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幕間 飛空船内にて

 ―――少し時間を遡る。


 「「彩葉!」」


 「おばあちゃん! お父さん、お母さん…」


 久吾が女神との謁見から戻った後、船内の人間達の親族などを、瞬間移動でこちらに避難させていた。


 彩葉の祖母・光栄と、彩葉の両親。

 そして、倉橋の妻・千鶴。

 次に石塚の妻・香織と娘の詩織を、石塚と共に船に避難させた際のこと―――


 「え!? 裕人君パパ!?」


 「わぁ! 裕人君!? 久しぶりー!」


 香織と詩織の、飛空船に到着しての開口一番だった。


 「え!? 詩織ちゃんママ!? …あ! そうか、石塚…!」


 「し、詩織ちゃん!?」


 伊川親子も驚いている。一人状況が分かっていないのは、石塚だった。石塚は思わず自分の妻に、


 「…ちょ、ちょっと香織ちゃん、章夫さん達と知り合いだったの?」


 すると石塚の妻・香織は、


 「ああ、修クン、詩織の学校行事、全っ然来れなかったから知らないのよね。裕人君パパ、小学校の時のPTAで一緒だったの」


 石塚(修司)が、えぇ…、と驚いていると、娘の詩織も、


 「5〜6年生の時はクラスと班も一緒だったのよ。『伊川』と『石塚』で、だいたい隣の席だったんだもん。ねー♪」


 嬉しそうに裕人に詰め寄る。裕人は少し驚きつつも、すっかりイマドキのJKらしく垢抜けた、かつての同級生を見て照れくさそうにしていた。

 香織は思い出したように、


 「…もしかして、この間大変な目に遭った、詩織と同い年の子って…、裕人君だったのぉ?」


 石塚は頭を掻きながら頷く。章夫は驚きながら、


 「そうでしたか…。旦那様のお仕事が公務員、と聞いてはいましたが、まさか刑事さんだったとは…」


 「そーよぉ、『警察関係』ってホラ、あんまり大っぴらに言うのも(はばか)られるっていうか…。だから普段、表向きは『公務員』で通してるのよね」


 香織が笑いながら言う。石塚も驚きながら、


 「…いやぁ、世間って、意外と狭いもんですねえ。こんな偶然あるんだな」


 章夫も「そうですねぇ」と言って頷いていた。


 詩織は中学に上がる頃、私立の女子校を受験し無事合格したので、裕人達とは進学先が分かれたのだ。


 久しぶりに再会した裕人と詩織は、


 「でも、ビックリしたぁ。あの黒いスーツの人、何者なの? アタシ達家にいたはずなのに、ココに来たの一瞬よ! 一瞬! …そりゃあ、今大変なコトになってんのは分かったけどぉ…」


 詩織がそう言うので裕人も、


 「いやぁ…、僕もよく分かんないんだよね。フシギな人だってのは分かってるんだけど…」


 詩織は、ふぅん、と言いながら、


 「何ていうかさぁ、こんな時にフキンシンかも知んないけど、…アタシ、久々に裕人君に会えて、嬉しかったりするんだよねぇ」


 フフッ、と頬を紅潮させながら、詩織が笑っている。裕人は少しドギマギしながら、


 「そ、そうだね。…でも、本当にこの世界、どーなっちゃうんだろ…。まぁ、僕が心配したところで、何か変わる訳じゃないけど…」


 すると詩織が、え!? と言いながら、


 「えー…、何か裕人君、変わった? …そんな風に言うなんて…、そりゃそーかも知んないけど…」


 「? 僕、変わった? …かな?」


 詩織の言葉に裕人が驚いていると、詩織が懐かしそうに、


 「…裕人君ってさ、普段ちょっと、ぽやっとしてるけど、何ていうか…、言うべき時はしっかり意見言ったりしてたじゃん? 蓮とかがふざけて悪さしよーとしてた時も、ビシッ! と言ってくれたり…。…おまけに顔もカワイイし、今なんて、すっかり背も伸びて、メッチャカッコ良………!」


 そこまで言って詩織は、あわわ、と真っ赤になり、


 「い! いや、その…! …んー、もー! 忘れて! ヤダもう、恥っず…。…と、とにかく! 何か思ってることがあるんなら、あのスッゴイ人達に言ったほうが良いんじゃん!?」


 そう言って目線を逸らした詩織を見ながら、ぽかんとしていた裕人は、詩織の言葉に思うところがあったらしく、


 「………うん、そうだね。思ってること、心ん中でモヤモヤさせてるくらいなら、言わなくちゃ。…ありがと、詩織ちゃん」


 裕人がニッコリ笑ってそう言うと、詩織は少しの間の後、真っ赤な顔のまま、


 「………ねぇ、裕人君」


 「?」


 「…今、アレだけどさ。ちゃんと、何か、落ち着いたら、…大学とかドコ行くとか、もう決めてんの?」


 裕人は一瞬、キョトンとする。まだ考えていなかった。


 …とりあえず二人は、互いのスマホに連絡先の登録をし合っておいた。


   ◇   ◇   ◇


 「―――あなた、私までこんなところに呼んで下さるなんて、…そんなに大変な状況なの?」


 倉橋の妻・千鶴が訊く。倉橋は、


 「んー、多分な。さすがにちぃちゃんを放っとくのも心配だったからさぁ」


 頭を掻きながら、そんなことを言っていると、千鶴は何だか嬉しそうに、


 「でも、ちょっとビックリしたけど、久しぶりに久吾さんにも会えたし、…あの人、全然変わらないわねぇ。それにここ、高級ホテルみたいで素敵じゃない? 旅行なんてあなたと行ったこと一度もなかったけど、良かったわぁ、離婚しなくて♪」


 え!? と倉橋が驚く。


 「ち、ちぃちゃん!? そんなこと考えてたの!? ジョーダンだよね!?」


 千鶴は、キッ、と倉橋に向き直り、


 「だってあなた、仕事仕事で家にちっとも帰って来ないし、…家は子供が出来なかったから、そりゃあ私、寂しい思いしてたのよ! おまけにあなた、お酒に弱いクセにしょっちゅう呑んで来ては久吾さんや同僚の方に―――」


 …嵐のようなお小言がまくし立てられた。

 倉橋は一生懸命謝り倒していた。何だかんだで夫婦仲は良いようだ。


   ◇   ◇   ◇


 「…お姉ちゃん? おーい、お姉ちゃんってばぁ!」


 「…!? え!? あ、うん! 水波! 聞いてるよ!」


 月岡からの告白を受けた風月は、目を覚ましてからずっと上の空だ。時々月岡の方を見ては、真っ赤になって挙動不審になっている。


 水波は両親と共に、こちらに避難して風月と合流したが、月岡は今後についての話し合いの席にいた。


 (…月岡さん、そのうちウチの親に挨拶とか来ちゃったりしちゃったりするのかな…。私、月岡風月に…! 月、被っちゃってるじゃん!)


 今はそれどころではないのだが、風月はドキドキしながら、そんな妄想を繰り返していた。


   ◇   ◇   ◇


 「…なぁなぁ、で、お前は?」


 K(ホシェフ)I(イルグン)のメンバー数人が集まり、コソコソと何やら密談している。


 「そりゃあ、へー様しか勝たねぇだろ。俺の腰の調子悪かったとこも、すっかり治して頂いたしよぉ」


 「いや、俺はシェリル姐さんだな。小腹が減って厨房覗いたら、ニッコリ笑ってササッとボリューミーなホットサンド作ってくれてさぁ、…美味かったなぁ」


 「俺はマルグリットさんだな。俺のジャケット、結構年季の入った綻び、あっという間に新品みてぇに直してくれてよぉ、…スゲェよなぁ」


 ―――ノアの複製の女性陣達は、本人達の預かり知らぬところで、いつの間にかコッソリと信者(ファン)を増やしていた…。

詩織ちゃん、8章にもチラッと登場してますが、実は昨年の夏のホラーで投稿した『五階の鏡』(←『天使の魂色』スピンオフ的お話)でも、チラッと登場してるんです。


もし興味ある方で未読でしたら、


https://ncode.syosetu.com/n8105jg/


↑良かったら覗いてやって下さいマセ。

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― 新着の感想 ―
世間は狭い、ですよね。意外な繋がりが。 裕人くん、よかったね(まだ何も始まっていない)。 倉橋さんも石塚さんも、奥さまの呼び方がかわいらしい。家族を大切にしていそうです。 風月さん〜(笑)。十代前半…
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