23-5 精霊魔法
「!? …《2》」
《1》が呟くと、《2》は《1》達を包むバリアボールに手をかざす。
「! 《5》!」
《5》がすかさず自分達に、《1》のバリアボールとは違う防御壁を張る。
同時に《1》のバリアボールにひびが入り、一瞬で破壊された。
その瞬間、《5》とダスの身体が落下しそうになる。
「! No.733!」
《5》が叫び、思わず念動力を使う。自分とダスの身体が宙に浮いた。…が、《1》が《2》と対峙しながら、
「…《5》、No.733と共に下へ。ここは私が!」
《5》は頷く。そのまま二人で空中を下降していく。
《2》は《5》を一瞥する。が、目の前には《1》がいる。《2》はすぐに《1》と向き合い、
「《1》、私に吸収される覚悟が出来た、ということか?」
ほんの少し嬉しそうに、《2》は問いかける。
すると、《1》の手に数枚のカードが握られているのが見えた。
「?」
訝しむ《2》の前に、《1》は数枚のカードに指で「ᛉ」のルーンを刻み、そのカードを空へと投げる。
「精霊達よ、盟約に従い力を貸し給え!」
―――《1》の号令と共にカードが弾ける。
小さな花火のように空中で弾けたカードの欠片が、キラキラと舞う飛沫となる。すると、辺りに小さなつむじ風がいくつも立ち昇り、中から小さな、鳥人間、とでも言おうか、不思議な生物達が姿を現す。
…ただ、彼等の姿は他の者達には視えない。
((エライことになってんじゃねーか! アレフ!))
鳥人間の一人に精神感応で呼び掛けられ、《1》は、
((シグウェか、感謝する。洪水を抑えたい。頼めるか?))
すると、シグウェ、と呼ばれた精霊が、
((水属性のヤツらも呼んどけよ。…でもなぁ、オレらの数もかなり減ってんだ。あんまり当てにすんな))
《1》は頷き、次に数枚のカードに「ᛚ」のルーンを刻み、放り投げる。
カードは先程と同様に弾け飛び、飛沫がキラキラと舞う。すると、たちまち空が曇り、雨粒が落ちてきた。
…雨の中にぼんやりと、下半身が魚の姿をした小人達が現れる。小人達はそれぞれ空中で、シグウェに受け止められた。
((…こんな空中で呼び出さないでくれる?))
一人の小人が《1》に文句を言うと、
((済まない、ニビーナーベ。シグウェ達と共に、洪水を抑えるのに協力して欲しい))
ニビーナーベと呼ばれた小人達は、仕方ない、と頷き、シグウェ達の翼で水平線に向かう。行きがけにニビーナーベは、
((丁度良く雨雲発生ね。サンダーバードが呼びやすくなるわよ))
聞いて《1》は更にカードを一枚取り出す。「ᛇ」のルーンを刻み、放り投げた途端、
「それが貴様の『魔法』とやら、か!?」
《2》が《1》に向かい、轟音と共に雷を放つ。
…しかし雷は《1》に届かない。
他の者達には視えないが、そこに大きな鳥が姿を現していた。
((サンダーバード、良く来て下さった。感謝します))
《1》が感謝を述べると、サンダーバードは、
((あやつ、我に雷とはな。…しかし、我も長くはこの世に留まれぬ。アレフよ、何を所望する?))
《1》は《2》と対峙しながら、
((この地、この地球の精霊達に呼びかけを! 洪水を抑える協力を頼みたい!))
((承知。だが、我等の数は激減している。期待はするなよ))
サンダーバードはそう言い残すと、ものすごい速さで飛び立っていった。
◇ ◇ ◇
《5》が上空の《1》の様子を見ながら不安な表情で下降していくと、下から声がする。
「おーい! キミー!」
天使達だ。久吾もいる。5人の中央には、巨大な鉱物…、オリハルコンがある。
「《最後の番号》! 無事にオリハルコンを運び出せたのね!」
《5》はダスと共に跡地に降り立つ。オリハルコンからは少し距離を取った。
オリハルコンに触れて平気な顔をしている久吾に驚くが、《5》は神妙な面持ちで、
「…南極と北極の氷は既に融かされてしまったわ…、今《1》が何かしらの手を打ったようだけど…」
皆で上空を見る。久吾も上を見ながら、
「…あれは、精霊の方々…、まだこの世界に、あんなにいらっしゃったんですね」
その言葉を聞いて、全員が、え!? と驚く。ラファエルが、
「じゃあミスター、精霊魔法使ったのか!」
「道理で、何かキラキラしてると思ったわ!」
ウリエルも上を見ながら言う。ミカエルとガブリエルも、へぇ、と言いながら上を見ている。
だが、久吾が、
「…ですが、皆さん移動して行きましたね。あれは、海の方、ですか?」
「多分、洪水を抑えるために、精霊達に呼びかけたんじゃないかしら。となれば…」
《5》と言葉と共に、全員で上を見上げる。今まさに、ミスターと《2》の闘いが始まろうとしていた。
「…どうしましょう。私、ミスターに加勢したいですが…、ミカエル…、天使達、オリハルコンを頼めますか?」
久吾に問われ、天使達が頷く。
それを見て久吾は、上空へと浮かび上がり上昇する。
◇ ◇ ◇
「…何だ、魔法で己の身を護ろうとしたのではないのか? 光は何処かへ行ってしまったな」
《2》が《1》に問う。《1》は《2》と対峙しながら、
「『彼等』には、君が起こしてしまった洪水を抑えるように頼んだ。本当は君が洪水を止めてくれれば良いんだがね」
聞いて《2》は笑いながら、
「…ク、ハハハ! 止める、だと!? もう洪水は誰にも止められぬわ! 後は貴様を吸収するだけだ!」
そう言って《1》に攻撃を加えようとした時、
「―――ミスター!」
久吾が二人の側まで上昇してきた。