表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/194

5-5 もっちーと拓斗

 「オレっちさぁ、気付いたら毎日拓斗と一緒に寝てたんだー。拓斗の父ちゃんと母ちゃん、ケンカばっかしてたからさ、拓斗ときどき泣いてたの。だから『オレっちがいるよー』って思いながら一緒に寝てたんだぞ」


 もっちーが懐かしそうに言う。


 「…拓斗んとこは夫婦仲が悪かったらしくてな。拓斗が死んじまった後、離婚したんだ」


 石塚がそう付け加えた。


 「そんで拓斗のヤツ、セーフク着て学校行くようになってから、オレっちをタンスの上に置きっぱにするようになったの。でもときどきアタマなでてくれるのがうれしかったんだー。ときどき一緒にマンガも読んだんだぞ」


 肘置き代わりにされていたようだ。もっちーが続ける。


 「…でも、セーフク変わってから、毎日おうちにいる時間へっちゃったんだ。バイトってのやってて、おカネためてバイク買うんだって。で、買ったー!ってよろこんでたんだ。でも…」


 石塚が、もっちーのそばにあったヘルメットを手に取る。元の形より一回り大きくなっている。


 「これ、もしかして、拓斗のメットだったやつか?」


 するともっちーが嬉しそうに


 「うん! 拓斗が『あんま好みじゃねーけどセンパイがメットくれたから、このお古のメットはオマエ専用だ』って、オレっちのになったんだ。ハッチャンがいっぱい改造したんだぞ!」


 すると、石塚が悔しそうにつぶやいた。


 「…ちくしょう。そのせいで拓斗は………」


 何だかしょんぼりしながら、もっちーは続ける。


 「でも、拓斗ゼンゼン帰って来なくなっちゃったんだ。そのうち、何だかバタバターって拓斗の母ちゃんがうるさくて、そしたらオレっち、黒い袋の中に詰められて、お外に連れてかれて…」


 離婚の際の片付けで、処分されたのだろう。さらに、


 「それでね、あーもう最後かなーって思って、拓斗に会いてーよーーーっ! て、叫んだらね。みー君が袋開けて、オレっちを見つけてくれたの。『泣いてたのは、キミ?』って言って」


 満月が綺麗に輝いていたその夜、みー君は真夜中の空中散歩をしていた。

 そして、月に向かって上っていく一筋の光の方へ近づいていったところにゴミ袋があり、中にぬいぐるみがあったそうだ。

 ボロボロだったもっちーを、マルグリットがとても丁寧に補修してくれたのを久吾は覚えていた。


 「…昔から付喪神(つくもがみ)と呼ばれるものがあります。大切にしている物ほど、自分の魂を分け与えた『分霊』がつくのでしょう」


 久吾はそう言った。すると石塚が、


 「じゃあ、それを処分するとマズいのか?」


 と言うので、


 「いえ、処分すれば分霊は、持主の『思い出』になって本人に還っていきますから問題ないでしょう。ただ、『今までありがとう』という気持ちで処分する方が良いと思いますよ」


 そう話していると、もっちーは元気を取り戻したのか、


 「だからね、オレっちみー君大好きなんだぞ!」


 するとみー君も、もっちーを抱きしめ、


 「ボクもだよ、もっちー!」


 すると、それを見ていた石塚が言った。


 「…じゃあ、もっちーだったか。俺らで拓斗の敵討ちしてくるからな」


 ポン、ともっちーの頭に手を乗せて、撫でてやる。


 「?」


 もっちーとみー君が石塚を見る。石塚が言った。


 「…裕人君を誘拐した佐藤って奴は、昔、拓斗が自分と同じバイクに乗ってるのを利用して、自分の身代わりにして、拓斗を死に追いやった奴なんだ」


 「!?」


 「確かに拓斗を殺したのは別の奴らだし、ソイツらは既に罰を受けてる。…だけどな、原因を作ったのはアイツなんだ。今度は絶対許さない! 必ず捕まえるし、裕人君も助けて来るからな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ