がある《(ベート)》が、無表情でこちらを見ている。


 「………」


 「《(ヘー)》が、『《(ザイン)》が《最後の番号(ラストナンバー)》を連れてくるかも知れない』と言っていた…。どういうことだ?」


 《(ザイン)》は押し黙っている。…が、少し考えて言った。


 「…私は、《最後の番号(ラストナンバー)》には関わらない方が良いと思う。奴がその気になれば、この地球(ほし)が消し飛ぶかも知れん」


 それを聞いて、《(ベート)》は顔をしかめ、


 (《最後の番号(ラストナンバー)》…。それほどの力がある、ということか?)


 そう考えたが、《(エフェス)》が目覚める可能性があるうちは、自分が《最後の番号(ラストナンバー)》の下に赴く訳にもいかない、と思っていた。


 「………それから」


 《(ザイン)》が続ける。


 「No.37は現在、日本にいるらしい」


 「!」


 《(ベート)》は驚く。が、表情が変わったのは一瞬だった。


 「………そうか」


 そう言って、《(ベート)》は自分の領域(テリトリー)に帰って行った。


 ―――《(ザイン)》はひとまずホッとして、


 (…しばらく静観に回るべきだな)


 そう考え、石造りの冷たい自室に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここまで読みました。 キャラクターが増えてきて、バトルシーンも圧巻……! こういうバトル、昔書きたかったんです。 今作風的に全然方向性違いますが……笑。 どうなってしまうんだろうとドキドキです。 続き…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ