7-7 バーベキュー
久吾が家に帰ると、子供達はアニメを見終わっていた。
「ただいま」
「おかえりなさーい」
ふーちゃんの声と一緒に、みー君達も「おかえり!」と言いながら、ドタドタとやってきた。
「ななさん、見損ねちゃったね」
みー君に言われたが、久吾は
「まぁいいですよ。それよりも、ハチさんのところでバーベキューをやるそうです。行きますか?」
それを聞いた子供達は、一斉に
「「行く!!」」
元気よく返事をした。
◇ ◇ ◇
名奈家からはいつものおやつ類と、大人用に日本酒を用意して持っていった。
転移門を通ると、香ばしい匂いがしていた。
羽亜人と蔵人が、手際よく肉や野菜を串に刺していく。
それを蒼人と大弥が焼いていく。大弥は、焼きながら既に食べていた。
「お、来たな」
子供達が「わーい!」と言いながらテーブルにつく。
焼けた串を大弥が皿に乗せてくれる。
ふーちゃんとみー君で取り分け、ぬいぐるみ達に「はい、あーん」と言いながら食べさせていた。
おやつ類はデザートということで、ハチの家の中で冷やしておいてもらう。
ハチ、久吾、美奈で別テーブルを囲み、持ち寄った酒類を並べた。
「『久保田』です。清酒とにごり酒、両方持ってきました」
久吾の日本酒は、倉橋のオススメだ。
「カベルネとシャトー持ってきたわ。お肉だから、赤が良いと思って」
ハチが、おお、と喜ぶ。
「この間飲んだ『獺祭』も美味かったな。日本酒、良いよな。…こっちはシャトー・ロランか。お前の持って来るワイン、どれも美味いよな」
久吾も、
「美味しそうですね。飲み比べましょう」
「そういやこの前、マルグリットからお土産でメルツェンもらったんだっけ。冷やしといたはずだ」
ハチはいただき物のビールを取りに行った。
脚の修理を終えていたファリダは、子供達のテーブルにいて、ふーちゃんと一緒にもつこに食べさせてあげていた。
「もつこ、カワイイ。大福とは大違いだ」
ファリダがそう言うと、もっちーが「なんだと!?」と怒っていた。
もつこは「えへへー」と喜んでいる。めぇがもっちーを、よしよしと慰めていた。
そこへ羽亜人が「はい、どうぞ」と、ファリダに焼きもろこしを渡していた。
「ちゃんと網はお肉と分けてあるからね。お野菜、他にも持ってこようか?」
「うん。ありがとう」
ファリダは焼きもろこしを美味しそうに頬張った。
人間だった頃の習慣で、ファリダは肉と酒を受け付けない。羽亜人が、
「後でマシュマロも焼いてみる?」
と子供達に訊くと、「やるー!」と喜んでいた。
………そんな様子を見ながら、大弥は、
(…ぬいぐるみが飯食ってる絵面はカオスだけどな…。こうやって見ると、ここにいる中で『人間』が俺だけってのが、信じらんねーよなぁ…)
そんなことを考えながら、肉を頬張っていた。
………と、ふいに大弥は、トイレに行きたくなった。辺りをキョロキョロと見回す。
(? そういえば…)
楽しそうに飲み比べをしているハチに訊く。
「あ、ハチさん! トイレ、どこだっけ?」
すると、ハチ他全員が「?」という顔をした。
ハチが、
「トイレだと? そんなもん、ある訳ねぇだろ」
「え」
大弥が驚く。
「俺らは全員、体内で滅却処理してるからな。酒も飲んでるが、人間みたいに酔えねぇんだよ」
美奈が、
「そうなのよね。酔うって、どんな感じなのかしらね」
久吾が、
「二日酔いとか、大変そうですよね。お酒はこうやって味わうだけで充分ですけどね」
大弥は焦った。
(そういや、こんなに長時間ハチさんとこに居たことねーな…)
仕方なく転移門を通って、トイレのある自宅に戻って行った。
…それを見ながら、ファリダが「だから早く改造されれば良いんだ」と呟いていた。