8-5 天使達はリズムゲーが好き
「むぅ、やりづらかったぁ」
みー君が座席から降りた。
「全くだ。そもそも僕らじゃ身長が足りてない」
ラファエルも降りて、レースゲームの下位争いは終了した。
ふと、人だかりが出来ている場所を見る。
「む。ウリエル達、注目浴びてるぞ」
「あ、ホントだ! ふーちゃん達、スゴイ!」
楽しそうにリズムゲームで遊んでいる二人を見て、みー君が、
「ああいうのなら、ボク達でも上手く出来るかな?」
「そうだな…。お! コレなんかどうだ?」
ラファエルが見たのは、リズムに合わせて太鼓を叩く、あのゲームだ。
隣では眼鏡のお兄さんが、マイバチで鬼レベルをプレイしている。
みー君とラファエルは、しばしその様子を見ながら、
「…うん。アレならボクも、もっちーより上手く出来そう」
もっちーがこっそり「何!?」と言うのを無視して、ラファエルも、
「同感だ。遅れを取るなよ」
みー君はもっちーを荷物入れに置き、コインを入れて二人プレイを選択する。
曲を適当に選択し、難易度はもちろん鬼レベル。
ゲームがスタートし、二人は息ピッタリに良を大量生産する。こちらも人だかりが出来た。
「さっきの女の子達もすごかったけど、こっちもすごいな」
「やーん、あの男の子達も、めっちゃカワイイんだけどー」
そんな声が飛び交う中、二人は全良フルコンボを叩き出した。「ヤッタ!」と二人でハイタッチだ。素直に喜ぶみー君と違い、ラファエルはフフン、と得意げに気取っている。
その様子を、遊び終わったふーちゃんとうーちゃんが見に来た。
次の曲も鬼レベルで遊べる曲を選択し、プレイし始めたみー君とラファエルに、うーちゃんが、
「何よ、あなたも楽しそうに遊んでるの?」
するとラファエルが、太鼓を叩きながら、
「ああ、リズムとタイミングを合わせて来たもの打ってるだけだから、分かりやすい。中々楽しいぞ」
今度はふーちゃんが、
「みー君も、らっ君も、ガンバレ!」
と言った途端、ラファエルがミスをした。
「!」
とりあえず曲を終わらせ、ラファエルがふーちゃんに文句を言う。
「…お前、らっ君はやめろって言っただろ! そんなこと言うなら、お前もガブちゃんって呼ぶぞ!」
「えー!? ヤダヤダ! 可愛くない! ふーちゃんにして!」
喧嘩になった。みー君が、
「ねー、ラファエル。もう一曲出来るよ?」
ラファエルは戻って、太鼓を楽しんだ。この曲も全良フルコンボし、曲終了後は周りの人達が拍手をしてくれた。
「面白かったね!」
みー君が皆に言うと、石塚がやって来て、
「お前達、すごいな。うちの娘も結構得意で遊んでたけど、あんなに出来なかったぞ」
すると、もっちーがこっそりと、
「え? オマエ、ムスメとかいんの?」
「おう。この間の裕人君と同い年だな。ちなみにカミさんは、小学校からの同級生だった香織ちゃんだ」
もっちーが、ガーン、とショックを受けていた。
「カオリちゃん………。拓斗も好きだったコじゃん!」
石塚が、ニシシ、と笑った。そして、
「ホントお前、ガキん時の拓斗みてーだな」
ポン、と、もっちーの頭を撫でた。
さて、この後どうしよう、と皆で辺りを見回していると、「荷物が無くなった!」と声がした。石塚に、
「ちょっとここで待っててくれ」
と言われ、四人が大人しく待っていると、そばを通り過ぎた二人組の男の一人が、日本語ではない言葉で、
『現金とカードだけ抜いて、後は捨てちまえ』
と言っているのが聞こえた。
みー君とラファエルで、顔を見合わせて頷き、ラファエルが男達を追い、みー君が、
「石塚さん!」
被害者に話を聞いていた石塚を呼びに行った。
うーちゃんとふーちゃんも、ラファエルの後を追い、男達の前に立ちふさがる。
『クソッ! 何だお前ら!』
周りの人達も集まってきて、逃げ場がなくなった二人は、やって来た石塚に捕まった。石塚は応援を呼んだ。
「お前達、よく分かったな」
石塚が子供達を褒めると、男達が、
『…何だお前ら。俺らの言葉、分かるのか』
そう外国語で言うので、ラファエルが、
『僕らは全ての言語を理解する。人間が当てはめた言葉の種類は知らんが、お前らの言ってることは分かるぞ』
そう男達に言った。石塚は「?」という顔をしながら、
「君、すごいな。そういや、日本語も上手だしな」
「…フン。こいつ等も同じだぞ」
そう言って、みー君達を見た。
みー君もふーちゃんも、ニコニコと笑っているだけだ。石塚は、そうなのか!? と驚いた。