表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/194

23-1 人間と、複製と

 洞窟の外へと転移させられた久吾は、そのまま海底から上昇していく。


 途中、異形の神達や、パリカカと合流したハイド・シーク達とすれ違う。


 ((キューゴ! ガンバレよ!))


 ((うーちゃん達にヨロシクな!))


 久吾はテディを抱えながら笑顔で挨拶し、見送られながら更に上昇をする。


 ―――ブルーホールの底の部分に到着する。

 久吾の霊球は深淵部(アビス)をするりと抜け、現実世界に戻った。


 久吾は驚く。

 現実世界に戻った途端、久吾には、世界の感覚、とでも言おうか、世界中で大きく動く気配が感じ取れたのだ。


 (これは…)


 雑多な感情を全て受け入れる訳にはいかない。

 久吾は一旦、自分の心を閉じておく。これは、《(ギメル)》や《(ダレット)》などの思念伝達者(テレパス)が普段から行っていたことだ。


 稀に、人間の中に精神感応(テレパシー)能力を持って生まれる者がいる。

 こうした者達は能力のコントロールが出来ず、様々な相手から漏れ出る感情をまともに受け、精神に異常をきたす場合が多い。


 一瞬、久吾も自分に流れてくる様々な感情に混乱する。

 …が、今の久吾は『神』とほぼ同格だ。過去の『ノア』に近い。


 感覚を調整し、上昇しながら同胞だった者達の気配を探る。

 久吾は、ミスターの気配を捕えた。


 ((ミスター!))


   ◇   ◇   ◇


 ((! ―――久吾か!?))


 飛空船の中で、《(ベート)》の攻撃に備えていたミスターは、突然の精神感応(テレパシー)に驚いたが、同時に安堵した。


 ((無事に謁見が済んだのだな。すぐに戻れるか?))


 ミスターの問いに、久吾は、


 ((…少しだけ、待って頂けますか? このまま海上に出るまで、今の身体(・・・・)に慣らしていこうと思います))


 ((今の、とは…、何か、変化があったのだな?))


 ((その話は後で…、それよりも《(ベート)》さんです。そろそろ行動を開始するかと…))


 ミスターが驚いていると、飛空船に《(ヘー)》達が戻ってきた。


 「《(アレフ)》、天使達を解放したわよ。………? もしかして、《最後の番号(ラストナンバー)》と連絡が…?」


 ミスターは《(ヘー)》を見ながら頷く。

 すると、《(ヘー)》は、何やら能力を発動する。


 『情報共有(ネットワーク)―――』


 そして、ミスターと繋がっていた久吾に、


 ((…《最後の番号(ラストナンバー)》、今、この船の中にいる複製達全員と、精神感応(テレパシー)の回線を繋いだわ。皆に説明しなさい))


 しかし、そこにミカエルが介入した。


 ((ななさん!))


 久吾は驚きと共に、喜びの表情を浮かべ、


 ((ミカエル! 良かった…、皆さん無事ですか?))


 四人の天使達が頷く。《(ヘー)》の情報共有(ネットワーク)は、天使達にも接続された。


 ((…ボク達は無事だけど、めぇさんと、もっちーが…))


 ミカエル達がそう言って、うなだれているのが分かる。するとスミスも介入し、


 ((久吾さん、ハチさんが…。それから、もつこさんも…))


 皆、それぞれの役割を果たし、逝ってしまった。情報共有(ネットワーク)によって全てを察した久吾が、ハチやぬいぐるみ達の冥福を祈りながら、


 ((ハチさん…。…そうですか。めぇさんともっちーさん、もつこさんも…。…しかし、今は時間がありません。《(ベート)》さん達は、最終的に南極と北極の氷を全て融かし、世界を水没させようとしています))


 (( !? ))


 全員が驚く。それを聞いた《(ヘー)》が、


 ((…不味いわね。私達、計画を進行させていた《(テット)》を倒したのよ。彼女がいなくなった、ということは…))


 ミスターが蒼白の表情を浮かべ、


 ((そうだな。計画など《(ベート)》にとってはどうでもいい話だ。なれば、いつ氷が融かされてもおかしくは…))


 すると、No.56がすぐに動いた。自分の組織の者達に向かって、


 「…おい、お前ら! 世界中のメンバーに出来うる限りの『船』を用意させろ! 避難だ! この際、俺達の言葉を信じる奴らだけでいい! 急げ! 洪水に備えろ!」


 K(ホシェフ)I(イルグン)のメンバーがすぐに動いた。各々のスマホやPC等を駆使し、何処かへと連絡を入れる。


 すると、これを聞いていた大弥や蔵人達も、何処かに連絡を入れ始めた。

 手短に事を済ませ、


 「…ひとまず、蓼科家の皆には避難を呼びかけた。あとは…」


 蔵人がそう言うと、大弥も、


 「一応、宝来家にいる斗真…、名執さんに連絡しておいたよ。彼なら楠本さんや貴彦さんを通じて、何かしら手を打ってくれるはずだ」


 兄の名を聞いた彩葉が、オロオロとしている。


 「お兄ちゃん…、兄は大丈夫かも知れないけど、どうしよう…、お母さん達…」


 涙目の彩葉に、羽亜人が声をかける。


 「なるべく標高の高いところへ避難してもらおうよ。あきらめないで、出来ることをしよう」


 そう言って、彩葉の肩を軽く叩いた。彩葉は頷き、電話をかける。

 船内にいる他の者達も、各々の親しい関係者に連絡を取り、避難を呼びかけていた。


 ―――《(ヘー)》の情報共有(ネットワーク)により船内の状況を感じ取れた久吾は、人間達の様子を頼もしく思いながら上昇を続ける。


 …海上に出る。

 久吾は球体を解除し、千里眼で飛空船の位置を確認すると、即座に瞬間移動していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ